4月3日「大人になってもまだ熱いんだ」
目の前で、置き忘れに遭遇した。
ただしく言うと、置き忘れを発見した人がわたしに「これ、忘れ物ですよね……?」とかなり重要な物に目線を送りながら確認してきたのだ。
「あー、そうですね、」と苦笑いの刹那。さっきまでその場にいた人のことを思い出し、その人が次に行くであろう場所を想像し、わたしは忘れ物を手に取った。
「ちょっと抜けますね」と挨拶して、わたしは駆け出した。ロングスカートに革靴の装いのわりに踏み出す足取りは軽く、無事に忘れ物を届けることができた。めでたしめでたし。
走った道を戻りながら近くにいた人たちに「あし、はやいんですね」「ヒーローみたいでしたよ」となどと褒められて、わたしの秘められし小学生の部分が疼いてしまいたまらなかった。
なんなんだいったい、この快感は。駆けっこを褒められたときだけに得られる気持ち良さ。この部分って、大人になってもまだ熱いんだ。
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