My Favorite Songs 2021
《音楽シーン総括》
そもそも、フィジカルの売上ランキングなんて無意味なものになって久しいが、それでも言及しておくとすると、オリコンの年間シングルランキングの上位(1〜25位)を見ると、ジャニーズとK-POP、K-POP風邦楽グループ、それに秋元系アイドルと非常に偏ったジャンルで占められている。
アルバムランキングでは、この顔ぶれから秋元系が消えて、かわりに宇多田ヒカルや桑田佳祐といったベテランやOfficial髭男dismやYOASOBIといったストリーミングで人気が高いアーティストが入っているだけだ。
しかも、この4組のうち、髭男以外はEP(ミニアルバム)扱いの作品でのランクインだ。
つまり、ジャニーズやK-POPのファンがお布施として大量に購入したと思われる作品を除くと年間ランキング上位25作品でヒットしたと言えるフルアルバムは髭男しかないということになる。
日本でも欧米と同様にアルバムというフォーマットが過去の遺物になりつつあるということなのだろう。
アニソンの話もしておこう。こむちゃっとカウントダウンの年間チャートにTrySail関連が2曲も入っているし、ジャニーズも2曲入っている。
さらに、出だしはボカロかも知れないが今は一般向けアーティストであるYOASOBIが年間2位と大健闘している。そして、1位は人気女性声優水瀬いのりだ。
こむちゃは元々、年間チャートでは女性声優歌唱曲が1位になりやすい傾向は強かったものの、年間チャート全体や普段の週間チャートでは圧倒的に男性声優歌唱曲が優位だった。
女性声優で年間上位に入るのは水樹奈々や田村ゆかりといったレジェンドクラスや、作品発のユニットが中心で若手は水瀬いのりくらいだった。
それが、今年は水瀬いのりが初の年間1位を獲得するのみならず、TrySailメンバーのうち2人が年間トップ10入りを果たしている。
明らかに男性声優のパワーが落ちているんだよね…。何か腐女子の経済力とか組織力がコロナ禍になって低下しているのではないかという気がして仕方ない。
《洋楽トップ5》
年々、洋楽のこうしたランキングを決めるのが難しくなっている。
理由は明白だ。その年を代表するヒット曲というのはストリーミングサービス向けに、要はスマホやPCで聞くために、しかもイヤホンで聞きやすいように作られているものが多いからだ。だから、どうしても、消耗品的なつくりの曲が多くなってしまう。
その一方で、ベテランアーティストたちは昔ながらの構成で作られた名曲とまでは言えなくても良曲と呼べる楽曲を世に送り出しているが、いかんせん、こうした楽曲はストリーミングでは聞かれないからヒットチャートには顔を見せない。
その理由も明白だ。昔ながらの構成だからランニングタイム(=尺)が長いんだよね。
コンポやラジカセなどでスピーカーを鳴らしてCDを聞く時には10分以上ある曲でもすんなり聞けてしまうが、ストリーミングで楽曲を聞いたり、YouTubeで MVを見たりする時だと4分でも長いって感じてしまうんだよね。
だから、こういう楽曲はストリーミングやYouTubeでは避けられてしまう。
最近はラジオもアプリで聞く人が増えているから、ラジオのオンエアでも同様に長い曲は好まれなくなっているのではないだろうか。要はオールディーズと呼ばれる音楽が流行っていた頃に戻ったってことかな。
つまり、どんなに良い曲でもラジオやテレビを通じて耳にする機会がほとんどなければ、街の音、お茶の間の音にならなければ、それはその年を代表する楽曲とは言えないということ。
それでも、邦楽のようにフィジカルでリリースされていれば、自宅で繰り返しコンポなどのスピーカーを鳴らして聞いているうちに、気分的には、かなり規模は小さいものの街の音のように思えてくるし、スピーカーを鳴らして聞いていれば同居家族がいる場合には嫌でも同居家族の耳にも入るのでお茶の間の音にもなる。でも、フィジカルでリリースされずスマホで聞くのが当たり前になりつつある洋楽ではそうしたプチ体験も難しい。
それが洋楽ベストソングのようなものが選びにくくなっている理由だ。
そんな中、苦しみながら選んだ今年の5曲は以下の通りだ。今年も一応、フィジカルで所持しているものを対象に選んでいる。
①ピーチズ/ジャスティン・ビーバー feat. ダニエル・シーザー & ギヴィオン
日本ではいまだにゴシップネタを提供してくれる海外セレブの1人といった扱いなのかもしれないが、もっと、アーティストとして評価すべきだと思う。オリジナルアルバムを出すたびに確実に成長していることには感心してしまう。
前のアルバム『チェンジズ』の時には、グラミー賞が一切、R&B系の部門にノミネートせず、ジャスティンをガッカリさせたけれど、今回のアルバム『ジャスティス』関連では、この曲がきちんとR&B部門にノミネートされているので、米国ではポップスターではなく、きちんとアーティストとして評価されるようになってきたってことなのかな?
