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読書感想文:アインシュタイン交点/サミュエル・ディレイニー
最近、個人的にディレイニーがブームなのか、と思わないでもないです。
そういいながら、読んだことがあるのは、
・バベル17
・ノヴァ
・これ(アインシュタイン交点)
の三点なんですが。もっとほかに作品はあるのですが、邦訳されてたかどうか記憶にありません…。
隠喩が多い作品であるというのは訳者の方も仰っておられることですが、ディレイニーは多分いつもそうで、原語で読まなければ、そして原義に通じていなければ多く気付かないことがたくさんある作品なのだろうなあと思いました。
とりあえず、処女懐胎から思い切りキリスト教の轍を踏んで、さらにそれを多重螺旋に放り込んだような作品であると思いましたが、ラとロとレで区別される人類、人間未満、そして人間を区別することさえやめようとする都市の流れ、鳩、広告、原罪、畸形、古い恋物語、オルフェウス、どこまで軸を追えばいいのか分からないくらい詰め込まれた物語が、軽快とさえ言える筋立てを持って、さくりさくりと進むさまはいっそ痛快であります。
それについては、バベル17もノヴァも同じ感想を持ったのだが。
読んだあとは、情熱が渦巻くような、いてもたってもいられないような気分を掻き立てられました。
読後感でこういった興奮は割と久しぶりだったために、古い作品であるか、新しい作品であるかどうかは、こういった感情とは別のカテゴライズを必要とするものであるとも思った。
ちなみにこれも決して新しい作品ではない。むしろ年代的には古い。
怒涛のように、何かが動く、そういった印象を受ける作品で、人は自分の意思にだけよって動くものではないが、選択がまた時代を動かすのも確か。
取りとめもなく、殆ど覚書。
(この文章での「最近」は2006年か2007年頃です。一人散り二人散り管理人も散って無人になった知人との感想交流用掲示板にぽつぽつ書いていたもの)
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