2021年重大(十大)音楽ニュース
①チャーリー・ワッツ死去
音楽ファンにとって、今年これ以上の大きなニュースはないと思う。
にもかかわらず、日本ではストーンズと検索すると、ザ・ローリング・ストーンズではなく、ジャニーズのSixTONESに関するものばかり出てくるんだからね…。申し訳ないが、日本は文化的に終わっている国だと言わざるを得ない。
その反動なのかもしれないが、同じジャニーズでも同時期にCDデビューしたSnow Manは嫌いじゃないんだよね。これまでにリリースしたCDを全部持っているしね。
②フィル・スペクター死去
どうしても、年間重大(十大)音楽ニュースを選ぶと、毎年、半分ほどは訃報になってしまう。
フィル・スペクターは、“ウォール・オブ・サウンド”と呼ばれる音作りで後世にも大きな影響を与えたプロデューサーだった。
洋楽、邦楽問わず、彼の影響を受けたアーティストやソングライター、プロデューサーの名前をあげたらキリがないほどだった。
あの秋元康ですら、自身がプロデュースするアイドルグループの楽曲でちょいちょい、ウォール・オブ・サウンドを取り入れている(AKB48“11月のアンクレット”、STU48“風を待つ”など)。
フィル・スペクターの業績は、彼が世に送り出した多数の名曲とともに語り尽くしても語り尽くせないほどだ。
だが、その一方で彼には殺人罪で有罪判決を受けた犯罪者という側面もある。
最近はキャンセルカルチャーというのが蔓延していて、一度不祥事を起こした者は、特に女性や未成年、黒人が被害者となるような問題に関しては、再起のチャンスが与えられないという風潮になっている。
その結果、今の米国では多くのアーティストや映画監督、俳優が存在を抹消された状態になっている。R.ケリー、ウディ・アレン、ケヴィン・スペイシーなどといった人たちの名曲や名作映画がなきものとされつつある。マリリン・マンソンもその仲間入りを果たしそうだ。
こうしたキャンセルカルチャーはトランプ政権時代から蔓延するようになったが、大統領がリベラル層が望む民主党の人間に変わってもおさまることがないんだから、この動きは今後も続いていくんだろうね…。
最近は白人アーティストのみならず、逮捕されたR.ケリーや差別的発言を行ったダベイビーといった黒人アーティストにも適用されているし、さらには、本人が直接、犯罪行為や差別的言動を働いたわけではないものの、自身が主催するフェスで死者を出したことからトラヴィス・スコットに対しても、こうしたキャンセルカルチャーのようなものが発動されている。
ぶっちゃけ、フィル・スペクターに殺人罪で有罪判決が出されたのが12年も前のことだから難を逃れているけれど、これがここ4〜5年くらい前の出来事だったら、ロネッツ“ビー・マイ・ベイビー”、ダーレン・ラヴ“クリスマス”、ライチャス・ブラザーズ“アンチェインド・メロディ”、ザ・ビートルズ “レット・イット・ビー”、ジョージ・ハリスン“マイ・スウィート・ロード”、ジョン・レノン“イマジン”といった彼のプロデュースした名曲だってテレビやラジオでかけるべきではない楽曲になってしまっていたんだろうなと思う。
③ジム・スタインマン死去
こちらもプロデューサーでソングライターでもあった人物の訃報。
世界的には『地獄のロック・ライダー』シリーズなどミートローフ作品で知られているが(1993年の全米ナンバー1 ヒット“愛にすべてを捧ぐ”は超名曲!)、日本ではそうした視点ではほとんど語られることはないのが残念だ。
ミートローフの日本での人気・知名度が低いのは、洋楽系の批評家やライター、さらには一般のロックファンの間でも、ロックアーティストのバラード曲を否定する連中、自作曲でない曲を歌うロックアーティストを軽視する連中が多いせいだと思う。
また、そうしたマニアでない洋楽リスナーには音楽性ではなくビジュアル重視で聞く者が多いことから、巨漢ロッカーのミートローフは人気が出なかったのだろうとも思う。
そんなわけで、ジム・スタインマンは日本では80年代の洋楽シーンを賑わせたヒット曲のソングライターとして認識されている。
代表曲としては、
ボニー・タイラー“愛のかげり”
ボニー・タイラー“ヒーロー”
エア・サプライ“渚の誓い”
ファイヤー・インク“今夜は青春”
なんてあたりかな。
“ヒーロー”は「フットルース」、“今夜は青春”は「ストリート・オブ・ファイヤー」とそれぞれ、映画から生まれた人気曲だけれど、前者は「スクール・ウォーズ」、後者は「ヤヌスの鏡」といったテレビドラマの主題歌に日本語カバーバージョンが使われていることから洋楽リスナー以外にも楽曲自体の認知度は高いんだよね。
