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ヘルプ! ぶんちゃんはアイドル

ふらっと訪れた譲渡会で出会った「ぶんちゃん」は、初めてペットショップで「どんべえ」を見たときのような、何か不思議な縁で結ばれているような気持ちには正直まったくならなかった。


譲渡会で撮影したぶんちゃん。今より痩せてる

ボランティアのCさんに勧められるがまま、なんとなく迎えてしまった…というと少し語弊があるかもしれない。ただ、里親が見つかるまでの期間、世話をする「手」が足りずに困っている猫なら、特にこちらから「選ぶ」ような気持ちがそもそもなかったのだ。

そんなわけで、譲渡会の翌日にCさんが家に連れてきてから初めてぶんちゃんをよく観察した。

今や、すっかり肥えたぶんの助

まず、触ってみると意外なほど骨ばっていることに驚いた。この子の大きさにしては,ちょっと痩せ気味かもしれない。

腎臓の値があまり良くないと聞いていたが、ご飯はちゃんと食べているのだろうか。そして、犬歯(猫なのに「犬歯」というんですね笑)が両方とも口の外に飛び出していて、まるでラムちゃんみたいである。

部屋の中でケージからそっと出すと、一目散にダッシュしベッドの下の隙間にあっという間に潜り込んでしまった。慣れない環境に連れて来られたのだから無理はない。

とりあえずトイレの場所はすぐ覚えたし、水もすぐ飲んでくれたので一安心。と思いきや、ここからしばらくの間、なかなか食欲が戻らなくて骨が折れた(後から聞いた話では、野良猫時代のぶんちゃんは、他の地域猫のご飯を横取りするほど意地汚かったらしいのだが……笑)。

夜になると、一応は僕のベッドに潜り込んでくるくらいには人慣れしているぶんちゃんだったが、うちに来て1ヶ月くらいは食も細く、しまいには血尿まで出てしまった。

病院で血液検査をしてみたところ、前月よりも腎臓系の数値が悪化し、「ステージ3」の腎不全と同等になってしまった。

寒い日が続いていたし、慣れない環境に置かれ、ストレスも溜まって免疫力も落ちてしまったのだろう。可哀想に。

それからしばらくは皮下点滴を定期的におこなうことになった。どんべえの介護ケアで培ったスキルが、まさかこんなに早く役に立つとは。自宅で、しかも一人で皮下点滴が出来るボランティアさんは少なく、そのことはとても重宝されている。確かに、生き物に針を刺すのはなかなか勇気の要ることかもしれない。

食餌もしばらくは試行錯誤の日々だった。基準の半分も食べてくれないので、ドライフードをブレンダーで砕いた上に、ぬるま湯を少しかけてふわふわの状態にしたものを、ウエットフードと混ぜてみたり。それを1日3回やっていると病院で話したら驚かれたが、どんべえの介護に比べたら朝飯前だった。

そんなことを1ヶ月ほど続けていただろうか。ある時から急に食欲も戻り、あんなにおとなしかったくせにミャーミャーと鳴いて何かを訴え、スイッチが入ると部屋の中を駆けずり回るようになった。リモート通話をしていると必ず膝の上に乗っかってくるし、仕事を始めようと思うとキーボードの上に座って邪魔をする。

え、猫ってこんなに甘えん坊なの? 「犬と比べて媚びないところが猫の良さ」とはよく聞いていたけど、どんべえの方がよっぽどツンデレで、滅多なことでは甘えるなんてしなかったけどな…。

まあ、確かに「甘え上手」というか、犬のように喜怒哀楽を全開にしてコミュニケーションを取るというよりはこちらを手玉に取るような「あざとさ」が猫にはあるのかもしれない。

そうは言っても、犬はどんべえしか知らないし、猫はぶんちゃんと、あと「えいた」と「にんにん」のことしか知らないわけだが。

次回へ続きます。

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