封がされていなくても

自筆証書遺言の場合、家庭裁判所の検認手続きの中でなければ、開封してはいけない(罰則付き)ということを、昨日記事にしました。

ですが、たとえ封がされていない場合であっても、安心できません。
そのことについて、記事にいたします。

今回参照する条文は、昨日と同じ条文である、民法第1005条です。

第1005条
前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、5万円以下の過料に処する。

民法 第7章相続 第4節遺言の執行

ここで大切になってくるのが、

  • 遺言書を提出することを怠り

  • その検認を経ないで遺言を執行し

という部分です。
自筆証書遺言の場合、たとえ封がされていない場合であったとしても、家庭裁判所の検認手続きは「必須」なのです。

ここは、意外と見落としがちな部分であるため、注意が必要です。
たとえ封筒などに入っておらず、むき出しの状態になっていた遺言書であったとしても、偽造・変造を防止する必要性から、家庭裁判所の検認手続きを経て初めて「公的に認められた遺言書」としての効力を有することになるのです。

これがもっとも問題となる場面は、登記手続きだと思われます。

登記を行うときには、なぜその登記を行うのかという「登記原因証明情報」が必要となります。
そして、相続(あるいは遺贈)の登記を行う際には、遺言書が登記原因証明情報になります。

この時に、検認手続きが行われていない遺言書を提出してしまったら……その登記は「必要な書類が添付されていない」ということで、却下されてしまいます。
加えて検認していないことが明らかになるため、5万円以下の過料も課されることとなり、踏んだり蹴ったりの状態に陥ります。

たとえ封がされていない遺言書でも、自筆証書遺言の場合には検認手続きが必須。
これは、気を付けるべき部分だと思います。

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