人だけど人じゃない 黒沢清監督のサイコスリラー

先日たまたま映画館の特典で加入していたU-NEXTで、以前から見たかったCUREを見ました。
大変衝撃を受けまして。



CUREのあらすじはこんなかんじ。
頸動脈をXのかたちに切り割く猟奇殺人事件が発生、刑事の高部(役所広司)は心理学者の佐久間(うじきつよし)と事件を追う。一方記憶障害の男(萩原聖人)が浜辺で小学校教師に保護される。翌日保護した教師の妻が頸動脈をXに裂かれた姿で発見される……

CUREに対する感想はたくさんあって書ききれないのでまた後日別途で感想を書こうと思うんですが、1つ「あ」と思ったところがありまして。

CUREに登場する容疑者の間宮(便宜上容疑者と書きます)、これ黒沢清監督の"人の形をしたモンスター"をすごくよく表してるなと。

黒沢清監督のサイコスリラーだと下記が思い浮かびます。
・地獄の警備員
・クリーピー偽りの隣人

どちらもネタバレを避けて話すんですが、普通に生活を送っているような私たちには到底理解が及ばないような恐ろしい「人間」が登場するんです。
見た目は人間なのに、すごく怖い。
この恐怖の正体はどこにあるんでしょうか。

人間は殴られれば血が出ますし、痛みがあります。
普通はその痛みによってひるんだり感情を露にしたりしますよね。
それがないんです。黒沢清監督の"人の形をしたモンスター"には。
殴られても蹴られても命乞いをされてもひるまないし、無感情にこちら(主人公)を殺そうと迫ってきます。
何をしても止まらない。死ぬまで追いかけてくる。
所謂サイコパスといったカテゴリに属するのかもしれませんが、この恐怖を「サイコパス」といった言葉で片付けてしまうのは何か違うな、という気がします。
だってサイコパスって人間だし……

初めて地獄の警備員を見たとき本当に怖かったです。本当は人間じゃないオチだったらどんなに良かったか。
クリーピー偽りの隣人も。
意味がわからないんですよ。わからないから本当に怖い。なんで!?ここまでされたらもう諦めろよ!!お願いだから止まってくれ!!!て画面の前で震え上がります。
上記の3作品に共通して、このモンスターたち見た目が人間だから、意志疎通ができるように見えるんですよね。実際主人公たちは意志疎通をはかります。
が、できない。まず話が通じない。同じ日本語を喋ってるのに。
ここがまず最初に異変を感じるところであり、怖いところなんですよ。
フィジカルの強さとかメンタルの強さとかよりまず、話が通じない怖さ。
日常生活でもあると思います。駅のホームで突然怒鳴ってくる人、こっちに聞こえるように謎の独り言みたいな暴言を吐いてくる人(CUREのクリーニング店にもいますよね!)まず身構えます。怖いから。
こっちの常識の範囲にいない、予想できない行動をしてくる人、怖いんですよ。
だって行動が予測できなくて何されるかわからないから……
CUREのあのクリーニング店のぶつぶつ言ってる男も嫌だし怖いけど、でもそれ以上に、圧倒的に間宮に相対したときの恐怖が勝るんです。
言葉で上手く説明できないんですが……。

因みに、「全員サイコパス」というキャッチコピーのサスペンス映画、『怪物の木こり』
こちらに登場するサイコパスたちはちゃんと感情があって良かったです。
殴られたらキレるし、返り討ちにするために綿密に計画を練る。友達もいる。実に人間らしくて良かった。

あと、岡田准一と綾野剛のアクションサスペンス映画、『最後まで行く。』
これも良かったです。ここに登場する綾野剛演じるサイコパス監察官も、ちゃんと感情があるんですよね。
フィジカルの強さもあってわりとモンスター寄りに見えるけど……でも殴られたら怯むしイラつきを隠さなかったりとかもして、まだ人間らしいです。
この映画かなり壮絶でノンストップジェットコースターなので是非……


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CURE、いまプライム無料じゃないんですよね。


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