241104◇『令和 人間椅子:志駕晃』を読んだ
江戸川乱歩の人間椅子を読んだことがあって、それの令和版?と気になってしまった。志駕晃さんの主な著者に『スマホを落としただけなのに』があるんですね。無知ですみません。誰が書いたかより、タイトルで惹かれて買いました。
◎あらすじ
【令和 人間椅子】
大学在学中に作家デビューした美子に突然送られてきた原稿は、AIが搭載されたマッサージチェアが書いたというのだが……。
【令和 屋根裏の散歩者】違法すれすれのハッキングで大金を得た二郎は、マンションの下の部屋に越してきた女子大生に恋をしてしまう。
【令和 人でなしの恋】マッチングアプリで知り合い結婚した昌彦は理想的な夫だと思ったが、時折妻の目を盗んで出かけているようで……。
【令和 赤い部屋】参加者は服も背景も赤一色。異様なオンラインサロンの参加者は、全員がサイバー犯罪の首謀者たちだった。
【令和 一人二役】劇団「X」に所属する女優の卵・小夜子はマッチングアプリでいろいろな女性に成りすますアルバイトで食いつないでいたが……。
【令和 陰獣】「先生の『令和 人間椅子』大変楽しく読ませていただきました」熱烈なファンレターを送ってきた愛莉は私の愛読者だと言うが……。
◎覚書
【令和 人間椅子】
・大学在学中に天才美少女作家としてデビューした美子。作風から清く美しい路線を求められる。世間の求めるイメージに合うように振る舞うのは大変だろう。
・スマートスピーカーのアマン。私は未だにこういった類のものに話しかけるのが気恥ずかしい。使いこなすのすごいな。
・マッサージチェア良いなあ。お家に欲しい。
・ファンを名乗る人からメールが入っていた。大好きな先生に自分の作品を読んでもらいたいと。確かに連絡先知ってるの怖いよな。
・自身のマッサージ師としての体験記のような。生まれ変わったように活力が戻っている。すごいな。自分が1番近くにいたのに、他の男に取られるのは嫌だよな。
・たくさんの人々を治しているのに、感謝されていない気がする。もちろん仕事で行っているマッサージだから仕方がないところもあるが、明らかにマッサージによる体の改善だろうと思う。認めてもらえない辛さを感じた。
・小説家の女性へのマッサージの話?流れが変わってきたぞ…?
・AIマッサージ機による小説だと思わせる書き方だった。それはAIによる小説の執筆を研究する彩羽が、美子のマッサージチェアをハッキングして得られた情報を元にゆするための作品だった。
・まさに現代の人間椅子だった。今後ありそうな話だからこそ、より怖いところがあるな。
【令和 屋根裏の散歩者】
・金はあった方が幸せになれると思っているけど。裕福すぎるが故の悩みなんだろうな。
・自身の所有するマンションの事故物件とはいえ、正規の10分の1で透子に貸すのか。惚れた弱みだろ?確かに可愛らしい、守ってあげたくなる感じはする。でも、防犯カメラで姿を追い続けたり、ゴミ漁るのは違くないか?
・点検口を通じて階下での入浴シーンを覗く。金で買えない感動や興奮を覚えたんだな。
・透子がデリヘルで働いていることを知り、客として接触したが、今までの関係を崩すことになり、純粋な透子がいなくなってしまったと、彼女を殺害しようとする。
・練炭自殺に見せかけるつもりが、逆手に取られて自分が殺された。されて当然な感じはする。ストーカーだし、デリヘルという弱みを握られた訳だし。最初こそ田舎から出てきた純粋な人という感じがしたが、都会が彼女を変えてしまったんだな。
【令和 人でなしの恋】
・マッチングアプリで出会った昌彦と結婚して玉の輿に乗った遥香。
・外出しがちな遥香。予定外に家に帰ったら昌彦がいない。理由を聞いてもしどろもどろ。尾行をしてみたが事務所で半日過ごしただけ。探偵に依頼しても、誰も事務所を訪れていない。ひとりで何を…?
