#令和が赤名リカに期待した事

東京ラブストーリーとは、連載コミックの原作があったとは言え、世の中の多くの人にはある種、小鳥の雛の刷り込み現象みたいな構図が出来上がっていた。

TLSから連想される話はテレビ版の事であり、TLS=先代TLS=赤名リカ≒鈴木保奈美さんのように、ある種固定概念が出来上がっている方々が多いので、今回の令和版をそれらTLSファンの方々がどう受け止めるか?!と言うのは一つ大きなポイントだったと思います。

特に、悲劇のヒロイン赤名リカに掛かる期待値の高さは言うまでもなかった。

だから、令和版赤名リカに対しては世の中の捉え方として、大きく2パターンくらいあったのではと推測しています。

1つ目は、鈴木保奈美さんの演じた赤名リカに近いタイプの女性。
2つ目は、原作や平成版を知らないので、赤名リカに対して期待のないパターン。

恐らく大半の人は1つ目のパターンで、2代目鈴木保奈美を期待していた方が大半だったろう思います。2つ目は今回演じた方々がそうだったように、東京ラブストーリーをそもそも知らないので、赤名リカに対しても期待も何もない人たちです。

2世タレントや2世議員のように、先代が立派だった人の2世タレントや議員は、その優秀なDNAを受け継いだばかりに、過剰に期待されて来たのは世の常です。

当然一般人からみれば、当人はどう感じるかは別として、社会的には恵まれた環境下に置かれていたかも知れません。ただ、2世の人達は2世の人にしか分からない苦労が沢山あって、それは一般人の及ばない領域に達している事も事実です。

そう考えると、令和版で赤名リカを演じた石橋さんも世間一般的にみれば、2世女優になるのかも知れません。ただし、彼女に限って言えば、TLSファンの期待を一心に背負いながら、令和版赤名リカを演じると言うプレッシャーと、実際に彼女自身が歩まれて来た人生(原田美枝子さんと石橋凌さんの娘としての生い立ち)にリンクするような気がしていて、彼女自身、漫画しか読まないで撮影に入った動機も分からないでもない気がしています。

「テレビ版を観たら自分がその役に引っ張られる」っと仰っていたその言葉自体が彼女を良く表現していて、彼女なりに赤名リカを演じることへのプレッシャーを一番感じていたのではないかと思っているのです。

そんな彼女が演じた令和版赤名リカは、そもそも柴門ふみさん原作の赤名リカ像自体、相当未来の女性像を描いた作品であり、それは登場した時代(昭和→平成)には未来を先走りし過ぎていて、世の中の人が追いついていなかった恋愛の価値観に、令和という時代が漸く”かすった”程度に追いつきつつある女性像を表現できたのではないかと感じています。

世の中の時代が追いついていなかった恋愛の価値観とは、例えば、令和版の最終回で描かれた、リカがシングルマザーの道を選ぶ結末です。日本は欧州諸国に比べても未だ未だシングルマザーに対する理解や制度が未成熟な国であり、それ故に価値の多様性といった部分で、世代や土地柄によってはネガティブな捉え方をされる事も少なくないといった現実があります。

令和版の赤名リカについては、そもそも束縛される事のない自由な女性であって、結婚=同居=夫婦で一緒に子供を育てて行くみたいな価値観は全くない女性でした。

最終回で妊娠を知らされた完治に対しても「妊娠=女だから産むに決まってる」みたいな発言を聞いた時は、リカにこんな古典的な女精神が残っているんだ!?っと私自身がひっくり返ったくらいでした。

そんなリカとは対照的にザ・一般常識人の完治ですから、どの道この恋愛は上手くは行かない空気は、回を重ねずとも周知の通りの結末だったと感じています。

但し、平成版の赤名リカが頭に焼き付いている方々にとって、今回の赤名リカ像をどう捉えるかは色々な声があったのも事実です。

特に私の場合も、やはり平成版の赤名リカのイメージが強く、その平成版のリカが最終回にとった行動に対して、モヤモヤを続けている人も多かったはず。

何故モヤモヤし続けたかは明らかです。

箇条書きすれば以下の通り…

①令和版のリカよりも平成版のリカは家庭的で、完治と結婚してもそこそこ上手く行ったのではないか?!

②最終回で約束の時間までリカが電車に乗ることを我慢できたなら、結論は違っていたのではないだろうか!?

この2つが決定的なモヤモヤの原因です。

先代TLSが放送を終了して何年か経った後、特別版として、リカが筒井道隆さん演じる会社の部下と愛媛に出張に行くと言う短編ドラマが放送されました。

筒井さん自体が織田さん演じるカンチに似ていて、「あれ?」っと思わせる内容だったのが印象的だったのですが、その時点でもリカは独身の設定でした。

今思えば結構家庭的なところもあったリカなのに、未だ独身なんかい!っと

対するカンチについていえば、令和版と比較して平成版は圧倒的にさとみが大好きな設定でしたが、令和版はザ・常識人の完治だったので、リカと付き合っている時はリカが一番でしたし、平成版の織田さん演じるカンチほど優柔不断ではなかったと思います。

だから尚更、現代版の最終回に夏祭りでリカと再開した二人は、先代TLSの結末を覆して、上手く行くのではないかと淡い期待を抱いた方も少なくなかったはずです。

この事は、平成版に取り憑かれてしまった人にとっては、つまり、令和版ではカンチと破局する事のないハッピーエンド型の赤名リカ像を多少なりとも期待していた方が少なからずいたのではないかと思っています。

でも、結末は原作に限りなく近い終わり方で、恋愛=結婚に囚われない。シングルマザーも辞さない現代的な女性像だったのです。

そう考えると、今まで述べて来たような平成版の赤名リカ像に囚われない。

そう言うある種の固定概念に囚われない。

つまり、ありとあらゆる期待すらお門違いと思われてしまう程に、今回の赤名リカには良い意味で裏切られた面があって、それは先進的に時代の先を行っていた原作のコミックを、現代の多様性社会において男性に媚びない女性像として落とし込んで行ったのではないかなと思っています。

令和版赤名リカ。

よく考えられていた作品だったと思うと同時に、それでも未だ鈴木保奈美さん演じる赤名リカしか入り込んで行かないのなら、それはいつ迄もガラケーを持ち続けることを誇らしげに語る人のようで、時代はドンドン流れて行くことを否定する事にもなりかねない気がしています。

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