【オペラ舞台で盆踊り】大きな壁も?可能性とは?!
こんにちは、高尾可奈子です!
今日は、、
舞台演目の中で盆踊りを踊ることについて、掘り下げて考えていこうと思います!!
恐らく普段の皆さんは、どこかの地域やイベントにお出かけして、そこで盆踊りを踊ることがほとんどの時間を占めているかと思います。
やはり、舞台で踊る盆踊りというのは数が限られているようです。
挙げるとすると、地域の芸能祭りの場に民俗芸能枠として舞踊が踊られていたり、阿波踊りのような巨大な舞踊人口、観客人口を抱える踊りでは、舞台で魅せるのも一つのスタイルとなっていたりします。
今回、私はある地域に継承される長唄踊り、過去にオペラ公演の中で披露した、その演目の再現をするという新たな取り組みをすることになりました!
その際、自分の立場や周りの状況、組織の構造や、資料集めなど、多層の時間的空間的な隔たりがあり、位相ごとに民俗芸能の舞踊のもつ限界点や逆の未来について思いを寄せることに。
これまで知らなかった民謡と舞踊を知るところから、動画をかき集め一人一人の動作分析で振り付けの終着点を定め、再演の可能性としてプラスでできることまで、まとめていきました。
【位相1】動画から踊りの場面を総合的に読み解く!
まず、オペラの中でその舞踊シーンの音楽、振り付け、フォーメーションなどを可能な限り、集める必要があります。
ゼロ状態から当時の現地オペラ公演の動画などを、ある限り収集していきました。
そして集まったのが、、
①公演当時の舞台での場当たり記録映像
②公演当時の舞台でのシーン通し映像(上手前側から撮影)
③公演当時の舞台でのシーン通し映像(下手前側から撮影)
④東京キャストの踊りシーン稽古映像
この4種類の動画でした!
踊り映像で身体を大きく観察できるものから、舞台全体の場面のキャストの立ち位置や移動、踊りのタイミングや囃子音楽を俯瞰的に観察できるものまで、バランスよく記録として残っており、非常に助けられました。
(通常、オペラや舞台公演では、本番の映像はほぼ確実に残しますが、何十回と重ねられる稽古までは記録を残せないことも多いのです。)
何十人ものキャストが出演する場面を、点として動きを読み取り、そこから点と点を繋げて舞踊の流れを掴んでいく。
キャストのセリフや動きの芝居の途中にお囃子が始まり、次第に踊りの輪ができて振付が始まる。
最後はお祭りの終わりの賑わいのように、人々が散り散りになる。
こういったような流れを読み取り、また振り付けに入るタイミングも確実に拍数として記録しました。
何を踊るのかも大切ではありますが、舞台に限らず踊りに広く言える本質的なことは、「なぜ」踊るのかということではないでしょうか?
なぜ、この場面にこの長唄、この振りを踊るのか、、
オペラ全体の主題を見据えた上で、舞踊の任された役割とは何なのか、、そこまで広げて考えていくことで、今回のオペラ公演を前回を模倣しつつ超えていく可能性が生まれていくように思いました!
【位相2】現地の民謡踊りの記録を探す!
まずは、オペラの中での長唄民謡踊りについて大まかに全体像を掴んだところで、、
次は、
実際に現地で脈々と根付いている、民俗芸能としての長唄民謡踊りの映像記録が必要となりました!
日本各地の盆踊りや民謡踊りは、全国的にメジャーになったものはYouTubeなどで探すと多数出てくるのですが、地域性が強いものや継承者不足の地域の踊りは、探しても見つけられないことも、、
しかし、このオペラで踊る民謡踊りは、奇跡的にひとつだけ踊りの動画を発見することができたのです!
それは、その地域の芸能祭りで、市の大ホールのようなところで、囃子と流派の踊り手が囃子と舞踊を披露するステージ映像でした。
この映像は舞台全体を収める遠くからのアングルのみだったため、なかなかお手本の方の手の細かな動き、足の進みを読み取るのが難しかったです。
また、舞台踊りということで、10名ほどの踊り手が途中でフォーメーションを様々に変えて、回転動作を挟み込んでいることも、読解を難しくしました。
そうして、この一本の公式に近い踊り動画から、今回の踊りの正調(正しいとされる振付・所作)を導き出すことができました!
【位相3】現地の踊りと東京の踊り、物理的隔たりをひとつに
前回の公演で、また今回の公演でも、
東京発のオペラ団体が現地の合唱の方、制作の方と一緒に、現地でオペラ公演を行うという大掛かりな方法で舞台を完成させるスタイルです。
そのため、お手本不在で練習する東京組の踊り(上の④動画)とそれ以外の①〜③の動画を比べてみると、振りの質感から具体的な動作の細かな角度や左右や動線など違いがありました!
盆踊りや民謡踊りはその構造自体が、お手本を直接見て真似をすることで伝えられる口承の性質のものですから、物理的隔たりのある2つの場所での踊りが若干違ってくることは自然なことです。
(クラシック唱法や演劇的台詞が録音のみでほぼ伝達可能なことに比較すると、舞踊自体の特質でもあります。)
携わる人が変われば、同じ盆踊り唄でも、隣町でも違った振り付けの踊りが踊られているという盆踊りの状況からも証明されていますね。
そして、①〜③の映像は、本番の舞台を使った場当たり、通しの映像であること、また時間軸でみても本番直前のものかと思われたので、こちらを軸に今回の振り付けを読み取っていきました。
【位相4】舞台での振り付けと現地の会の踊りの差
こうして、舞台上での決まった振り付けについて8割ほど確かになったところで、また別の疑問が生まれてきました!
