
都内のシネコン営業再開
小池百合子のようなポピュリズム政治を行う連中というのは、特定の勢力を悪役にして、それ以外の存在を曖昧にすることを常套手段としている。
今回の緊急事態宣言でも演劇やコンサートの公演、スポーツイベントはOKなのに、映画館はNGというアホな決まりを作り、映画業界関係者や映画ファンを呆れさせた。
1月の緊急事態宣言下より感染状況が深刻なわけだから、前回のように飲食店だけを悪役にしたのでは整合性が取れない。だから、映画館や美術館、百貨店も悪役にしようという、その程度の発想でしかないのではないだろうか。
そして、何故、演劇やコンサート、スポーツイベントがOKで、映画館や美術館、百貨店がNGにされたのかといえば、前者が五輪に近いライブ・エンターテインメントだからであり、こうしたものを中止にさせたら、五輪なんて開催できるわけないだろうという機運が高まってしまうからだという思考であるのは間違いないと思う。
でも、誰が考えてもおかしな策だ。演劇やコンサート、スポーツイベントは観客の目の前で生身の“演者”が汗や唾液を飛ばしている。
映画館は舞台挨拶などのイベントがなければ、生身の“演者”は存在しない。
どちらが感染リスクが高いかといえば、誰が考えても前者だ。
だから、映画業界関係者や映画ファン、マスコミは勿論のこと、そうでない人からも批判の声が増した。
もっとも、吉永小百合の映画館への休業要請に対する批判コメントは的はずれもいいところだけれどね。
舞台挨拶で“スクリーンから飛沫は飛ばない”と発言したけれど、あんたがやっている舞台挨拶は飛沫が飛んでいるだろって言いたい。
舞台挨拶を中止したのなら、“仰る通り”と思うけれど、舞台挨拶という昔ながらの伝統的な映画イベントを相変わらずやっていたのでは、国や自治体を批判する資格はないと思うな。こういうのが、日本の芸能人は世間知らずって言われる所なんだよね。
まぁ、吉永発言の是非はともかく、小池に対する批判の声は各方面から増していったわけだから、彼女が緊急事態宣言の再延長(6月1日以降)に合わせて、映画館に対する休業要請を解除したことに対してはなんの驚きもない。大衆の声をコントロールすることが大好きなポピュリストだから、自分に対する批判が高まれば、コロッと方針を変えるポリシーのない奴だしね。
でも、この小池のアホな策のせいで、映画業界や映画ファンは多大な迷惑を被るハメになってしまったんだよね。
何故なら、6月1日以降、都内の映画館では、
①元々、6月1日以降に公開予定だった作品
②今回の緊急事態宣言により、6月1日以降の公開に変更された作品
③東京や大阪など休業要請が出されている地域以外では予定通り、緊急事態宣言期間中に公開開始となった作品
これらが一斉に、上映開始となるのだから、空前の公開ラッシュとなってしまう。
それは、各作品の上映回数が少なくなることを意味する。本来なら①に割り当てられるはずだったスクリーンが、②や③にも振り分けられることになるのだから、それは当然だ。
その結果、同じジャンルの作品が同じ週に公開されることになり、スクリーンと観客を奪い合う状況になっている。
「るろうに剣心」や「賭ケグルイ」といったランキング上位入りが期待される一般向け作品は上映回数も確保されているからいいけれど、それ以外の作品は本当、スクリーンと観客の奪い合い状態だよね。
アニメ映画を例にあげるが、今週は4本のアニメ映画の公開ラッシュとなるが(地方先行公開作品は除く)。そのうちの3本、「レヴュースタァライト」、「シドニアの騎士」、「映画大好きポッポさん」はターゲット層もかなり被っている作品だ。
他ジャンルでも似たような状況だから、映画ファンは鑑賞スケジュールが立てにくくなっている。ハシゴしようと思っても、1日に2〜3回しか上映しない作品ばかりだと、非常に効率の悪い鑑賞スケジュールになってしまう。
しかも、座席販売は半分だから、あっという間に売り切れてしまう。確実に映画ファンから鑑賞の機会を奪っているんだよね。作品にとって、これほど不幸なことはない。
