フェイクから真実を生み出そうとする情熱そのもの
夏と呼ぶにはもはや灼熱すぎる、煉獄猛暑の朝、小太りの生き物がおよそ4匹、西東京の僻地に集まった。そう、いまから中年パーティのはじまりさ。行き先は西東京なのに東久留米。ここは狂い咲きサンダードームこと、巨大温浴施設。
ここは12度くらいの炭酸水風呂とか10分に一回の熱波到来とか、バレルサウナやテントサウナを楽しむ屋上部分や、マイナス20℃の暴力的な獄寒クールダウンを楽しめる「COOL GANG」など、とかく頭の悪いケタタマシイ施設。まともな奴ほど feel so bad、正気でいられるなんて運がイイぜ。だが、サウナの温度だ、熱波だみたいなスペックを競いはしゃぐ季節はとうに過ぎている。中年にもなればSNSに書きたくないまでに最高な街銭湯だって知ってるし、湯船と露天風呂の風でさえチルできる。年をとることは決して悪いことだけじゃないな。湯船に入らないとメンタルも体力も回復しねーよなとか、注意欠陥や多動にはあのアプリがオススメだぜとか、暗い話にばかりやたらくわしくなったもんだが。しっかしここは、岩盤浴&休憩スペースとコミックの充実っぷりが異常だぜ!?さすが追加料金。おれたちは貧者の嗜みこと、平日休みを駆使してシャバ僧たちを出し抜いたつもりだったが、あいにく夏休みだったのか、キッズ・ファミリー・カップルがそこらじゅうでイチャ&コラしてやがる。ROSIER…。友人のキリヲ・ケイに中年漫画の金字塔「1日外出録ハンチョウ」を勧め「高校鉄拳伝タフ」を読みふけ、休憩チェアで寝落ちする。最高の午前をマークした。
明日から寝るなと言われても俺は眠くなる。食うなと言われても腹は減る。飢えた豚4匹は楽園を立ち去り、大人の筋斗雲に乗り込み、約束の地へ。忘らるる都、ひばりヶ丘に向かう。行き先はたった一つ。勇者であり王者の店「ラーメン二郎 ひばりヶ丘駅前店」だ。
そういやあたし、ラーメン二郎は全店制覇よ。全店制覇など、ただの言葉じゃ。だが、車の免許をとって地方を巡るくらいには情熱を注いでいる。どこの二郎が一番?なんて質問をしないでくれ。くるりのアルバムでどれが好きか聴かれるくらい困るんだ(『図鑑』いいよな〜)。だが最初にいくならどこ?とオススメするとしたら、やはりここ、ひばりヶ丘店をアテンドするだろう。並ぶけど。ヨシダ店主(海老蔵似)のヤーマンなバイブス、美しきヤサイタワー、いかなるときも上ブレなブタ、タフな麺、ダイナマイトなスープをオールウェイズ出してくれる。もしいつかはじめてラーメン二郎を食べることがあったら、巷に流布するネットミームや厄介な客の声高な言動を真に受けて恐れることはない。「麺ハンブン」「麺サンブンノイチ」などといいながら食券を出し、トッピングを聴かれたら「ニンニクアブラ」と答えればレディでもガキでも橋本でも大丈夫だ(たぶん…)。走った。転んだ。すでに閉店間際だ。おれたちは滑り込んだ。両の手でハートを形作り、これまでの全てに感謝した。
こ、
こ、これは!?!?!?
ずるっとやれば嗚呼…言葉を忘れてしまう。うまさとは食べた瞬間にだけひと時姿を現しすぐに消え去ってしまうはかない舌の上だけの記憶‥‥だが真の美味はその一瞬の間に魂までも揺り動かすものなのだ‥!!!
「おじさんは無条件にたたいていい、おじさんはたたける最後のフロンティア」。テレビでカズレーザーが自嘲気味に言っていたな。生きてるだけで、害。おれたちオジは、昭和や平成を置き去り、反省とアップデートを続けなくてはいけない。だが、控えめにいって3億点のラーメンを食べてしまったチーム中年の表情はキッズそのものだった。大人になっても、バカは続いていく。語彙力ゼロで語り合う。最高だったな〜。出た、ヤバいね。キタ。やっちゃおう。その後も柄にもなくクラフトビールとか日本酒とか飲んじゃった〜。サウナ、クラフトビール、スパイスからカレーを作る男!青梅街道、関町セラー、オススメです。
そしておじさんは、後日、40年生きていて、最高のライブをした。
本当に、本当にありがとうございました。