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機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ

OVAとしてブルーレイやDVDで発売する作品や配信という形で公開されるアニメなどを、ソフトのリリースや配信を前に(場合によっては同時に)劇場で上映するイベント上映というのはすっかり定着している。中にはテレビシリーズの放送に先駆けて上映するというものもある。

劇場上映作品という箔をつければ注目度も増えて、ソフトの売上枚数や配信の再生回数も増える上に劇場での収入も入るという供給側の思惑と、劇場の大スクリーン、大音響で見たいというファンの声が合致してしているのだから、こうした上映があとをやまないのは当然といえば当然かもしれない。

そして、こうしたイベント上映作品というのは、あくまでブルーレイやDVDの発売や配信、テレビ放送がメインで、あくまで劇場での上映は販促活動だから、映画館で上映される時の入場料金は通常より安いことが多い。上映時間が短いものや、短期間に3部作など連作で発表するものが多いというのも低価格になる理由だとは思う。

「BanG Dream!」の「FILM LIVE」が約70分の作品でありながら、2000円均一という例外的に高額となったのは、同作が音楽のパフォーマンスに特化した内容だから、アニメというよりかは、音楽コンサートのライブビューイングに近いものとみなして、そういう料金設定にしたのだとは思う。

ところが、本作は、劇場公開と同時に上映劇場でブルーレイが発売されているにもかかわらず、1900円均一という料金設定になった。

普段からTOHOシネマズやMOVIX、T・ジョイといった邦画大手3社系のシネコンなどで各種割引サービスを利用したり前売券を買ったりせずに、一般料金で鑑賞している人にとってはいつもと変わらない入場料金だが、ユナイテッド・シネマなどの利用者にとっては100円の値上げだし、TOHOシネマズなどの利用者でも学生料金や小人料金、シニア料金などで入場している人からすれば、大幅な値上げだ。

しかも、本作はあまり、その部分には触れずにプロモーションされているが、実は3部作だ。

それらのことを考えれば、本作は通常料金ならまだしも、学生料金や小人料金などの利用者まで1900円均一というのはぼったくりと言わざるを得ないと思う。

元々は去年の夏に公開予定だったが、新型コロナウイルスの影響で今年5月7日に延期された。しかし、緊急事態宣言の発令で5月21日に再延期。
さらに、緊急事態宣言の延長で6月11日にまたまた延期となってしまった。しかも、6月になって都内の映画館の営業が再開されたとはいえ、半分の座席しか販売されていない。

だから、配給の松竹(正式には松竹ODS事業室の配給)としては、そうしたコロナの影響で稼げなかった分を取り戻そうと、躍起になっているのかもしれないが。

でも、そうしたぼったくり価格設定なのに、「機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編」を超えて、ガンダム映画史上最大のヒットになる可能性があると煽っているのはいかがなものかと思う。

そして、ふと思った。「ラーヤと龍の王国」や「クルエラ」といった劇場公開と同時(「クルエラ」は劇場公開の翌日)にディズニープラスでの配信を開始したディズニー映画に対して、全興連は映画館を軽視しているとして上映を拒否し、それに従って、先述した邦画大手3社系などのシネコンでは「ラーヤと龍の王国」や「クルエラ」は上映しなかったのに、劇場公開と同時にブルーレイを発売している「閃光のハサウェイ」は上映拒否しないのかよ?それって、ダブルスタンダードだろ!って思った。

まるで、立憲民主党みたいだよね。自民党の政治家のスキャンダルは批判するくせに、自分のところの政治家が似たようなことをしでかしたら、無視するのとそっくり。

今のところ、ブルーレイは劇場でしか売っていないし、劇場で売っていれば、それなら映画館の儲けになるからいいってことなのか?

それって、従来の映画上映システムを破壊するとしてディズニー映画の上映をボイコットした時の声明と矛盾しているでしょ!

「閃光のハサウェイ」は邦画大手3社の一つ、松竹の作品だから問題視しないが、ディズニーは外資だから批判しているという風にしか見えないのだが。

ディズニーはコロナ前は洋画配給会社では圧倒的なシェアを誇るトップランナーだったし、邦画を含めても東宝に次ぐ2位だった。
コレが日本市場からいなくなれば、東宝以外の邦画各社のシェアが上がるという、そういう排外主義、国粋主義でディズニー批判しているようにしか見えないんだよね。

劇場公開と配信を同時に行っている米国では、コロナ前に比べると若干、弱いかもしれないが、それでも、「ラーヤと龍の王国」も「クルエラ」もヒットと呼べる数字をあげている。

ディズニープラスがローンチされていない韓国などでは、この2作のみならず、日本や米国では配信オンリーにされてしまった「ムーラン」や「ソウルフル・ワールド」もヒットしている。

このまま、日本ではディズニー映画は邦画大手系以外のシネコンやミニシアターのみでの小規模公開となり、地味な興行成績しかあげられないという状況が続くと、今後、コロナが収束し、ハリウッドのスターや監督、プロデューサーの世界的キャンペーンが復活したとしても、日本のワクチン接種状況に関係なくスルーされるのは確実だし、今の小規模公開ですらなくなり、日本では配信かブルーレイ、DVDでしか新作ディズニー映画を見られないという状況になってしまうのではないかと危惧してしまう。

東京や大阪の映画館が緊急事態宣言で休業中でも、隣接する県では構わず新作を公開して、県境をまたぐ人流を促したりするのは本当、理解不能だった。
また、東京の映画館の営業が再開されてからも、緊急事態宣言の影響で公開を延期した作品と、元々、この時期に公開予定だった作品が同時期に公開されるから、空前の公開ラッシュ状態となり、それぞれの作品の上映回数が驚くほど少なくなっている。

こうした現状も含めると、日本の映画会社や興行会社は本当に映画や映画ファンのことを思っているのだろうかと疑問に思ってしまう。

そんな不満だらけの中、鑑賞した本作だが、あまり、ガンダム作品を見ているという感じはしなかった。

「逆襲のシャア」から連なる作品ということは周知されていても、3部作であることを隠しているかのようなプロモーションのせいで、「逆襲のシャア」同様、単体の映画のように思われているが、実際は違うからね。

だから、当然、途中で話は終わるし。要は1クール放送のアニメでいえば、4話あたりまでを見せられた状態だからね。これで、どうこう評価しろといってもねって感じかな…。

同じ3部作でも、「ロード・オブ・ザ・リング」(以下LOTR)のように一番短い1作目でも2時間58分(スペシャル・エクステンデッド・エディション=SEEだと3時間28分)もあり、一番長い3作目だと3時間21分もある(SEEだとさらに長い!)から、1本だけピックアップしても色々と語れるだろうが、この「ハサウェイ」は「LOTR」の1エピソードあたりの尺の半分の1時間35分しかないしね。

まぁ、主人公が素性を隠している冒頭は面白かったけれど、すぐに仲間が出てきたから、スパイもの、ミステリーものとしての面白さはそれほどでもないしね。

とりあえず、ヒロイン役のギギが可愛い。それだけは確かだと思う。
声を担当した上田麗奈は、本作をはじめ、作品としての出来はともかく、去年の「日本沈没2020」などで要注目の声優といえる気はするかな。

それにしても、「逆襲のシャア」に続くストーリーということもあってか、80年代のフュージョンっぽい劇伴だったな…。でも、[Alexandros]の主題歌は好きかも。

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