④ダスティ・ヒル死去
ZZトップがヒット曲を連発していた80年代、彼等のことをよくジジィ(爺さんの意味)トップと冗談まじりで言っていたりもした。
それは、あの長〜いヒゲが老人のように見えたということなのだろう。
でも、72歳で亡くなったということは、MV効果でヒット曲を連発していた80年代はまだ30代だったということだし、カメオ出演した映画「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3」(主題歌“ダブルバック”も良い!)の頃ですら40代になったばかりだったってことなんだよね…。
やっぱり、この頃の30〜40代と今の30〜40代って、人種問わず、見た目が違うよね…。
⑤フェス強行開催に批判相次ぐ
海外では依然としてコロナの感染状況が改善したとはいえない状況なのに、日本では最近、マスク生活をしていることを除けば、ほぼ通常営業モードになっている。だから、イベント開催に関して否定的な意見を言う人もほとんどいなくなった。
でも、緊急事態宣言が解除されて間もない10月上旬くらいまでは、コンサート系の開催に対して批判的な声が多数だった。
特に音楽を聞くことよりも騒ぐことや酒を飲むことを目的に来場する者が多いフェスに関しては批判が集まった。
実際、酒を飲んで騒いでいる客が多く、アーティスト側も騒ぐように煽っていたヒップホップ系フェスの「NAMIMONOGATARI」はワイドショーなどでも取り上げられてしまい、フェスのイメージ悪化に貢献してしまった。
また、これも「NAMIMONOGATARI」同様愛知での開催だったアイドルフェスの「関ケ原唄姫合戦」では出演アイドルの間でコロナ感染が相次ぎ、“関ケ原クラスター”なんて言葉もドルオタの間で流行ってしまった。
さらに、フェスの中止や延期を要請する自治体に対して批判するアーティスト連中に自分勝手な奴が多いことも尚更、フェスに対する印象を悪くさせた。特に酷かったのは野田洋次郎だ。フェスを中止にさせるのは横暴だと言っておきながら、緊急事態宣言も無視してパーティーに参加し泥酔しているんだから、いい加減にしろと、野田のファンやロキノン信者、コロナは風邪論者以外は誰もが思ったのではないだろうか。
しかも、フェスを開催しろという奴はどいつもこいつもコロナは風邪論者だったから、フェスに対する印象は最悪になってしまった。
夏の終わりあたりから秋にかけて、通常とはレギュレーションを変えてはいるものの、六本木アイドルフェスティバル、@JAM EXPO、TOKYO IDOL FESTIVAL(TIF)といった定番アイドルフェスが相次いで久しぶりにフィジカル開催された。
ただ、TIFはフェスなのに、特定のステージを予約制にし、しかも、そのレギュレーションを直前になって発表するという悪手をうったために、あるアーティストを目当てにチケットを買ったファンがそのアーティストを見られなくなるという事態が続出し、ドルオタからは酷評された。
⑥秋元康の神通力低下
本当、最近の秋元康楽曲は酷い。
ラストアイドル“君は何キャラット?”を筆頭に、いつの時代の曲だよって言いたくなる古くさい曲ばかりだったし、乃木坂46の“僕は僕を好きになる”や“君に叱られた”、櫻坂46“流れ弾”など老害ネトウヨ思想全開の歌詞も増えていた。さらには“カップ麺が伸びた”なんてことを言っている櫻坂46“BAN”のみたいなクソ曲も多かった。また、22/7“”覚醒”とラストアイドル“Break a leg!”はほぼ同時期のリリースなのに歌詞の内容はほとんど同じだ。本当、秋元作品の質は低下していると思う。
それはセールスにも如実にあらわれている。勿論、フィジカルの接触系イベントの参加券封入でCDの売上枚数を増やしていただけなので、コロナ禍になって、オンラインイベントが中心になれば、アイドルと接触したいだけのオタクがCDを買わなくなるのは当たり前なんだけれどね。
それでも、ちょっと前まではタワレコの年間チャート上位に坂道シリーズは入っていたんだよね。
AKBグループは握手会目当ての劇場盤しか売れないけれど、坂道シリーズはタワレコなどできちんと一般ファンが購入していたんだよね。でも、その坂道シリーズですら売れなくなってしまった。
タワレコの年間チャートを見ていると、ジャニーズとK-POP、K-POPもどきの邦楽ダンス&ボーカルグループ、男性声優系ユニットくらいしか売れていないしね。つまり、腐女子を含む女性オタクしかCDを買っていないってことなんだよね。
