
第二 生れ甲斐ある人となれ(前編)
第二はしっかり哲学する.だから難しい.引用される言葉の解釈が難しく,完璧に理解できていない.けど,頑張る.
第二の嘉納の主張まとめ
人として生まれたなら禽獣草木とは異なる「人」として生きよ
人として生きるというのは,天賦の能力を修養し運用すること
天賦の能力とは,天賦の本能とは違い,自己の取るべき目的を定め,工夫して手段を講じ,障壁を乗り越えて,目的を実現すること
人は社会から多大な恩恵を受けているので,報いるのは当たり前で,一層進んで社会の益になることを図るべきである
二度とない人生だからこそ,猛省して,覚悟しよう
ざっくとまとめるとこんな感じ.ここからはちゃんと読んでいく.
人として生れた甲斐はそもそもどこにあるのか?
これが,この章で立てられる問いである.
人として人たる甲斐もなく死んでしまっては,これほど痛恨深歎(つうこんしんたん)すべきことはないのである.
そして,この章の最後は
ああ人生は再び得難し,青年の士よ,猛省して覚悟するところにあれ
と厳しい言葉で終わる.この章はご鞭撻(強い励ましをこめて厳しく指導すること)の感じが強い(;´∀`)厳しすぎて苦笑いしてしまう.
で,内容をみると早々に右ストレートが飛んでくる.
朝(あした)に道を聞かば夕(ゆうべ)に死すとも可なり
この文章の解釈が難しい.「道」について理解できなければ,「道を知る」という意味がわからない.私の理解の追いつくところまでであるが,「道を知る」を記録しておく.ちなみに,私の論語の解釈は,安冨解釈を基礎にしている.安冨は以下のように述べている.
ガンディーの次の言葉は,論語の「道」と「知」についての思想と深く共鳴している.
******************************
わたしたちの道は,目を閉じたままでも,歩いていけるまっすぐな道です.これこそがサーティヤーグラハの美しさです.(ガンディー 1997,第2巻62頁)
******************************
人々がこのまっすぐな「道」を歩むとき,社会に秩序がもたらされる,というのがガンディーの,また論語の立場である.
また,安冨は以下のように述べている.
人が「忠恕」の状態にあるとき,そこにたどるべき「道」が見える.[中略]この惑いがなく,道がはっきり見えている状態が「知」である.
ここで,「忠恕」を理解できれば,「道」が少し見えてきそうである.
孔子の推奨する君主への仕え方はどういうのもかというと,君主には率直に考えを述べ,君主が立派に政治をすれば協力するが,そうでなければ協力しない,という態度である.これがすなわち「忠」である.
[とんで]
「恕」は「自分自身の感覚の教えることを正確に汲み取りうる精神状態」という意味になり,「心の如し」という解釈と一致する.[中略]「自分のやりたくないことは,人にするな」というのは,「人になにかするとすれば,それは自分のやりたいことでなければならない」ということである.
私は「忠恕」の状態にないので(飯を食うためにやりたくないこともやっているので),「道」がみえない.だから,「道」を正確に説明できないが,ガンディーのお言葉を借りて
理想的な非暴力国家は秩序のある無政府状態になるだろう
といった,社会の中で他者と調和がとれ,秩序のある状態と読む.これは後に嘉納の述べていることと繋がってくる.
で,はっきりとは見えていないが,「道を知る」ことが禽獣草木と異なり「人として生きる」ということにつながるようである.で,これに続いて,ノックダウンされそうなパンチが続く.
人生の一大事は,いかに賢明に生活するかにありいかに長久に生活するかにあらず.
言葉だけを素直に読むことは誰でもできるが,セネカはストア派の哲学者であるから,ストア哲学とは何かも知らなければならないし,セネカの「生」についても理解しなければならない.嘉納はこの文章を引用した後に「吾人は短命でよいということは出来ない」と書いているが,そのような解釈にはならないと思う.セネカのいう生の短さについては「時間の概念」が異なってる.私たちが気をつけないといけないことは,このような切り抜かれた文章は,そのまま読むと危険である(嘉納はちゃんと理解して,敢えてこのように書いたと思うが,読み手はそのまま読んでしまう).できる限り,文脈を知り,本当の意味を理解しなければならない.だから,孔子からのセネカはノックダウンクラスのパンチだ.
でも,せっかくなのできちんと読み取ることに挑戦したい.長くなりそうなので,セネカの話は後半から.