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「龍師」 第3話 【黄花】

「龍師」
 
第3話 【裕】
 
  ○過去
裕の声「ずっと‥‥待っている‥‥信じている‥‥きっと‥‥きっと‥‥来てくれる事を‥‥」
  風で木が揺れる
風の声「ねえ、聞いた?」
木の声「聞いたよ」
風の声「本当なの?」
木の声「嘘だろう」
風の声「信じている?」
木の声「信じられない」
風の声「いないなんて初めてじゃない?」
木の声「初めてだ」
風の声「本当に龍なの?」
木の声「違うね」
  
裕の声「‥‥お願い‥‥お願いだから‥‥」
 
サブタイトル「黄花」
 
 ○朝  
  みかさの家  居間  
  蒼が起きてくる  
  裕がテーブルの側でボーとしている
蒼「おはよう」
裕「‥‥」
蒼「裕?」
裕「(蒼に気がついて)あっ蒼、おはよう、今‥‥飯作るよ」
蒼「裕、もしかして起きていたの?」
裕「‥‥‥‥」
蒼「大丈夫だって。赫なんて、いつもいないじゃん」
裕「‥‥」
  裕、台所のほうに行く
 
  ○みかさの部屋 前日 夜
みかさ「崇は、まだ戻らない?」
蒼「あぁ、もう四日だぜ」
紲「初めてだな」
蒼「あぁ、崇が裕の側を離れた事なんて今まで無いよ」
みかさ「裕は?」
蒼「見てられない状態」
みかさ「咲と赫は?」
蒼「飛んで探している。でも何もつかめないって」
  紲、立ち上がる
みかさ、紲を見る
紲「ちょっと飛んでくる」
  紲、出て行く
みかさ「崇」
 
  ○過去 海辺
  波が砂浜に揺れている
波の声「出来そこないじゃない?」
砂の声「あぁ例のあいつ?」
波の声「普通は生まれたときから一緒でしょ?」
砂の声「もう何百年?」
波の声「さぁ、忘れちゃった」
砂の声「ずっと、あの洞窟にいるの?」
波の声「そうだよ」
 
裕の声「‥‥信じて‥‥」
 
  ○街中
  蒼と紋が歩いている
紋「で、崇は見つかったの?」
蒼「(首を振る)」
紋「蒼も夕べは飛んでいたの?」
蒼「あぁ」
紋「手がかり無しか‥‥」
蒼「もう一週間だぜ」
紋「崇がいないなんて‥‥最初の時みたいだね」
蒼「あぁ‥‥」
紋「しょうがないから、今夜は私も手伝うよ」
蒼「ありがとう、紋」
  ○過去 青空
  真っ青な空に雲が浮かんでいる
空の声「いつまで、あぁやっているのだろう」
雲の声「信じているみたいだよ」
空の声「信じたってだめだよ」
雲の声「そうだよね」
空の声「本当に自分が龍だと思っているのかな」 
雲の声「誰も、あいつが龍だなんて思っていないのにね」
  
裕の声「‥‥龍‥‥」
 
  ○街中 深夜  
  歩いている紋
  止まって両手を耳の所に置き、辺りの音を聞く
  何かの気配を感じ、走る紋
紋「血?‥‥血の匂い」  
  行き止まりの寂れた工事現場
  周りを見回す紋
  後ろに気配
  振り向くと、そこに崇
紋「崇」
  崇の手に血だらけの人間の死体
  足元にも何体かの死体
紋「崇!」
  冷たい目で紋を見る崇、紋に近づく
紋「‥‥」
  崇、紋に攻撃
紋「っうっ‥‥ぐはっ(血を流し倒れる)」
  崇、消える
紋「‥‥崇‥‥」
 
  ○みかさの家 
  紋が布団に寝かされている
  横にみかさと蒼と佑と薬を調合中の笙子がいる
  裕、入ってくる
裕「紋!」
みかさ「裕」
裕「誰が?」
蒼「俺が見つけた時に紋は‥‥崇がやったって‥‥」
裕「?!」
蒼「紋が倒れている横に人間の死体もあった‥‥それも崇が殺したらしい」
裕「崇が?そんな‥‥そんな訳ないよ‥‥」
紋「うっ‥‥」
蒼「紋?紋?」
みかさ「笙子さん」
  笙子、薬を紋に飲ませる
  裕、突然何かを感じる
裕「‥‥見つけた」
  裕、出て行く
みかさ「笙子さん頼む」
笙子「はい、みかさ様」
  みかさ、蒼、裕、追う
 
  ○過去 水辺
小川の声「吉弔がいない龍なんて聞いた事ないよ」
小石の声「本当だな」
小川の声「龍と吉弔って一緒に生まれてくるのでしょ?」
小石の声「そうだよ、だからあいつは龍じゃない」
小川の声「本人は信じているみたいね」
小石の声「ずっと一人でうずくまっているんだよな」
小川の声「一人でね」
小石の声「(笑う)」
 