それは男の経済力の低下を意味する。
女性はコロナ禍であっても、水商売や風俗という軍資金を得るための奥の手があるが、ほとんどの男にはそういう手段はないからね。そりゃ、女性向け作品しか売れなくなるわけだよね。
そんなわけで、秋元系アイドルの解散が目立った。
青春高校3年C組はコロナ禍で未成年のメンバーを一同に集めることができなくなり、活動が縮小され、最終的には解散となったが、解散直前に放送されたメンバー出演の深夜ドラマ「あなた犯人じゃありません」がなかなか面白かっただけに、このプロジェクトの終了は残念で仕方がない。
ガールズバンドのザ・コインロッカーズに関しては、そもそも、オーケストラでもビッグバンドでもブラスバンドでもないバンドなのに選抜制度を敷いていたことが間違いだった。要はCDの売上枚数を増やすためには握手会などイベント開催が必要。そして、メンバーが多ければ多いほどイベント参加者は増える。でも、レコーディングに参加できるメンバーには限界があるということでAKBグループや坂道シリーズ、ラストアイドルなどでは選抜制度が導入されている。
でも、その仕組みはオーケストラやビッグバンド、ブラスバンド以外のバンドをやっている人や、バンドサウンドが好きな人からすればふざけんなよって気持ちにしかならないしね。
一般的な楽曲人気は高くても、ザ・ビートルズの“イエスタデイ”とか、エクストリームの“モア・ザン・ワーズ”が決してファンの間では支持されていないのもそういうことだと思う(名曲だとは思っているけれどね)。
“イエスタデイ”は実質ポールのソロだし、“モア・ザン・ワーズ”はリズム隊なしのアコースティックバラードだからね。
結局、コロナ禍になる前に既に大幅に人数を削減してしまったのは、そういうやり方が支持されなかったからであり、それは誰もがプロジェクト発足当時から指摘していたことなんだよね。
アニメから生まれた声優バンドならドラマーも含めた全メンバーがかわるがわるボーカルを取るという楽曲構成になるけれど、アニソンアーティストではないザ・コインロッカーズの楽曲でそれをやると不自然になってしまう。
でも、実際、ファンは秋元アイドルとして見ている(アイドル系フェスにも出ていたしね)。となると、歌割りで選抜メンバーがボーカルを取らない楽曲なんてファンはCDを買わないよねってなるしね。
だから、AKBグループや坂道シリーズ、ラスアイの手法をバンドでやろうとしたのは間違いだったとしか言えないかな。コロナに関係なく無理だったんだよ。しかも、途中から急にダンスとか取り入れて、完全にバンドじゃなくアイドルになってしまったしね。
まぁ、そういうのは昔のガールズバンドでもよくあったよね。ZONEとかそうだったし。
秋元康は、ガールズバンドだけでなく、声優アイドルでなおかつ、バーチャルアイドルでもある22/7も手掛けているが、これもメンバーの離脱が相次いでいて迷走していると言わざるを得ない。
こちらは、秋元康嫌いが多いはずのアニオタに支持されているくらい人気はあるのに、こういう事態になっているということは運営側の問題なんだろうね。
ラスアイも今年、事実上の人気ナンバー1メンバーだった長月翠が卒業したし(卒業後に男バレ報道があったのはそういうことだろうね)、AKBグループでいえばNMBはスキャンダル続きだし、HKTは実力者や若手ホープの卒業が相次いだ。本店だって、最古参メンバーのゆきりんが満身創痍だ。さらに乃木坂は主要メンバーの卒業が相次いでいる。
そろそろ、2000年代半ば以降の秋元系アイドルビジネスというのは通用しなくなったのではないだろうか。コロナがそれを加速したのは間違いないと思う。
というか、秋元系に限らず、地下アイドルも含めて、解散とか活動休止、卒業、脱退とかが多かったな…。
10月上旬に開催されたTOKYO IDOL FESTIVALの会場周辺でビラ配りしていたRAISEというグループのメンバーに“一目惚れ”し、それから1週間もしないうちに、彼女たちが出演するライブイベントに参戦したけれど、そのすぐ後に10月いっぱいでグループは活動休止(というかメンバー全員が所属事務所を抜けたから事実上の解散)すると発表されてしまったからね…。存在を知って丸1ヵ月も経っていないのに…。
そして思った。地下アイドルを推すのって、秋元系アイドルを推すより金かかるよねと。
