都知事選から考える技術の行く末 ~政治の透明性を高める挑戦~

私はブロックチェーンとIoTを組み合わせることに興味があるのですが、論文や事例を見ているとブロックチェーンという技術を普及させるために問題点があるなと感じています。それは
「ブロックチェーンを使うことで、ユーザーが直接感じることのできる利益が少ない」
ということです。なぜ自分がこの分野に興味があるのかというと、単純に「動くものが好きなこと」と「ブロックチェーンを使うことで不正のない世の中を作ることができる」と考えているからです。しかし、「不正のない世の中を作ることができる」のと「ユーザーが求める利益を感じることのできるもの」には隔たりがあると感じるのです。

例えば、IoTとブロックチェーンを組み合わせてIoTから収集されたデータが改竄されていないことを証明できますよというサービスがあったとします。それを受けてユーザーは「それはめっちゃ便利だ!いますぐ使いたい!」と感じるでしょうか?
正直、感じないと思います。データが改竄されるという現実をあまり実感できないのと、そもそもIoTのデータが何に使われるのかも実感できないからです。

私はこの隔たりを埋めることができて初めてブロックチェーンという技術の素晴らしさが人々に伝わり、普及していくのではないかと思っています。
私は、その可能性があるものの一つに「ブロックチェーンによる政治のカネの流れの透明化」があると思っています。

~~以下からは、政治思想の話ではないですし、私が特定の個人を支持しているという話ではないのでご了承ください。~~

安野たかひろさんのレポジトリ

話は少し飛びますが最近、東京都では都知事選がありました。その中で候補者の一人に安野たかひろさんというAIエンジニア、SF作家の方がいました。私は海外に住んでいるので選挙権がないのですが、安野さんが行っていたテクノロジーによる民主主義のアップデートという考え方がとても面白いと感じていました。

取り組みの一つとして、Githubでマニフェストを公開し、案がある人がissue(提案)を立ててそれについて議論をしていくということが行われていました。ちなみにGithubというのはエンジニアがチーム開発で使うソフトウェアのことで、チームで変更を共有したり課題を提案したりできます。[1]

私も技術者の端くれとして興味があったのでfork(Githubで公開されているレポジトリを自分のローカル環境で複製すること)して中身を見てみましが、GPTを使って提案がoffensiveかどうか、重複していないかをチェックする機構などが作成されていてAIによる自動化がなされていました。
今まで人月頼りだったものもこうやって自動化していけば、公務員の方もより自分の仕事に集中できるし空いた時間は休みを取れたりするという一歩を垣間見れた気がします。私は知り合いに公務員が多く残業残業で毎日国のために仕事をしているのを目の当たりにしています。そういった真面目に頑張っている方々が報われる良い世の中になって欲しいといつも思っています。

話が脱線してしまいましたが、私も実はissueを一つ立てていました。それが前述の「ブロックチェーンによる政治のカネの流れの透明化」です。結果、200以上あった提案の中で良いねを集めた上位1割のissueになっていて少し嬉しかったのと同時に、まだ技術で世の中をより良くできる可能性があると希望を持ちました。これは以前から考えていて、実業家の中島聡さんもVoicyでこの話をしていた気がします。
今回、技術に明るくかつ政治に興味がある人たちがこの案を見たらちょっとは波を起こせるかもしれないと思って提案をしてみたのです。

ブロックチェーンによる政治のカネの流れの透明化

このissueではこれが技術的に可能なのか、また、可能ならなぜ今まで作られていないのかを議論したいと考えていました。
詳しくは実際にissueを見て欲しいのですが、結論から言うと技術的には可能だと私は考えています。よりこの案について具体的に書いてあるので是非見てみて欲しいです。
issueのURL(https://github.com/takahiroanno2024/election2024/issues/104)

簡単にまとめると、ブロックチェーンという分散台帳技術を使って、不正な資金の流れを追跡するということが可能なのではないかということです。

技術的に可能?

ブロックチェーンは台帳が公開されているから誰が何をしたのかを簡単に追跡することができる。一方でブロックチェーンは匿名性が高いからマネーロンダリングに使われる。という記事も見かけます。これはどちらとも正解でかつ不正解で、正しくは

  • ブロックチェーンは台帳が公開されているから、取引を追跡できるという点で透明性が高い

  • ブロックチェーンは誰もが個人の証明なしにアドレスを作成できる、取引のネットワークの伝搬のアルゴリズムによるランダム性により匿名性が高い。
    のです。

以下ブログ参照(https://note.com/takao_mizuno1130/n/nd9a7f8159311)

そのため、カネの流れの透明化をするためには政治家の方と結びつくアドレス(口座)を作成し、政治資金を使用するときはこの口座を必ず利用するようにすることで匿名性の観点はクリアできます。

次に考えられる簡単な懸念点は、資金を使うときにこのアドレスを介さなければ良いのではという話があると思います。
この対策としてスマートコントラクトを使用することができます。スマートコントラクトとは、ブロックチェーン上の概念で、あらかじめ決められたルールに基づいて自動でブロックチェーンの取引に関する操作を行えるものという理解をすれば今のところは構いません。半永久的に残り続ける小さなデータベースと思ってもらっても良いです。スマートコントラクトにその年の予算として割り当てられた政治資金を記録して、年度末の決済時に割り当てられた予算と支出と残額が一致するかを調べます。矛盾があれば何か不正な行為を行なったということになります。必ず、銀行等の金融機関との連携が必須になりますが政治家の方の運用口座にお金の流れがあればそれをスマートコントラクトに記載していくという方法をとれば矛盾は見つけられるはずです。

他にも懸念点はあり、issueに記載してありますがこれらも大手金融機関と本気で開発を進めれば可能だと思っています。
これが可能になれば黒塗りの資料を提出することも不可能になるはずです。

なんで今まで作られていないの?

では、なぜ可能なのに今まで開発されていないのかという点ですが、ここは正直私には分かりません。技術に明るい人が政治に明るくないことも理由の一つでしょうし、色々なしがらみもあるはずです。政治のことは門外漢なので私一人の力ではどうにもならないのが現実です。しかし、今回の件でこういった案があるということが少しでも知れれば動いてくれる人がいるかもしれません。なぜならこれはブロックチェーンの力で、ユーザーが利益を感じることのできる技術の使用方法だからです。ただ私一人の力でできることは限られているし、そこに心血を注ぎ込める時間も十分にないので、提案をしてみたのです。
結果、issueにコメントも少しいただき興味を持ってくれている人が少しでもいるのが嬉しかった反面、実現には程遠いんだろうなという無力感も感じました。政治家に対する少しoffensiveなコメントもあったのが残念には感じました。

勘違いしてほしくないのは、私は別に政治家を批判しているのでは全くありません。ただ日本が世界を引っ張れる存在であり続けられるためにどう技術を使えば良いかを考えているだけです。むしろそうありたいと努力をしてくださっている政治家の方々が報われる社会になってほしいです。

ブログに書くことで、頑張った人が損をしない良い社会を作っていけるきっかけに少しでもなればいいなと思っています。皆さんはこれについてどう思いますか?技術的にこれは間違っているなどの指摘も待っています。それ以外でも、ビジネス的観点から、政治的観点から、さまざまな意見をお待ちしています!

引用

[1] Github, https://github.com/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?