My Favorite Songs 2022
邦楽・洋楽問わず、年々、今年を代表する名曲というものが選びにくくなっている。
その要因の一つとして、フィジカルで売れる作品とストリーミングで聞かれる作品に乖離がありすぎるということがあげられると思う。
邦楽でいえば、フィジカルで売れるジャニーズや女性アイドル、声優アーティストの楽曲はストリーミングのチャート上位には入って来ない。というか、ジャニーズなんてほとんどストリーミングをやっていない。
洋楽でいえば、ロック系の楽曲はストリーミングに弱い。カントリーはストリーミング時代に対応し、総合チャートのトップ40内に何曲もの楽曲がチャートインしているが、ロックはコアなロックファンからはどこがロックなんだという曲がポツリと顔を見せている程度だ。
また、ストリーミングの再生回数が多い楽曲はレーベル側が正規のシングル曲としてリリースされていない楽曲でなくてもチャート上位に入ることができる。これも、ヒット曲というものの存在を忘れさせてくれる要因となっている。
SPACE SHOWER TVでは様々なランキング番組を放送しているが、そのほとんどが提供されたデータをそのまま発表するものではなく、スペシャで放送することができるMV素材があるもののみをランク付けしているものとなっている。
MVが作成されていない楽曲とかMVが作成されているがレーベル側がスペシャに素材を提供していない楽曲というのは除外されている。
洋楽では海外の放送局では普通に流されているが日本のテレビ局向けには素材が提供されていないとか、日本ではYouTubeですら見られないといった楽曲も除外されている。
だから、10月から始まった米国のシングルチャート(Billboard HOT 100)をもとにしたランキング番組「Billboard COUNTDOWN」では、本来のチャートではトップ40内に入っていないような楽曲がトップ20内に入っていたりもする。
つまり、フィジカルを重視しても、ストリーミングを重視しても、ヒットチャートが成立していないということだ。
そりゃ、その年を代表するヒット曲なんてそう簡単に出るわけはないよねって感じだ。
そんなわけで、この手の年間ベスト作品の選出には苦労するようになっていて、年々、その苦労度は上昇している。
とりあえず、今年もフィジカルというかCDで購入済みの楽曲のみを対象に選ぶことにした。
インボイス制度が予定通り来年10月に始まってしまえば、自由に使える金が大幅に減るのは間違いない。
また、タワーレコード秋葉原店が年明け早々の1月3日で閉店となると、仕事帰りで気軽に寄り道できる場所で尚且つ、そこそこの品揃えのあるCDショップというのがなくなってしまうので、オンラインショッピングを利用するか、実店舗ではたまに渋谷店や新宿店に行った時に買い物するだけという風になるだろうから、購入アイテム数が減るのは間違いない。
とりあえず、今年はフィジカル重視の枠組みで選んでみたが、果たして、来年もこのレギュレーションで選定できるのだろうか?
