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TVアニメ「鬼滅の刃」 無限列車編

記録的な大ヒットとなった「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」を全7話のテレビシリーズとして再構築した作品が最終回を迎えた。

日本ではテレビシリーズの総集編映画というのはポピュラーな存在になっていて、アニメを中心に毎年、多くの作品が公開されている(たまにドラマの総集編映画もある)。
こうした作品の中には、テレビシリーズになかったシーンが挿入されるものも多い。大筋は変更されていなくても作画が修正されたり、新規カットが追加されたりする作品も多い。台詞や音楽を新たに収録したものだって多い。
また、総集編ではないが、一部修正を加えた「スパイの妻」とか、盛り込む要素を一部変更した「太陽の子」といった単発テレビドラマの劇場版なんてものもある。

その一方で、劇場公開作品をテレビシリーズとして再構築する例もレアケースだが存在する。

リメイク版「宇宙戦艦ヤマト」シリーズは、元々、テレビシリーズとしての放送を念頭に置いて作品が制作されているが、まずは、各話ごとにつくオープニングやエンディングなどを省略し、2〜4話をまとめて一本化したものを映画館で先行上映している。そして、その後、テレビで各話ごとにオープニングやエンディングをつけてシリーズとして放送する形をとっている。

ちなみに、「鬼滅の刃」のテレビシリーズ1期の最初の5話はこの方式でテレビ放送前に「兄妹の絆」として劇場公開されている。
後に、1期の6話以降はストーリー上のブロックごとにわけて、総集編というよりかは、アバンとかCM前後のダブり部分を削っただけの再構築テレビスペシャル4作品も作られている(韓国ではこのうちの何本かが劇場公開されるようだが)。

「機動戦士ガンダム」のファーストシリーズ以前の時代を描いた「THE ORIGIN」シリーズはOVAのイベント上映という形で全6章が劇場公開され、後にそれを再編集した全13話のテレビシリーズが放送された。

洋画では、「ラストエンペラー」のロング・バージョンが3夜連続放送のミニシリーズとして再構築されたこともある。

今回の「無限列車編」のテレビ版は形式としては「THE ORIGIN」のパターンが最も近いと思う。
もっとも、単なる劇場版の分割放送に新規カットや新規BGMなどを加えただけでは、既に劇場版を見ている人の中には、もういいやとなっている人もいるので、今回、第一話は原作にもない完全オリジナル・ストーリーとなっていた。

原作にない展開をテレビアニメで描くことに関しては否定的な意見を述べる人も多いが、今回に関しては納得のいくものだったのではないかと思う。

1期終盤で、煉獄は炭治郎たちより先に無限列車の調査に向かっていたのに、劇場版で同じ列車に煉獄と炭治郎たちが乗っているのは辻褄が合わなかったからね。その辻褄を合わせてくれた作品として、今回の第一話は意義があったと思う。

ところで、フジテレビが2期(遊郭編)の放送権を獲得し、放送時期を発表するにあたって、“自分たちは一切手を加えない”みたいなことを言っていたが、このテレビ版「無限列車編」のクレジットを見ると、バリバリ、フジテレビが口出ししているよね。

要は「遊郭編」の放送は1クールだと足りないが、2クールだとあまりすぎてしまうから、こういう放送の仕方にしたんでしょ?選挙報道や年末年始の休止期間を除いても2ヵ月くらいあまってしまうからね。
ローカル局やBS局なら、きっかり、1クールとか2クール分のエピソードがない構成でも編成上、そんなに問題はないが、地上波キー局ではそうはいかない。だから、「鬼滅の刃」放送枠として2クール分用意したので、本題の「遊郭編」の前に「無限列車編」を分割して放送しようって提案したのでは?

今回のテレビ版「無限列車編」や続く「遊郭編」の放送にあたっては、1期を放送し鬼滅ブームの礎を築いたTOKYO MXなどのローカル局やBS局のBS11よりも先にフジテレビが放送するという形になった。
一見すると、ブームの礎を築いたローカル局やBSに配慮しているように見えるけれど、それって、「鬼滅の刃」というコンテンツをフジテレビが自社のものにしてしまっただけでは?
しかも、それだけでなく、MXやBS11などで放送するよりも先に各配信サービスでの配信がスタートしているんだから本当、腹が立つ。

要は、フジテレビでの放送に対して批判的な声が多かったから、MXなどに配慮しているフリをしているだけでしょ。
ufotableだって、フジテレビの金になびいて、礎を築いたローカル局やBSを見捨てたってことでしょ?その稼いだ金はきちんとアニメーターに還元されているのか?会社自体は脱税問題も起こしているし、上層部が私腹を肥やしているだけなのでは?