本来なら1人でも多くの映画ファンに見てもらえる万全のタイミングで公開すべきなのに、何故、そうしないのかというと、独立系洋画配給会社も含めた日本の映画会社には金銭的余裕がないということがあげられるのではないだろうか。
唯一、余裕を持って映画の公開を延期しているのが圧倒的なシェアを持つ東宝だけというのがその証だ。東宝は今回の緊急事態宣言で、「クレしん」、「アーヤと魔女」、「ヒノマルソウル」、「ゴジラvsコング」、「100日ワニ」と5作品を公開延期にしたが、このうち、6月中の公開に変更した作品は「ヒノマルソウル」だけだ。
この作品は元々、去年の公開予定だったから、“賞味期限”的にもそろそろ限界ということで、公開を焦っているのだろうとは思う。
まぁ、7月公開になった「100日ワニ」というのも“賞味期限”問題があるから早めの公開日に設定したってのはあるとは思うけれどね。
何しろ、去年春に原作漫画の最終回の発表と同時に、グッズ発売やいきものがかりの楽曲提供、映画化が相次いで発表され、ネット発のブームだと思っていたものが、単なるステマだと分かった瞬間、一気にオワコン化してしまったしね。
まぁ、ワニに関わったせいで、いきものがかりの“寿命”も一気に縮まったよね。元々、メンバーのレイプ疑惑があって、グループの人気が下降気味だったのに、このステマに加担したことでグループに対する信頼度は一気に減速したって感じかな。だから、今回、その疑惑メンバーが脱退することになったのも当然という気がする。
あと、「ゴジラvsコング」は海外ではとっくの昔に公開されている作品だし、連動させようとしていたアニメ「ゴジラSP」の放送も終了してしまうから、こちらも“賞味期限”切れを気にして7月公開にしたって感じなのかな?
話は元に戻すが、東宝以外の映画会社は当初の見込みよりも少ない収入になったとしても、とりあえず得られる収入は今のうちに得ておこうという方針なのだと思う。
また、最近の欧米の新型コロナウイルス感染状況は、ワクチン接種が進んだことによって、劇的に改善していて、これまで公開延期が相次いでいたハリウッド(メジャー・スタジオ)作品の上映もコンスタントに再開されている。
5月下旬に全米公開された「クワイエット・プレイス」の続編は、コロナ禍になって初めて、公開初週の週末の全米興行収入が5000万ドルに迫る大ヒットになった。
ワクチンを接種していれば、マスクなしでの入場を認めている地域もあることから、これから全米の興行成績はどんどん良くなっていくだろうし、公開延期されていた作品も続々と上映されるようになっていくと思われる。
つまり、こうしたハリウッド作品は日本の映画館でも近いうちに上映されることになる。
相変わらず、日本公開は全米や日本以外の世界各地よりは遅いが、それでも、6月後半あたりからはハリウッド作品も劇場でかかりはじめる。
いくら、邦高洋低と呼ばれる興行展開になって久しいとはいえ、長らく、数えるほどしかなかったハリウッド大作が映画館に帰ってくるとなれば、中高年を中心とした映画ファンが再び劇場に足を運ぶようになるのは間違いない。
だから、邦画各社や洋画独立系はハリウッド映画が本格的に劇場に戻ってくる前の6月中に劇場公開しておきたいというのもあるのだろう。
でも、全然、映画ファンのことを考えていないよね。同じ週に見たいと思う作品が10本も公開されたって、追いかけらないよ!
しかも、公開ラッシュのせいで上映回数が少ないし、座席販売が半分だから、すぐにチケットは売り切れてしまうし。
というか、いまだに、3密が揃わなければ感染しないみたいな古い情報を伝えるCMや、全然役に立たないことが明らかになったCOCOAのダウンロードを推奨するCMを流している映画館の感染症対策なんて、全然信用できないけれどね。
まぁ、映画館での咳エチケットとか、フード類の食べ方を指南するCMに出ている姉ちゃんは可愛いとは思うけれどね。