そんなわけで今年のマイ・フェイバリット・ソングスは以下の通りとなった。
《邦楽》
①ごめんね/BiSH
BiSHの閉店セール商法は失敗したと個人的には思っている。それは、2023年をもって解散という曖昧な言い方で解散を発表したからだ。
嵐は活動休止の発表をしたのが2019年1月27日で実際に活動休止したのが1年11ヵ月後(ほぼ2年後)の2020年12月31日だったが、この日程は活動休止を発表した時点で伝えられていたので、そんなに、“まだやってんのかよ”という感情を持たれることはなかった。
でも、BiSHは2021年12月24日に解散すると発表した時点では、最終活動日は明示されなかった。というか、それから1年経ったのに、まだ、解散する日がいつなのか発表されていない。
こうなると、いつも閉店セールと言っている店とか、いつも同じ商品を割引価格と称して販売している店と変わらないんだよね。要は詐欺と言われても仕方ないということだ。
そもそも、2023年をもってという言い方は、2023年になった瞬間に解散しても、2023年いっぱい活動しても通用する言い方だからね。最初から詐欺的商法をする気がマンマンだというのがバレバレなんだよね。
だから、解散発表に合わせて実施している12ヵ月連続でCDシングルをリリースするという企画も盛り上がっていない。
11月リリースの“脱・既成概念”なんて、オリコンのシングルチャートのトップ10入りを逃してしまった。
これまで、BiSHのCDシングルでオリコンのトップ10入りを果たせなかったのはゲリラリリースの“NON TiE-UP”だけだったということを考えると、BiSHの解散商法が既にあきられていると言わざるを得ないと思う。
でも、この12ヵ月連続でリリースされた楽曲の中にはきちんとプロモーションされていれば、“プロミスザスター”とか、アルバムリード曲だけれど“オーケストラ”のように新規ファンを獲得できるくらいのポテンシャルを持っていた曲もあったんだよね。
この“ごめんね”は確実に、“オーケストラ”や“プロミスザスター”級と言っていいレベルの名曲だった。それだけに、十把一絡げ状態でリリースされてしまったのが残念で仕方ない。
② Summer Lemon/SUPER☆GiRLS
AKB48はせっかく、久々に夏っぽいイメージの新曲“久しぶりのリップグロス”を発表したのに、何故かCDシングルとしてのリリースは季節はずれの10月だった。
虹のコンキスタドールは今年も夏曲“キミは夏のレインボー!”を発表したものの、配信シングルとしてのリリースだった。
そう考えると、ほぼ毎年のようにCDシングルとして夏曲をリリースしているスパガはアイドル界きっての夏曲クイーンズと言っていいのかなと思えてくる。
スパガの夏曲は良曲揃いだけれど、この曲はその中でもめちゃくちゃ神曲!
バラバラに聞くと、Aメロとサビはまるで別の曲に聞こえるのに通して聞くと違和感がないのも見事!
今夏のアイドルフェスでこの曲を聞いた時はやっぱり気分が上がったね!
③ササクレ/夏川椎菜
ラジオのアニソン系ランキング番組「こむちゃっとカウントダウン」で、今年、TrySailは“はなれない距離”で1位を獲得している。
メンバーの麻倉ももは去年、“ピンキーフック”で、雨宮天は今年、“Love-Evidence”で首位に立っている。しかし、夏川椎菜だけはソロでトップに立っていない。明らかなメンバー間の人気格差があるようだ…。
まぁ、夏川椎菜のソロ曲ってサブカル寄りだから、いかにも声優アイドルな路線の麻倉ももや、硬軟とり混ぜつつも基本は王道アニソンの雨宮天に比べるとオタクに支持されにくいのかも知れないけれどね。最近、彼女に2.5次元ではない舞台仕事が目立つようになってきたのも、ますます、サブカル路線という感じもするしね。
でも、この“ササクレ”という曲はマジで良い曲だと思う。声優アーティストの曲をアニメ・声優に興味ない人に聞いてもらうのは至難の業ではあるけれど、これは、是非とも聞いて欲しいと言いたくなる名曲だ。
④ 花は誰のもの?/STU48
レコード大賞の優秀作品賞(=大賞ノミネート)にこの曲が選ばれないのも、紅白歌合戦出場歌手に彼女たちが選ばれないのも理解できない。
邦楽の最新曲から社会性が失われたと言われるようになって久しいけれど、この曲は数少ない、今の時代を歌った曲なのにね。
勿論、この曲の歌詞の内容全てに賛同できるわけではない。
“もしこの世界から 国境が消えたら
人はみんな きっと しあわせなのに…
どうして何のため 線を引くのだろう
そう たった一つの地球の上”
というフレーズは一見、ウクライナに侵攻したロシアを批判しているようにも思える。
でも、国境がないなら、ロシアのやったことは何の問題もないってことになってしまうのでは?
