『サラの鍵』から考える「命のバトン」が絶たれる戦争•虐殺の愚かさ
ナチスドイツに占領された後のヴィシー政権下のフランスについては、よく知らなかった。ナチスというより当時のフランス政府が主導し、ユダヤ人を一斉に検挙した「ヴェルディヴ事件」を元に「命」をテーマにストーリーを展開する。過去と現在を行ったり来たりする展開で少しも飽きさせない。1万3,000人のユダヤ人のうち、戦後まで生き残ったのはわずか100名ほどと言われ、4,000人ほどいた子どもは誰一人生きることはなかった。「もしその中で子ども1人が生き延びていたら」というところが感動のストーリーのはじまり。『サラの鍵』まさに過去と今をつなぐ「命のバトン」。戦争によって、虐殺によって、人が死ぬというのは、単純に数ではない。その後、生まれるはずであった子どもから永遠と続く命すべてを抹消するということである。最後の最後でそれは示され、涙こぼれる。
他国よりもひどい生存率とその光景が事実であることを認識しながら見るとやはり心に響くものがある。それは『イカゲーム』を通して考えさせられる生存競争とはまったく異なる。
フランスを訪れるにあたって、建築、美術、音楽、食などをさまざまな事前に学んだが、子どもの頃からの積み重ねで得られる素養というか教養というか造詣がないということもあるがまったく響かない。やはりこの分野なのだろうな。一生を通して向き合い、解決するべき分野。『サラの鍵』物語、脚本が素晴らしい。
今年から再びガンガン海外に行きます。20、30代は躍動するアジア、40代は成熟する欧米へ。今こそ。視野狭窄な人間から発せられる偏った愛国心に対し、真の愛国心とは何かも外からしっかり示していく。
高野はやと@江東区