裕の声「‥‥」
 
  ○夜の空
  飛んでいる佑、蒼に掴まっているみかさ
蒼「裕、どこいった?あいつ、飛ぶの速すぎだ」
  咲、赫、紲、来る
咲「見つかった?」
佑「あっ、こっち」
  全員で佑が指差したほうへ行く
 
  ○河辺
  裕が降り立つ
裕「崇!」
  辺りを見回す
裕「崇!」
 
  ○過去 洞窟
  裕がうずくまっている
  誰かが入ってきて裕の側へ来る
  ゆっくりと顔を上げる裕
裕「‥‥」
崇「‥‥裕」
  裕をゆっくり抱きしめる崇
裕「‥‥うっ‥‥うっ(泣く)」
崇「ごめんね、裕‥‥ごめん」
裕「‥‥うっ‥‥うっ‥‥」
崇「遅くなってごめんね」
裕「うっ‥‥うっ‥‥」
崇「これからは裕の側にいるから‥‥」
裕「うっ‥‥うっ‥‥」
崇「裕、おいで」
  崇、裕に手を貸し立たせる
  外に出る二人
  裕、久しぶりの外なので、眩しくて目が開けられない
  ゆっくり目を開ける裕
一面の菜の花
崇「綺麗でしょ?菜の花は「黄花」っていうんだよ。裕の色と同じだね」
  二人で菜の花を見つめる
 
  ○河辺
裕「崇!」
  裕の後ろから声がする
崇「裕」
  振り向く裕
裕「崇!」
  裕、駆け寄るが、途中で止まる
崇「どうしたの?裕」
裕「お前、だれだ?」
崇「崇だよ」
裕「誰だ!」
崇「だから、俺が崇だって言っているだろう?(裕に攻撃)」
  裕、防ぐ
裕「‥‥(怒っている)崇は?」
崇の偽者「しつこいな!」
  裕に攻撃
  裕、防ぐ
  怪羅、沢山出てくる
崇の偽者「あいつを殺しちゃって」
  怪羅達の攻撃
  裕、かわしながら攻撃
  みかさ、咲、蒼、至、赫、紲、来る
蒼「裕!」
崇の偽者「(嬉しそうに)勢ぞろいか」
  みかさ、鈴が付いた短い杖を出す
みかさ「木は青々と茂り龍王を待つ、火は赤々と燃え龍王を待つ、金は白々と続き龍王を待つ、水は黒々と流れ龍王を待つ、土は黄々と光り龍王を待つ」  
  五龍王の姿になり戦う
  次々やられていく怪羅
  最後に崇の偽者と戦う五龍王
  攻撃を受ける崇の偽者
崇の偽者「‥‥こんな事じゃ、俺達は倒せないよ‥‥俺達には來虚らいこ様がついているんだから‥‥」
みかさ「‥‥來虚」
崇の偽者「來虚様は偉大なんだよ」
  崇の偽者、じっと佑を見る
崇の偽者「佑‥‥(微笑んで)元気そうだね」
佑「‥‥あ‥‥」
  佑、何かを感じ元の姿に戻り倒れる
  支える紲
みかさ「お前!」
崇の偽者「じゃあね」
  崇の偽者、消える
みかさ「‥‥」
  赫が本物の崇を抱えてくる
裕「崇!」
崇「‥‥裕‥‥」
裕「崇、傷だらけじゃないか」
崇「ごめん‥‥裕‥‥側にいなくて」
裕「ばか、黙って!」
  気を失う崇
蒼「とりあえず戻ろう」
 
  ○みかさの家  裕と崇の部屋
  横になっている崇
裕「他に何か食いたいもんあるか?」
崇「‥‥お腹一杯‥‥」
  横に沢山のお皿が置いてある
裕「何でも作るから、崇の好きな物なんでも作るよ」
崇「大丈夫だよ、裕のおかげで身体も治ってきたし」
裕「‥‥」
崇「すまなかったな」
裕「‥‥」
崇「ごめん‥‥ごめん‥‥裕‥‥」
裕「‥‥心配かけるなよ‥‥」
崇「あぁ‥‥」
裕「具合が良くなったら‥‥また菜の花畑を見に行こう」
崇「(うなずく)」
 
  ○みかさの家  みかさの部屋
  みかさ、咲、赫がいる
咲「じゃぁ、崇は吉弔の気配を感じて出て行ったの?」
みかさ「あぁ」
咲「それも‥‥佑の吉弔のいたるの‥‥」
みかさ「あれが至だったなんて」
咲「至が怪羅の方にいたなんてね」
赫「佑の具合は?」
みかさ「もう良くなっている‥‥ただ、あの時の事は覚えていない」
咲「佑は忘れているんだね‥‥昔の事も」
みかさ「あぁ」
  窓から風が入ってくる
  外を見るみかさ
                            終わり

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