運試し擬人化【#毎週ショートショートnote】
僕は目の前の熊の置物に呪文を唱えた。
熊は微動だにしない。
「お前の術は運試しか?まだまだだな」
超絶美女のくせに口が悪い師匠が言う。
擬人化魔道士の見習いになって3年。
僕はまだ擬人化出来た事がない。
仕方無しに師匠が食べ散らかした食器を片付け、予約のお客様を迎える準備をする。
お客様は若い女性。お気に入りのフィギュアを擬人化して欲しいという。
師匠は呪文を唱え擬人化し、フィギュアは女性の好みに話しだした。
ある日、師匠が留守の時にアポ無しのお客様が来た。師匠は留守だと言うと「あなたでいいから」と老婦人に懇願された。
亡くなった家族が大切にしていたぬいぐるみの犬を擬人化して欲しいと。
僕は想いを込めて犬に向かって呪文を唱えた。
この人の願いが届きますようにと。
すると犬は動き「こんにちは」とペコリと挨拶をした。
老婦人は泣きながらお礼を言って帰り、同時に帰宅した師匠が
「今夜はご馳走だな」と僕に笑顔を見せた。
凄く嬉しかったが「作るのはお前な」と師匠が笑いながら言った。
たらはかにさんの #毎週ショートショートnote 今週のお題「運試し擬人化」を書かせていただきました。
書いていて楽しかったです。
たらはかにさん素敵な企画をいつもありがとうございます。
皆さんの作品を読むのもとても楽しみです。
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