常に対バン形式のライブを開催しているんだけれど、メンバーに認知されるレベルで通えば(最低でも月に数回顔を出せば)、あっという間に万は超えてしまう。しかも、通常のライブなら数時間ずっと見ていられるけれど、顔が認知されてしまうと物販に並ばざるを得なくなるから、他のアイドルを見ている時間もあまりない。そして、その物販に並んだ以上は最低でもメンバーとチェキを撮らざるを得ない。さらに、こうしたライブイベントはライブハウスでの開催が基本だから、別途ドリンク代も必要になる。結構な出費なんだよね。
あと、タイムテーブルもギリギリまで発表されない=推しが出る時間帯が分からないから、なかなかその日の他の予定との組み合わせが立てられない。
本当、いい勉強になった1ヵ月弱だった。
⑦ガールズバンドの解散・活動休止相次ぐ
秋元系の実質アイドルだったザ・コインロッカーズ以外にもガールズバンドの解散や活動休止が目立った。
ざっとあげただけでもこんな感じだ。
たとえば、赤い公園は、去年、中心人物だったギターの津野米咲が他界(コロナ禍を苦にした自殺とみられる)したことを受けて今年解散した。
また、この10年ほどのガールズバンドブームで最もメジャーな存在だったSilent Sirenは、リーダー・ひなんちゅの脱退後、残りのメンバーで活動するといったん発表したものの、結局、活動休止を発表した。
サイサイはアイドル的な人気も高いし、モデル出身だし、アニメ・ゲーム発の声優バンドPoppin'Partyとコラボしたりしているから、コロナ禍によって懐事情が苦しくなったのかもなんていう推測は簡単にされてしまうが、世間的にはアーティスト扱いされているHR/HM系のガールズバンドでも活動休止が相次いでいる。
つい最近、活動休止を発表したMARY'S BLOODはアニソンカバーアルバムとか出しているので、アイドル寄りの路線だからコロナ禍で苦しいのかななんて思ったりもする。
でも、コロナ前は欧州のフェスに出るなど、いわゆる嬢メタルブームから生まれたバンドの中で最も海外で支持されたLOVEBITESですら、中心人物mihoが脱退し、バンドは活動休止を発表したんだから、アイドルやアニソン路線は関係ないのかもしれない。
また、LOVEBITESが台頭する前は、嬢メタルブームのフロントランナーだったAldiousはメンバーチェンジの激しいことで有名だが、加入して間もない3代目ボーカリストのR!Nが今年脱退してしまった。
正確にはバンドではないかもしれないが、BABYMETALの活動休止もこの中に入れていいかもしれない。
余談だが、英語では楽器奏者を含む音楽グループだけがバンドではないんだよね。ボーカルグループだって、バンドと英語圏では言うんだよね。
90年代終盤から00年代初頭にかけてブームを巻き起こしたバックストリート・ボーイズやイン・シンクなどの男性アイドルグループはボーイズバンドと呼ばれていたしね。
話は元に戻るが、世界的に日本ほど、ガールズバンドが多い国なんてないんだよね(男女混合含む)。それは結局、アイドル的な人気に支えられていたってことなんだと思う。というか、アイドル以上にアイドル的な売り方に依存していたのがガールズバンド業界なのではないだろうか。
実は握手会など接触系イベントでCD売り上げをのばしていたバンドも多いし、ライブ会場の客席を見渡せば、アイドルとかアニソンのライブのような客層だし、ノリ方もそうだよね。
それがコロナ禍になって通用しなくなったんだと思う。AKBグループや坂道シリーズは大所帯だけれど、ガールズバンドはせいぜい、4〜5人のメンバーだから、収入が減ればやりくりはさらに大変になるしね。
⑧Billboard Hot 100に日本語曲が58年ぶりチャートイン
ここからはチャートマニアの自分にとっては重要な今年の出来事。
BTSによる日本語曲“Film Out”が81位を記録した。日本語歌唱曲による全米シングルチャート入りは1963年の坂本九“上を向いて歩こう”以来と報道された。個人的には同じ坂本九でも日本語と英語をミックスした“支那の夜”以来の日本語曲とすべきだとは思うが、こういう紹介の仕方にしたのは、“支那”という言葉に対する政治的配慮だろうか。
ロス・デル・リオの“恋のマカレナ”は英語の女性ボーカルをミックスしたリミックスバージョン(Bayside Boys Mix)で大ヒットになったにもかかわず、スペイン語のヒット曲としてカウントされているのだから、やっぱり、政治的配慮なんだろうな…。
それにしても、日本人アーティストや日本が活動拠点のアーティストではなく、K-POPアーティストによって久々の日本語ヒット曲が出たというのはなんだかなという気もするな…。