その辺のツメが秋元康は甘いよねと思った。
とはいえ、秋元康の左翼路線の曲って、良い曲が多いんだよね。老害ネトウヨが多いドルオタには嫌われているけれどね。
秋元康本人は権力に媚びりまくりの人間だから、ビジネス面では右のはずなんだけれど、何故か、権力批判の曲の歌詞を書かせると光るものがあるんだよね。
欅坂46“サイレントマジョリティー”を筆頭に、AKB48“僕たちは戦わない”、HKT48(のレパートリーになってしまったAKBの劇場公演曲)“ロックだよ、人生は…”など、本当、名曲揃い!
この曲も多少のツッコミどころはあるけれど、今年リリースされたアイドル曲というか、邦楽曲で最も2022年の世相をあらわしていた曲だと思う。
“LOVE & PEACE”をテーマにしておきながら、STUを出場させない紅白って何?“その年度を反映したと認められた”曲を評価すると選考基準にうたっているのに、この曲を選ばないレコ大って何?
そう思っている人はドルオタ以外にも多いのでは?
⑤ KICK BACK/米津玄師
どちらかと言えば自分はアンチ米津だ。
というか、米津信者が嫌いと言った方がいいかな。
別に米津玄師の曲は嫌いではないけれど、米津みたいなアーティストはいないみたいに絶賛する信者のせいで米津自体も嫌いになっている面があるといった感じかな。
米津楽曲なんて、良くも悪くも洋楽・邦楽問わず、色んな音楽に影響を受けまくりのものばかりだしね。
“海の幽霊”なんてレディオヘッドあたりの洋楽アートロックっぽいしね。
というか、この曲だって、モーニング娘。の“そうだ! We're ALIVE”をサンプリングしている。
だから、そういう自分に影響を与えた音楽を再構築する能力というのは見事だと思う。
なのに、こんなアーティストは他にいないと絶賛する信者は他のアーティストをロクに聞いていないと白状しているようなものだと思う。
洋楽では、こういう再構築のうまいアーティストはいくらでもいるしね。
それにしても、モー娘。をサンプリングしている部分、気付くと頭の中で流れているんだよね。米津曲で一番好きな曲になったかも知れないな。
この曲がオープニング曲となっているアニメ「チェンソーマン」に関しては、若干、否定よりの評価しかできないけれど、この曲に関しては絶賛寄りの評価をしたいと思う。
《洋楽》
①アンチ・ヒーロー/テイラー・スウィフト
この曲はダントツで今年を代表する良曲だと思う。日本では、コロナ禍になってからのテイラー人気は確実に落ちているけれど、2020年発表のフォーク調2部作『フォークロア』と『エヴァーモア』、2021年発表の再録2作品『フィアレス』と『レッド』、そして、この曲を収録した今年の最新アルバム『ミッドナイツ』と玄人筋も絶賛する作品を連発している。
しかも、海外ではアーティスト性だけでなく人気も盛り返している。2019年のアルバム『ラヴァー』の頃は米国での人気も下降態勢に入った感じだったけれど、今は完全に盛り返していて、『ミッドナイツ』収録曲がBillboard Hot 100のトップ10を占拠してしまった。ツアーのチケット争奪戦でチケット会社の回線がパンクしてしまったこともテイラー人気が新たなピークに達している証拠だと思う。
しかも、MVの監督=映像作家としても評価され、長編映画監督デビューの話もある。アーティストとしての勢いはノリにのっている状態だからね。
そんな状況で出した新曲はそりゃ、良曲になるよねって感じかな。
80年代のニューウェーブあたりに通じるようなノスタルジックな雰囲気と、最近のチャートで上位に入りそうなストリーミング向けの楽曲、その両方の要素が合わさっているから、中年にも若者にも刺さるしね。
そして今気付いたが、3年連続でテイラーを5曲の中に入れている…。
②アズ・イット・ワズ/ハリー・スタイルズ
てっきり、全米チャート(Billboard Hot 100)の年間1位はこの曲だと思っていたが、まさか首位は年間チャートランクイン2年目のグラス・アニマルズ“ヒート・ウェイヴス”だとはね…。
