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【 白狼 】ハクロウ|点描画


約F3号(273*220)|画材:マルマン画用紙・ボールペン
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【 白狼 】ハクロウ

明治時代。洋と和の文化が混沌に。
次第に馴染む姿には、消えゆく生者の恨めしさ。

明治時代。洋風の文化が取り入れられ、和の文化と混じるようになった。
明治政府が進めた欧州化計画の波に呑み込まれ、日本文化そのものが消えていく。
生物の中では『ニホンオオカミ』が人々の意識に逆らえず姿を消した。恨めしそうな背中と共に。

■|白狼を描いた理由

”たまたま到来した個人的なブーム”が歴史書籍である。その中でも『明治時代』が気になった。
気が遠くなるような歳月と共に”日本独自の文化”が栄えてきた。江戸末期に鎖国が終わり、明治初期には怒濤の如く西洋の文化が入ってくる。その様子は、昨今の〇〇ブームと同じ様に感じる。
私が生きる時代にはもう、栄華を極めた日本文化そのものはない。なぜそう思うのか、建物だけではなく、当時生きていたとされる”ニホンカワウソ”を始めとした日本古来の生き物なども今の時代に残っていないからだ。その中でも”狼”は私の気を大きく引いた。
狼は他の呼び方で『山犬』と呼ぶらしい。が、気になった理由は山犬ではない。薄らとした記憶の中に、狼の呼び名の元は『大神』と聞いた事がある。山を歩く旅人を見つけると、先導するように数歩先を行き、たまに立ち止まっては旅人の方を振り返り、開けた場所へ出ると姿を消したそう。狼がいる間は他の獣が姿を現さず、旅人は無事に旅を続ける事ができた。その様子から『神様の使い』とされ、畏敬の念を込めて『大神』と呼んだらしい。

しかし、そんな狼も時代の流れで消えてしまった。
そのほとんどが『家畜を襲う獣』として駆除されたそうだ。西洋では昔から狼は悪者として描かれる。童話の中でも大抵は悪者として登場する。なぜなら狼は家畜を襲うからである。西洋から流れてきた文化は建物だけではなく、生き物の生活をも変えてしまった。

作品の『白狼』は、明治期に起きた文化の葛藤と生前の記憶。を表現したもの(狼が白いのは神の使いに白色が多いから)。日本のみに限らず、どの国においても文化は混ざり、やがて本来の姿は消えていくのであろう。
今を生きる人間からすれば「なんてことをしてくれたのだ」と思うこともあるが、当時の人間にとっては必要不可欠なものであって、変えるべきものであったのかも知れない。確かに、徐々に生活の基準が見直されてきたからこそ、恩恵を得られているものもある。
つまるところ、文化は進化する生き物。生き物であれば変化を続ける。だからこそ、そのままそっくりで生きながらえる事はほぼ不可能に近い。

さて、冒頭に”たまたま到来した個人的なブーム”と記載したが、”ブーム”とは好奇心であると考える。
都度の好奇心が便利なものとなり、不便なものとなり。恩恵を得るが、同時に犠牲も生み出した。
総括すれば、「巡る時代に生きる人間達の好奇心は文化の進化に必要である。が同時に、己の世代を当たり前に引っ提げて、気が付かないうちに自由な思想を排除し、世代間の剥離を拡大させていく事も可能である」と。果たして現在はどうであろうか。

「昔は良かった」と口にするものもいれば、「今がいい」と言うものもいる。が、結局のところ正しさは多数決で決まる。
双方、一長一短。良いも悪いも同じほどある。が、恨めしそうに消え行く少数派の犠牲を忘れてはいけない。そう思いながら点を打ち終えた。


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