とはいえアルバム全体で見ると、やっぱり前作の方がR&Bアルバムだと思うんだよね。今作からの最大のヒット曲である“ピーチズ”は紛れもなくコンテンポラリーなR&Bだけれど、他のヒット曲を見てみると、“ホーリー”はゴスペルだし、“ロンリー”にはEDM的要素があるし、“エニワン”は80年代産業ロックっぽい。結構、音楽性は幅広いんだよね。
②ドライバーズ・ライセンス/オリヴィア・ロドリゴ
今年の洋楽で一番ヒット感があったのはこの曲かな。日本では全然ヒット感はなかったけれどね。
やっぱり、歌詞の“I still fucking love you babe”って部分が受けたんだと思うが、日本人にはその感覚って分からないしね。
それにしても、オリヴィア・ロドリゴって90年代以降の女性ロック系シンガーを総括したようなアーティストだと思う。
ベースにあるのは90年代のオルタナ。女性アーティストでいえば、アラニス・モリセットあたり。
そして、アラニスあたりの影響を受けつつ、アイドル的な要素も持った00年代初頭の女性アーティスト、具体的にはアヴリル・ラヴィーンやミシェル・ブランチあたりとの親和性が高い。全米年間チャートでは“ドライバーズ・ライセンス”よりも順位が高かった“グッド・フォー・ユー”なんて完全にこの路線。
それにプラスして、2010年代になってブレイクしたラナ・デル・レイのようなアンニュイな雰囲気もある。“ドライバーズ・ライセンス”や“デジャヴ”はそっち系だと思う。
ラナはブレイクしたての頃はオッサンどものノスタルジーをかきたてるために作られたアイドルなのではないかと揶揄する声もあったけれど(今は誰もそんなことを言わないが)、アイドルかアーティストか論争が起こるオリヴィアはそれに近いのかもね。
そして忘れそうになるけれど、彼女ってアジア系なんだよね。BTSもそうだけれど、アジア系やアジア人が全米ナンバー1を取れる時代になったというのは時代の流れを感じるよね。
③マイ・ユニバース/コールドプレイ、 BTS
正直言って、この曲はコールドプレイ名義でリリースする必要はなかったと思う。それは、一つ前のシングル“ハイヤー・パワー”にも言えることだけれどね。
同じ、デジタル路線の曲でも、2017年のザ・チェインスモーカーズとのコラボ曲“サムシング・ジャスト・ライク・ディス”はきちんと、バンドとしての音が鳴っていた。
でも、この曲が“サムシング・ジャスト・ライク・ディス”同様、アンセミックな楽曲であることは間違いないと思う。
ところで、この曲が全米チャートでナンバー1になれたのはフィーチャーされているBTSのおかげであることは否定できないと思う。
でも、“Dymamite”や“Butter”に比べると、チャート下降のスピードがはやいんだよね。
それは日本でも同様。Billboard JAPANの年間シングルチャートの100位以内には英語曲、日本語曲、韓国語曲合わせて7曲もランクインしている。
でも、この“マイ・ユニバース”は入っていないんだよね。
つまり、あまりにも洋楽の音になりすぎているこの曲はK-POPのファンのからすれば、好みではないってことなんだろうね。
④ウィロー/テイラー・スウィフト
日本でテイラーが人気があったのは、程良くポップで程良くカントリーな音楽をやっていた頃で、アルバムを出すたびにカントリー要素が薄くなっていった時代だ。アルバムでいえば2nd『フィアレス』から5th『1989』まで。
でも、カントリー要素が完全になくなり、完全に流行りの洋楽サウンドになった6th『レピュテーション』辺りから日本での人気は低下していった。
そして、コロナ禍で作られた2部作である8th 『フォークロア』と9th『エヴァーモア』は逆にポップ色が薄くルーツ色が強いために、さらに日本での人気は低下してしまった。
でも、この2部作は個人的にはかなり好きだ。この“ウィロー”は『エヴァーモア』からのシングルだ。アルバム自体は配信や輸入盤では2020年の年末にリリースされているが、日本盤は年が明けてからのリリースなので今年の名曲に入れさせてもらった。
やっぱり、テイラーは流行りのサウンドよりもルーツ系の方が合うというのを改めて実感した。
それにしても、最近のテイラーは多作だ。
この2部作に続いてテイラーは原盤権を巡る泥沼騒動に対抗するため=原盤権を奪ったヤツが所有しているものを意味のないものにするために1stから6thまでのアルバムの再録プロジェクトを進めていて、今年はそのうち、2nd『フィアレス』と4th『レッド』の再録盤がリリースされている。これらのアルバムにはオリジナル盤未収録曲も収録されているから、本当、コロナ禍になってからのテイラーは精力的だ。
⑤セイヴ・ユア・ティアーズ/ザ・ウィークエンド
全米年間チャートでこの曲が2位になったのはアリアナ・グランデ参加のリミックス・バージョンのおかげであることは誰もが認めるところだ。
そのリミックス・バージョンはフィジカルでは持っていないが、オリジナル版は所持しているので、このランキングに入れることにした。
というか、スーパーボウルのハーフタイムショー出演に合わせてリリースされたベスト盤にこのリミックスが収録されていないのは何故?