・地下には、遥香に似たキャラクターで、自分好みの人形が100体。うち1体はAIで喋る。人間の遥香より、人形の遥香の方が理想に近いわけだから愛情が移ってしまうのか?老化しないもんな。離婚して地下に引き篭もる気だ。
・人形を殺した遥香、それを見て後追い自殺する昌彦。数十年後か、認知症が進んだ遥香も昌彦の人形を作っている。絶対に裏切らない存在を求めていたんだ。
【令和 赤い部屋】
・オンラインサロンに集まる人々。ドレスコードは赤系統の色を身につけること。えんじ色って臙脂色なの?知らなかった。画面が赤く染まっているように見えて、皆で赤い部屋に集まっているようだ。
・闇の世界のECサイト(インターネット上で商品やサービスを販売するウェブサイト)の運営者であるM氏が主催するサロンで、特別な会員が呼ばれる。会員だったH氏が逮捕されたため空いた枠に私、A氏が参加できた。異業種交流会みたいだな。
・皆自分の事業がうまくいっている様を語る語る。大っぴらに自慢できる機会がないから、貴重な場なのかも。
・A氏の生い立ちから、刺激を求めてハッカーという仕事をしていたことが分かった。ブラックハッカーからホワイトハッカーになった経緯が惚れた女のためとは。怒涛の種明かしが始まった。会員たちを証拠ごと現行犯逮捕するために参加していた。画面上の皆が捕まる様を見たら、この仕事は興奮して辞められないな。
【令和 一人二役】
・マッチングアプリのサクラをしている小夜子。美人なのにこんな仕事するんだ。見た目を活かした仕事なんて山ほどあるだろうに。
・いろんな人になりきってメールのやり取りをするのが楽しいんだ。お金を稼ぐのも目的ではあるだろうけど、その楽しみのために働いているのかも。
・ただ騙すことが楽しいわけではなく、趣向を凝らしているところをみると、悪人とは思えない。そもそもサクラになる人がそんな罪悪感を抱いているとは思わないが。
・劇団に所属する小夜子。主宰者の前野は女好きで、なんかクズそうだけど。でも小演劇界ではそれなりに有名な劇団だから、籍を置いておきたいのか。それは本来求めているものなんだろうか。私が理想を求めすぎ?
・前野はゴーストライターとしても働いている。夢を追う劇団員がいる劇団を解散させないため。素顔を隠したヘビメタのミュージシャンNOBUの。みんな本当の素顔なんて分からないもんなんだよな。我々はあくまで一面しか捉えてないんだ。
・NOBUこと伸行は立派な寺の僧侶。親や寺のために僧侶をしながらバンドもする。実家が太いと安定しててバンドもしやすいだろう。
・透子だ…!大家を殺す前?後?透子に惹かれている伸行だけどヘビメタはお好きじゃなさそう。残念ね。
・透子をデリヘルで呼んだ浩平は景気のいい嘘をたくさんついたけど、ただのフリーターだったか。闇バイトをしている。薬物を客に届けるもの。
・浩平が薬物を渡した相手は囮捜査中の二宮。薬剤師からマトリへ転職できるんだね。
・捜査に難航する二宮を占う香織。結構当たるな。キャバ嬢でもある。常連客の連れ、松本はサクラの小夜子に遊ばれてる彼だ!
・教師であり、野球の顧問である松本。まだ小夜子たちとのやりとりは続いているみたい。
・人はいろんな役職や顔を持っていることを感じさせられたな。1人何役だってあるよ。
【令和 陰獣】
・令和人間椅子を読んだファンレター。人の邪悪な心は今も昔も変わりせんね。
・ファンレターの差出人、愛莉はサイン会にも来てくれた。めちゃくちゃ美人だ。
・愛莉から令和屋根裏の散歩者と同じような経験をしていると手紙が届く。愛莉の家での行動を事細かに記した内容だった。怖い。パパ活をしていた時の相手がストーカーではないかと愛莉は考えてるようだ。
・ストーカーから家に行くと言われたと聞き、美子も駆けつけた。ストーカーを追い払ったことでより親密になり一線も越えてしまった。
・愛莉はホテルで死んでいたらしい。警察がやってきた。そのタイミングでストーカーから2人の行為中の写真が送られてくる。
・タイミング良すぎるよな。自作自演か?愛莉は死んでないとか?愛莉にしか言ってない小説の映画化の話をストーカーも刑事も知っているぞ?問い詰めると逆上してきた。ビンゴじゃん。
・結局は金を振り込まなかった。公開されなければ推理が当たっていたということだし、されたらされたでこの経験を作品として出すことにした。(令和人間椅子の作者は彩羽だったから、彼女が男性なんだと思ってしまって混乱していた。これは志駕先生のこととして書かれているのか)
・読み終わって
元々人間椅子しか読んだことなかった。人間椅子のざっくりした流れを知っていたけど、本来の人間椅子とは違う新しさや、本来の人間椅子と同じ人間の気持ち悪いところを感じた。
他の作品は原作を知らないで読んだ。どれもこれも人の欲が描かれていて、とても気味が悪いくらい人間らしかった。原作を読んでみるか。比べることでまた違う発見ができそう。