フジテレビやufotable批判はこのくらいにして中身自体についても語っておこう。

今回のテレビ版「無限列車編」、普通にテレビシリーズとして楽しめたんだよね。アバン部分はほぼ前の回の繰り返しでちょっと水増ししている感じはするけれどね。

劇場版「無限列車編」が公開された時に自分を含む多くの映画マニア・シネフィルや批評家は“あんなのは映画ではない”と主張していた。

そして、当時、「無限列車編」に熱中し、何度もリピートしていた人たちは、我々のようなタイプの人間に対して嫌悪感を示し、“これだから映画マニアは…”みたいなことを言ったりもしていた。

でも、我々は一言も“つまらない”とは言っていないんだよね。“単なるテレビアニメだよね”って言っただけ。

結局、この分割されてテレビ版放送されたバージョンによって、映画好きの主張は正しかったことが証明されてしまったよね。

そういえば、劇場版で冒頭にあった墓参りのシーンはテレビ版ではカットされてしまったのか…。オープニング映像には入っていたのに、本編ではカットしたのは何故?やたらと、アバン部分は前回の繰り返しが多いんだから、どこかで入れられた気もするけれどね。

オープニングといえば、LiSAによる今回のオープニング曲“明け星”、及びエンディング曲“白銀”は流れない回もあったし、第一話と最終回ではどちらも流れなかった。しかも、最終回では、劇場版の主題歌“炎”が流れてしまったからね…。
そんなこともあってか、“炎”や1期のオープニング“紅蓮華”に比べると、今回の2曲は一般人気はそんなに高くないしね。

今年のレコード大賞の大賞候補作品である優秀賞受賞作品(この談合的な言い方、本当、いかにも日本的で大嫌い!)にリリースされたばかりの“明け星”が入っているのはおかしいだろみたいな声が多いのはそれだけ、楽曲が浸透していないってことだよね。

“明け星”は“白銀”との両A面のCDシングルとしてリリースされたのは11月17日だけれど、配信シングルとしては単体で10月18日にリリースされているんだよね。
去年のレコ大受賞曲である“炎”はCDシングルとしてのリリースが10月14日、配信シングルとしての先行リリースが10月12日だから、実は今回とほとんど発表時期は同じなんだよね。
でも、“炎”が去年のレコ大の大賞候補曲として発表された時は誰も異論を挟まなかった。リリースから候補曲発表までのスパンはほとんど同じなのにね。
つまり、それだけ、“明け星”という楽曲は浸透していないということだし、劇場版に手をちょこっと加えただけのテレビ版「無限列車編」に対する世間の感心も薄かったってことだろうね。

まぁ、劇場版を映画館で何度も繰り返して鑑賞した人も多いし、その劇場版がDVDやBlu-ray化されてからもそんなに経っていない。それどころか、劇場版がテレビ放送されたのはついこの間の9月だから、見たばかりの内容のものをまたテレビで見る必要もないって考える人も多いだろうしね。それに、それでもまた見たいって人はわざわざ2ヵ月かけて分割されたものを見るよりDVDや Blu-rayで一気に見たいだろうしね。

だから、テレビ版「無限列車編」やそのオープニング曲、エンディング曲が盛り上がらないのも当然といえば当然なんだよね。

なので、このリアクションだけをとって、鬼滅はオワコンと言うのは時期尚早だと思う。

テレビシリーズの2期というのは、今回のテレビ版「無限列車編」とこれから始まる「遊郭編」を合わせたもののことなのか、それとも、あくまで「無限列車編」は劇場版であり、今回のテレビ版はその別バージョンに過ぎず、正式な2期は「遊郭編」のみという扱いなのかは知らないが、まぁ、「遊郭編」の放送が終わるまでは鬼滅ブームが続いているのか、オワコンになったのか、それとも、ブームになる前の普通の深夜アニメレベルの人気に戻ったのかは判断できないとは思うかな。

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