SPY×FAMILY(第1クール)
ここ最近、アニオタでない人たちが“こんなに面白いアニメ見たことない!”といった感じで絶賛するアニメが次々と登場している。
「鬼滅の刃」、「呪術廻戦」、「東京リベンジャーズ」、そして、本作「SPY×FAMILY」と毎年のように、そうした“非オタ”枠の人気アニメが登場している。
共通していることといえば、
◎女子人気が高い
◎特に風俗嬢の間での人気が高い
◎これらのアニメが好きな人にはこれら以外のアニメを見る人がほとんどいない
といったところだろうか?
また、「東リベ」以外はジャンプ原作アニメ という共通点もある(正確に言うと、「SPY×FAMILY」はジャンプ+だが)。
そして、最大の共通点と言えるのが、アニメファンや映画ファンが見ると、確かに面白いとは思うが、“こんなに面白いアニメ見たことない!”と若い女性たちが絶賛するほど、面白いとは思わないということだ。
本作に関して述べよう。
それぞれの思惑のために、家族のふりをして生活している父親の正体はスパイ、母親の正体は殺し屋、娘の正体は超能力者。でも、それぞれの正体を知っているのは娘だけで、父と母は相手や娘の正体を知らないという設定は良くできていると思う。
ただ、スパイもの、殺し屋もの、超能力ものとして、特別面白いかというとそうでもない。そもそも、家族を作り、娘を名門校に入学させ、そして、ターゲットの子どもと親交を深めさせたところで、ターゲットに接近するという非常に面倒くさいことをしているわけだから、そう簡単に話が進むわけでもないしね。
まぁ、本作の超能力要素は、「きまぐれオレンジ☆ロード」で主人公やその妹らが持っている超能力がラブコメ的展開を進める際の飛び道具として使われているといったレベルのものだと思う。
本作について、ネット上で洋風「クレしん」なんて言われたりするが、結局、メインとなるジャンルはホームコメディってことなんだろうね。おバカだけれど、ちょっとオマセで、時々、見事な行動力を発揮するしんのすけのポジションを本作では娘のアーニャが担っているってことなのかな?もしかすると、アーニャはしんのすけだけではなく、ひまわりのポジションも兼務しているのかもしれないが。
多くの人が本作を面白いと思う理由って、アーニャだと思うしね。アーニャが可愛い!アーニャが面白い!からだと思うし、特にアニメ版人気はアーニャ役の声優、種﨑敦美の演技が見事にハマっていることによるものだと思うしね。特に父親を“ちち”、母親を“はは”と呼ぶ呼び方は、英語にすると全然面白くはないし、日本語でも文字だとそれほどでもないと思うが、彼女の声で発せられた結果、面白さが増したという面はあると思うしね。そういえば、間違った言葉遣いが多いという点もしんのすけと共通しているな…。
まぁ、女子人気の高さは作られた面もあるとは思うけれどね。オープニング曲がOfficial髭男dismで、エンディング曲が星野源というのは明らかに非オタを狙っているよね。ヒゲダンも星野源もこれまでにアニソンを担当したことはあるので、決して、アニメファンに馴染みがないものではないけれど、ヒゲダンの曲にしろ、星野源の曲にしろ、アニソンマナーで作られたものではないから、アニオタでない者の間でバズることを意識したものであることは間違いないと思う。
個人的には、星野源の曲って、代表曲「恋」のような、いかにも女性が好きそうな邦楽って感じの曲も、最近の洋楽を邦楽化したようなオシャレ路線の曲も好きになれないのだが(例外は朝ドラ主題歌の「アイデア」と「ドラえもん」の主題歌)、今回のED曲「喜劇」はもしかすると、星野源楽曲で一番好きかもと思えるほどだった。耳にすると、思わず体が動いてしまうしね。
そういえば、星野源の結婚発表にショックを受けていた風俗嬢、元気かな?客の前で、芸能人とはいえ、他の男への恋愛感情をあらわにするのはどうかと思ったけれどね。というか、この嬢のサービスは酷かったな…。
ところで、本作は分割2クール放送という形態が取られている。2クール連続で放送するわけでもなければ、1期として1クール放送した後に、翌年以降に2期として2クール目を放送するのでもなく、トータルのエピソード数として2クール分を用意しているが、とりあえず、1クール分を放送し、何クールか後に同じ期の作品の続きとして、残りの1クール分を放送するという形式のものだ。
NHKに移ってからの「進撃の巨人」はこの形態が主流となってしまい、3期も4期もこのやり方になっているけれど、4期なんて、中3クールだからね。そこまであけるなら、4期の2クール目ではなく、5期でいいだろって気もする。
まぁ、キー局で23時台という非オタをターゲットにした時間帯で放送ということで、ある一定以上のクオリティを維持するには、2クール連続放送は無理だし、かといって、1クールで話はまとまらないからということなんだろうね。
フジテレビに移ってからの「鬼滅の刃」が23時台の放送で、劇場版を再構築した「無限列車編」が全7話。新作の「遊郭編」がクールがわりを無視した12月スタートで全11話といずれも、通常の深夜アニメのフォーマットを無視したやり方でクオリティを維持したから、同じ、ジャンプ系原作もので非オタ受けの良い本作も、不規則な放送形態でも採算が取れると判断したのかな?
とはいえ、1クール目最終話は、これまでの世界観をおさらいするようなナレーションが入っていて、いったん終了させるための苦肉の策なんだろうなという気はした。全然、本筋は区切りのいいところまで進んでいるわけではないからね。単にエピソード数で区切りのいいところに来ただけだからね。
ということで、本作が良作か否かは2クール目を見ないと判断できないといった感じかな。
「ロード・オブ・ザ・リング」3部作は1作目、2作目もアカデミー作品賞にノミネートされたけれど、結局、作品賞受賞は完結編である3作目まで待たなくてはならなかったのと同じ。
※画像は公式ホームページより