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『ダーク•ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』から考えるPFAS汚染と公害裁判の歴史

実話を忠実に再現。テフロン加工のフライパンを思い出しゾッとする内容。有機フッ素化合物PFAS(PFOA、PFOS)の水質汚染問題に取り組んでいる人は必聴の映画『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』。第二次世界大戦中のマンハッタン計画の際に生み出されたPFOA。水をはじき、熱に強いため、潜水艦や爆弾、原爆などのコーティングに使われ、のちに家庭用品にも転用された。一度生み出されると永久になくならず体内に蓄積し、生物や人体に悪影響をもたらすことがわかっている。なにより、製造したデュポンが、人体含む実験により当初からその事実を知っていたが、公にしなかった。利益追求のみ執着し、悪影響を隠蔽。住民と弁護士vsデュポンの今でも続く裁判の歴史。水俣病やカネミ油症事件などを想起する。

自動車の排ガスでも、たばこでも、そうだが、資本主義による企業の利益追求により生み出される悪影響はいったい誰が負担するのかという問題と、それをいったい誰が証明するかということ。巨大組織に立ち向かうのは、いつの時代も途方もない苦労と勇気。ある日突然、被害者となる。また、原爆症でもハンセン病でも通底するが、裁判が長引けば長引くほど被害者は亡くなってゆく。まだインターネット上にもほとんど情報がない時代に、1人の弁護士が、PFOAとガンや奇形との関係を明らかにしてゆく。

とにかく規制物質に認定されていない化合物がこの世には存在していることが不安になる。消費者は、何を信じれば良いのか。身体によいというキャッチコピーを信じて高い値段のカネミ油症の米ぬか油を使い続けて泣き崩れていたお母さんの映像が蘇る。

正義とは何か、それを貫くことの代償も理解できる作品です。アメリカ映画にはこの手の映画が多いですが、デュポンという会社はけっこう実名でよく出てきます。他には、殺虫剤で有名なDDT。戦後、シラミ退治で有名になりました。レイチェル・カーソンが書いた『沈黙の春』で明るみになりましたが、これももちろん有害で、デュポンと争っています。

かなり完成度の高い映画です。ぜひご覧ください。

高野はやと@江東区