海外では緊急リリースだからともかく、日本盤CDはスーパーボウルからしばらく経った3月のリリースだから、ボーナストラックとして収録することくらいできたのでは?
ストリーミングや動画再生回数を増やすため、あえてフィジカルでは出さない作戦なのかな?
というわけで洋楽は5曲全てが全米ナンバー1ヒットとなった。やっぱり、耳なじみの曲じゃないと、その年を代表する曲には選べないよね。
《邦楽トップ5》
こちらは洋楽とは比べものにならないほど、フィジカルで買っているものが多いので選ぶのに苦労はしなかった。
ただ、例年、このランキングにはちょくちょく顔を出している秋元康プロデュース楽曲の選出は今年はなかった。本当、今年の秋元作品は酷いのが多い。コロナ禍で握手会商法ができなくなり、チャレンジができなくなり、音楽面でも思想面でも保守的になってしまったようだ。
古くさいサウンドの曲か、サウンドはまともでも歌詞がクソみたいなものばかりだったからね。
HKT48の“君とどこかへ行きたい”は数少ない良曲だったけれど、握手会商法が使えない分を補おうとW選抜なんていうふざけたことをやってしまったので、対象外とさせてもらった。
そんなわけで今年のランキングはこんな感じになった。
①おもいでしりとり/DIALOGUE+
マジで名曲!
メロディやアレンジもいいんだけれど、歌詞でしりとりしているところも最高だし、そのしりとりをやりながら、ストーリーが進行しているのも見事だ!
この曲がオープニング曲となっているアニメ「ひげを剃る。そして女子高生を拾う。」を見るまでは、DIALOGUE+に関する知識はほとんどなかったので、アニメのおかげで彼女たちを知ることができたって感じかな。
ちなみにこの曲の作詞・作曲を手掛けたのは、UNISON SQUARE GARDENの田淵智也だ。彼は今年、「白い砂のアクアトープ」の第1クールのオープニング曲“たゆたえ、七色”と第2クールのオープニング曲“とめどない潮騒に僕たちは何を歌うだろうか”(いずれも歌唱はARCANA PROJECT)の作詞も手掛けていたが、こちらも名曲で、2021年のアニメ界、アニソン界を支えた重要人物だったと改めて思った。
②ウィークエンドシトロン/=LOVE
これまでイコラブの曲で一番好きな曲は“Want you! Want you!”だった。
イコラブ推しになった人の中にはプロデューサーである指原莉乃や彼女が所属していたHKT48が好きだから、その流れでイコラブも好きになったという人も多い。こうしたオタの多くは中高年男性だ。というか、もっとストレートに言ってしまえば、野党や朝日新聞、中国、韓国が大嫌いなネトウヨが多い。
にもかかわらず、同曲は曲調もMVもK-POP風だった。さらに歌詞の中には韓国語も出てくる。要はおっさんオタを捨てて若いファン、特に女子が好む路線に走ったということだ。
そして、その作戦は成功し、イコラブの女性ファン比率は高まっていった(コンサート会場での目視による推計)。
そして、この“ウィークエンドシトロン”もその路線を受け継いだ楽曲だ。K-POP風にプラスして、これまた、おっさんオタが嫌いなラップまで取り入れている。
でも、その一方で“Want you! Want you!”では少なかった王道アイドル曲の要素も盛り込まれている。黄色い衣装のおかげもあるだろうが、これぞアイドルが歌う夏曲というイメージを持った人も多かったのではないだろうか。
その結果、若いファン、おっさんオタ両方に好かれる楽曲となり、オリコンでも過去のシングルよりも長い期間、上位に居座ることに成功した。
さらに、この曲で遂にMステ出演を果たし、ドルオタ以外にも見つかることになった。
もしかしたら、数年後には“ウィークエンドシトロン新規”なんていう言葉も使われるようになっているのではないかと思ったりもした。
ところで、“マイコペン”ってなんだ?