それは、YouTubeに上がっていた民謡・民踊団体の踊りの振り付けと、舞台で踊られたであろう振り付けが部分的に違っているというところです。
YouTubeの方は、日本舞踊の流派の師匠とお弟子さんたちのクレジット表記があり、お囃子も本格的なもので、こちらの方がより元の長唄踊りのの源流に近いように思ったのです。
具体的な動作の違いを挙げてみると、すくいあげる動作。
舞台の方は初めからグーの手ですくいあげ巻き取る動作ですが、YouTubeの方は初めは指を揃えてすくいあげる動作といった違いがありました。
果たしてこの違いは、意図をもって生まれたのか、それとも偶然変わっていったのか。
YouTubeの方は普段から舞踊に取り組む訓練された方々ですが、オペラの舞台の出演者たちは歌の訓練はしていても、踊りの訓練をしている方は少数ですから、より分かりやすい動作に変化していったのか、、など想像が膨らんでいきました!
今回の長唄民謡踊りの振り起こしの目標は、あくまで前回の現地公演の再現とブラッシュアップですし、正しい振り付けを保存・継承という理想はその次の目標のように思われたため、一旦前回の舞台の出演者たちの振り付けを今回の公式なものとしました!
【位相5】演者の微妙に異なる動きから公式を導き出す
オペラ公演で踊られる民謡踊りの特殊性が見えてきたところで、同じ時間、場所で踊る映像に記録される出演者個人個人にも、振り付けの動きの微妙な違いが見られることが気になりました。
普段、様々な盆踊り会場で踊らせてもらうときにもよく感じるところなのですが、踊り慣れた方でも音の捉え方や間の違いや訓練方法の違いなどにより、踊り方のニュアンスが異なることがよくあるようです。
頭や目線の動かし方、手足の角度、動線などが微妙に違っていて、それこそ日本の舞踊の難しさや面白さでもありますよね。
何年も何十年も踊り続けている人でもそうなのですから、舞踊未経験の方が集まれば一層身体動作の差は大きくなります。
舞台稽古の映像には、着物姿の踊りの方も何名かいたため、その平均的な動きを公式にしていきました!
【位相6】振り帳と映像の振りの違い
一連の流れで、今回の振りの形が定まってきたところに、どうやら振り帳があるらしいということが分かりました!
そこで、すぐに振り帳から正調(元々の振り付け)を確認することに、、
やはり推測通り、YouTube公開されていたとある流派の舞踊とほぼ同じと思われる振り内容でした!
しかし、あくまでも今回は前回のオペラ舞台の再現がメインですから、細かな違いがあっても今のところは、舞台映像を優先させて考えていくことにしました。
【位相7】踊る場面の時代設定、キャラクター設定として見る
民謡踊りが披露されるとき、今の現代に生きる本人がその身をもってその芸を披露する・見せるというのが、基本的な芸の形かと思います。
しかし、今回のオペラの劇中で踊られる民謡踊りというのは、そのシチュエーション自体・設定自体が特殊な状況ということを考慮に入れる必要があります!
具体的には、、
今回のシーンでは、場所は現地の設定ですが、
時代は大きく遡り100年前の時代設定です。
また、本人役というのは1人もおらず、それぞれがその当時に生きた具体的キャラクターという設定です。
本人と近い年齢の人物設定をもつ出演者もいれば、大人なのに何十歳も若い子供の役という人まで、、
これは、歌舞伎俳優と役の本質的構造に、もしかすると似ている部分かも知れません。
歌舞伎役者は、
①本人として
戸籍をもつ本名としての人格
②芸名として
屋号や芸名は、世襲され受け継がれている
③役名として
演目の中の1人またはひとつの人格・物体として
1人の身に、この3つを同時に持ちながら舞台に立つという特殊な状況下に置かれます。
これが、日本独自の文化的特質でもあり、歌舞伎の奥深い面白さに繋がっているのです。
この複雑な構造は、オペラやミュージカル、芝居の世界においても、ここまで多層ではありませんが、本名と役柄といった二重構造という形で見られます。
そして、構造が重なるだけ、より考えながら動き訓練していく必要があるように思います。
ただ振り付けを踊るだけがゴールなのではなく、
このオペラのこのシーンでは、当時の人々が何を思っているから感じているから動く=踊るのか?
これを、読み取るという重要な手順が必要でした!
皆さんは、100年前の日本人の身体感覚や実際の身体動作がどのようなものだったのか、考えたことはありますでしょうか?
医療も発展途上で、迷信など今よりもっと信じられていて、デジタル世界は存在せず、科学技術はまだまだ生まれていないものも沢山あった時代。
生活はほぼ機械化された今では想像のつかないような方法でされていたことでしょうし、同時に人間の動きの基本も生活スタイルが変われば大きく変わります。
正座生活で和装で、、というだけでも手足の動かし方が大分変わってくることは、経験からでも分かりやすいかもしれません。
そうした、身体自体の差を意識にとめて、長唄民謡踊りがどう踊られるのかを考えてみる、、
果てしなく探究できそうな、ポイントだと思います!
いかがでしたでしょうか?
今回は実体験に基づいて、、
舞台演目の中で盆踊りを踊ることについて、考えていきました!
時間軸、空間軸共に多層な位相が重なり合う、オペラの舞台構造の中で、民謡踊り・盆踊りがどんな位置を持っているのか。
舞台で役柄として、時代を超えたものとして踊ること、また踊りを完成させるまでの困難さにも着目しました。
記録された断片的な動画や、探して見つけた現地の映像、振り帳から公式の踊り方を見つけるための試行錯誤、、
備忘録として、時系列にそって書いていきましたが、この複数の位相の中から、何か発見をしていただける部分があれば幸いです!
これからも、これまで記録のないような視点から盆踊りを発信していきますので、お楽しみに、、!
以上高尾可奈子でした!