⑨エルトン・ジョン22年ぶりの全米トップ40ヒット
リア・デュパとのコラボ曲“コールド・ハート(プナウ・リミックス)”が最高位11位を記録し、エルトンにとっては、リアン・ライムスとのコラボ曲“リトゥン・イン・ザ・スターズ”以来の全米トップ40ヒットとなった。
エルトンはかつて、1970年から99年まで30年連続でトップ40入りを果たしていたが、2000年代に入ってミュージックシーンが変わってしまい、ヒット曲を放てなくなってしまった。
まぁ、80年代終盤辺りからは、同じ曲が2年連続でチャートインしたとか、旧曲のニューバージョンで何とか記録をのばしたとか、コラボ曲で何とかヒットできたとか、年末ギリギリでトップ40入りを果たしたとか、だましだましでの記録達成だったりしたけれどね。
ちなみに、2000年から2020年の間にエルトンが100位以内に送りこんだ楽曲は“サムデイ・アウト・オブ・ザ・ブルー”の1曲しかなかった。しかも、それは2000年のことで、サントラ絡みのヒットだった。というか1999年のトップ40ヒット“リトゥン・イン・ザ・スターズ”も舞台絡みの楽曲、つまり一種のサントラヒットだし、97年から98年にかけてランクインした“キャンドル・イン・ザ・ウィンド1997”はダイアナ元妃追悼ソングなうえに、旧曲のニューバージョンだから(両A面のもう1曲“ユー・ルック・トゥナイト”は自身のオリジナルアルバムからのカットではあるが)、そう考えると、既に90年代終盤あたりからエルトンの新曲というのは需要が減りつつあったのかもしれないな…。
22年ぶりのトップ40ヒットとなった“コールド・ハート”は“ロケット・マン”や“サクリファイス”などエルトンの過去曲をサンプリングしたものだしね。
ちなみに今年、エルトンは“コールド・ハート”以外にも2曲が100位以内にランクインしたけれど、この“コールド・ハート”含めた3曲全てが若手アーティストとのコラボ曲だからね…(残り2曲の共演者はリル・ナズ・Xとエド・シーラン)。
まぁ、和田アキ子がm-floとのコラボで33年ぶりにオリコンのトップ10内に入ったとか、小林幸子が“千本桜”で新たなファン層を獲得したとか、そんな感じなのかな?
⑩マライアのアノ曲が3度目の首位獲得
首位の座から落ちた数週間後に再びトップに立つといった、いわゆる返り咲きのナンバー1ヒットはいくらでもある。
80年代から90年代は数えるほどしかなかったが、2000年代以降は当たり前のように返り咲き現象が起きている。
今年新たにナンバー1ヒットとなった楽曲の中では、シルク・ソニック“リーヴ・ザ・ドア・オープン”、BTS“Butter”、ザ・キッド・ラロイ&ジャスティン・ビーバー“ステイ”、アデル“イージー・オン・ミー”と返り咲きを果たした楽曲が実に4曲もある。
でも、首位獲得曲が圏外に消えた後にリエントリーして再度ナンバー1 になった例は、これまではチャビー・チェッカーの“ザ・ツイスト”とマライア・キャリーの“恋人たちのクリスマス”しかなかったんだよね。
そして、マライアのこの曲はさらに再度圏外に消えた後に再びリエントリーして、3度目の首位に立ってしまった!
一度のエントリー期間に首位に返り咲いた曲を除けば、3度目の首位を獲得したのはこの曲が初めてだ!
チャートマニア的にはたまらない新記録樹立だ!
前回のエントリー時にトップに立ったのは(まぁ、このシーズンにおける返り咲き首位でもあったが)、カレンダー上で今年の最初の週で、今回のエントリーで首位となったのは今年最後の週(クリスマスの日付)。つまり、年のはじめと終わりを制した上に、ニューイヤーとクリスマスも制しているんだから、すごいとしか言いようがない。
それにしても、新曲のクリスマス・ソングってヒットしないよね…。
今年リリースの曲でトップ40入りした曲はまだないからね…。
エルトン・ジョンとエド・シーランのコラボ曲“Merry Christmas”は現時点では66位どまりだしね…。
現在、Billboard Hot 100のトップ40内に入っている新しめのクリスマス・ソングだと、ケリー・クラークソン“アンダーニース・ザ・トゥリー”(2013年)、アリアナ・グランデ“サンタ・テル・ミー”(2014年)といったあたりだけれど、どちらの曲もリリース時はトップ40入りしていないしね…。
なんなんだろうかね、どんな名曲でも、どんな人気アーティストの曲でも、リリースしてすぐのクリスマス曲はヒットしないという米国のシステムは…。