それから、この曲あたりで一気に莉沙人気が上がった気がする。
③まほろばアスタリスク/≠ME
これまた指原莉乃プロデュースのアイドルグループ。今年、師匠の秋元康は駄曲、凡曲を連発したが、弟子の方は良曲どころか神曲を連発したように思える。
いまだにイコラブに“声優アイドルグループ”という枕詞がついていることには違和感がありまくりだ。代々木アニメーション学院発のプロジェクトだから、そういう肩書きになっていてもおかしくはないんだけれど、実際の活動を見ると“うーん………”と言いたくなってしまう。
イコラブに比べると“声優アイドル”という枕詞がつけられることはほとんどない“妹分”のノイミーだが、この“まほろば”はアニソン的雰囲気を持った楽曲だった。
まぁ、この曲の作曲担当の本多友紀は、アイドルマスターやレヴュースタァライトなどのアニメやゲームに楽曲を提供してきた人だから、そういうテイストになるのは当然なんだけれどね。
そして思った。この曲にアニメのタイアップがついていたら、アニオタもノイミー好きになり、ファン層が広がっていけたんじゃないかなと。
そういえば、イコラブはきちんと声優と呼べる活動をしたとは言いにくい面も多分にあるが、ノイミーはメンバーの蟹沢萌子がこちらはガチな声優アイドルユニットとしても活動しているんだよね。今後、ノイミーは真剣にアニソンタイアップを考えた方がいいのでは?マジでファン層を拡大することができると思う。
④One Last Kiss/宇多田ヒカル
最近の宇多田は、ネトウヨ化している親友・椎名林檎に影響されたのか、やたらと日本語タイトルの曲や和風テイストの曲が多い。
でも、やっぱり宇多田は洋楽よりの楽曲に歌謡曲テイストを混ぜたようなものの方が合うというのを再認識させてくれたのが「シン・エヴァンゲリオン」主題歌となったこの曲だ。
これによって、新劇になってからのエヴァ映画の主題歌は全て宇多田が担当となったが、「Q」の主題歌“桜流し”は和風路線で個人的には合わなかったが、「序」と「破」の主題歌となった“Beautiful World”(「破」はリミックス)同様、この曲もかなりの良曲だ。やっぱり、宇多田は英語タイトルの洋楽風の曲の方がいいな。
ところで、この曲のMVの宇多田って、いかにも欧米在住のアジア系女性って感じの雰囲気だったよね。しかも、MVを監督したのが庵野秀明だっていうんだから驚きだ。直接、庵野が現場で演出したわけではなく、素材はリモート作業で撮られたものらしいが、これを見ると宇多田と庵野って不倫してんじゃないかって思えてしまうくらい親密感のある宇多田が映されていたよね。
⑤勿忘/Awesome City Club
オーサムの女性メンバーPORINと小沢健二の不倫疑惑が報道された。オザケンのフリッパーズ・ギター時代の相方、小山田圭吾は障害を持つ同級生にかつていじめ行為をしていたことを武勇伝として語っていたことが発覚し、東京五輪開会式セレモニーに関与することができなくなった。
2人揃って何やってんだかという感じだが、結局、ミュージシャンだろうと一般人だろうと、いわゆるバブル世代の連中には、不倫やいじめ、差別はこれっぽっちも悪いとは思っていない老害が多いってことなんだろうね。
そして、世の中はキャンセルカルチャーの嵐で小山田をはじめ、不倫と情報漏洩をダブルでしてしまった声優の鈴木達央などが“失職”しているのに、オザケンやオーサムはお咎めなしなのは何故?不倫疑惑のメンバーがいるオーサムが堂々と紅白歌合戦に出られるのは何故?何か叩いていい奴だけ叩いていないか?
それにしても、この曲は映画「花束みたいな恋をした」の予告編などに使われてヒットしたし、映画にはメンバーも出演していたけれど、映画には全く使われていないんだよね。
それで大ヒットしたってことは、いかに世の中の人たちは映画館で映画を見てもエンドロールを見ずに席を立っているかというのがよく分かるよね。
それにしても、オーサムはこの曲のあと、次から次へと新曲を発表したけれど、ほとんど話題にならなかったよね。まぁ、ストリーミングというのはフィジカル以上に一発屋が出やすいメディアではあるけれどね。
ストリーミングでしか音楽を聞かない人って、特定のアーティスト、特定の楽曲ばかりを繰り返し聞く傾向が強いからね。
それにしても、オーサムはこの曲が売れたおかげで、NHKやキー局に出まくるようになったけれど、結局、彼等は地上波のテレビに出て芸能人扱いされたかったんだろうね。
音楽専門チャンネルのスペシャとかラジオのJ-WAVEよりも、やっぱり、地上波で目立ちたいってことなんだろうね。
でも、彼等がそういう態度を見せたせいで、それまで支援していたスペシャとかJ-WAVEは、あまり彼等を取り上げなくなったような気がする。
限りなく一発屋状態に近いのに、こんなので大丈夫なのだろうか…。
《最後に一言》
こういうランキングって、そろそろ作成するの限界かも…。