初登場首位を記録して以来、週間チャートで通算15週間首位を獲得。しかも15週目のナンバー1となったのはチャートイン25週目と実質、半年間、首位獲得状態だったんだから、年間1位になってもおかしくないのにね…。
まぁ、オリコンのように対象期間の売上枚数を単純に並べただけの集計の仕方でない年間チャートではこういう現象はよく起こることだけれどね。
それにしても、2020年の年間1位のザ・ウィークエンド“ブラインディング・ライツ”もそうだけれど、a-ha“テイク・オン・ミー”の影響下にある80年代シンセ・ポップみたいな楽曲が最近多いよね。だから、これも、テイラー“アンチ・ヒーロー”同様、中年にも若者にも刺さる曲ってことかな。
③アイム・イン・ラヴ・ウィズ・ユー/The 1975
Billboard Hot 100にはチャートインしていないが、これも80年代っぽい曲。元々、彼等には80年代っぽい曲が多いが、この曲も80年代のヒット曲と並べてラジオでかかっていたら、あまり洋楽に詳しくない人は80年代の楽曲だと思ってしまうんじゃないかなと思う。
④ゾーズ・デイズ/ニッケルバック
こちらは、80年代カルチャーに影響を受けた40〜50代にはたまらない郷愁ソング。この曲の“every movie made for us ”というフレーズはリアルタイムで80年代エンタメに接してきた人なら共感せずにはいられないと思う。80年代というのは自分にとって、小2の3学期から高3の2学期までの時期だけれど、この期間にリアルタイムで接した映画や音楽、アニメ、コミックなどは国内外問わず、うちら世代に向けて作られたように思えたしね。
今の10〜20代の人たちって、現在のヒットチャート上位のアーティストの新曲を聞いても、自分たちのために作られた曲とは思っていない気もする。
でも、80年代の音楽と最近の音楽に共通点はあるんだよね。80年代のヒット曲って知名度の割にはレコードやCDなどの売上枚数はそんなに行っていない作品も多い。実際、米国でも日本でもメガヒットは90年代の作品に多い。
しかし、80年代の音楽はラジオやテレビでガンガンかかっていて、レコードやCDを買っていない人でも耳馴染みになっていた。
また、日本ではFM放送のエアチェックやレンタルレコード・CDで商品に近いレベルの音質で楽しんでいた人も多かった。
それって、今のストリーミングでの音楽体験と結構似ているんだよね。だから、音楽の聞き方という点では80年代世代と今の若者って、結構、共通点があると言っていいのではないかと思う。
テイラーやハリー、The 1975のようなリアルタイムで80年代の映画や音楽に触れていないアーティストも、ニッケルバックのようにリアルタイムで接してきたアーティストも80年代的な作品をリリースするというのはそういう背景があるのかな?
それにしても、ニッケルバックの最新アルバム『ゲット・ローリン』は久々にニッケルバック節満載のアルバムって感じだったな。ここ数作は、“何か違う”って感じだったしね。まぁ、誰が聞いてもニッケルバックと分かる新曲というのは新曲である必要性があるのかという気もしないでもないけれどね。
⑤FEALESS/LE SSERAFIM
個人的にはK-POPを洋楽と呼ぶことに違和感があるし、邦楽以外の非英語圏の曲を大雑把にワールドミュージックと呼んだりすることもあるけれど、LE SSERAFIMとかBLACKPINKあたりのサウンドは完全に洋楽だからね。
ちなみに、この曲を含む1stミニアルバム『FEALESS』は総合の全米アルバムチャートにランクインできなかったが、続く2ndミニ『ANTIFRAGILE』は最高位14位を記録した。
LE SSERAFIMのメンバーには元HKT48のさくらたんこと宮脇咲良がいるが、これにより、さくらたんは初めて全米アルバムチャートにランクインしたAKBグループ出身者ということになったのかな。
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