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自動車修理費が上昇 背景に安全装備増

世の中の様々な値段がどうやって決まっているのかを解き明かす「値段の方程式」。今日のテーマは「自動車修理費上昇 小さな事故でも高額に」です。
まずはこちらの自動車保険についての記事をご覧ください。


自動車保険料は事故率の低下やコロナによる外出自粛で、この数年は下落傾向が続いていました。来年1月からの保険料はその傾向にブレーキがかかりそうです。 事故率が低下しているのに下落が止まる。 その背景にあるのが今日のテーマ、自動車の修理費の上昇です。

値段の方程式
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜〜金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。

▼放送はこちら

こちらのグラフをご覧ください。業界団体が調べている事故整備費の平均単価です。 年によってばらつきはありますが上昇傾向にあります。2021年は13万9659円と10年前と比べるとおよそ1万円上昇しています。

なぜ上昇しているのでしょうか。 一言でいうと車が高機能になっているからです。 具体的には車の安全装置が20年ほど前と比べて飛躍的に増えています。主なものはセンサーとカメラです。 一般的に自動車の安全装置は高級車から装備が始まり、大衆車に広がっていきます。効果があるものは国が義務化してつけなければいけなくなっているんです。

相次ぐ安全装備の義務化


最近、装備が義務化された安全装置をピックアップしてみました。

自動ブレーキは衝突防止機能ですね。 2019年2月に日本を含む世界40カ国で新型車への自動ブレーキ搭載義務化が合意されています。 それを受けて、日本国内では21年11月に義務化されました。 カメラとセンサーで先行する車や歩行者との距離を検出し、 衝突の危険性が高まった際に警告音などで ブレーキ操作を運転者に促すシステムです。 警告音でもブレーキ操作がない場合、自動でブレーキが作動します。
バックカメラは車の後方の運転手が直視できない場所に設置し、事故を防止するために必要な装備です。 最近では車両のコーナーや前後に装着される場合が多く、センサーと組み合わせて使います。
 事故情報記録装置は乗用車を対象につけられるものです。 アクセルとブレーキの踏み間違いによる交通事故が社会問題となっていますよね。 この装置は自動車の動作を記録して、事故の原因が自動車の欠陥なのか、 ドライバーの操作ミスなのかを特定できるものです。 こうしたセンサーやカメラが増えて高機能化し部品代などの価格が上乗せされて修理費が上昇しています。

車修理はまるで精密機械の調整

取材してみると、ほかにも値上がりの要因がありました。 映像を見る前に、取材してきた自動車について説明させてください。 訪れたのは埼玉県行田市にある創業56年のダイエー自動車販売の自動車整備工場です。今年6月に関東の広い範囲で降った雹で傷がついてしまった車がありました。 天井部やフロントガラスを交換した後の最終チェックに立ち会いました。

整備士が運んでいるのは二次元バーコードのようなものがついたボードです。センサーなど電子制御装置が 正しく作動するための 「エーミング」という作業をする機材で白黒のチェッカーフラッグのターゲットを使ってレーダーの補正を行います。前の車との車間距離を把握するセンサー。センサーが検知する角度が1度ずれるだけでも、30メートル先では50センチ以上ずれるそうです。レーザーを使用して正確な位置を調整していきます。
誤差が大きいと自動ブレーキが対向車に反応して急ブレーキをかけてしまう、そうすると事故の危険もあります。水平位置もずれがないように、4つのタイヤの空気圧も調節します。測定する前の準備が整うまでに約20分。 ようやく最終チェックのコンピューター診断にかけます。昔の自動車修理と比べると精密機械を直しているようです。 井上光広社長は「(客は)見積だけだと『こんなに整備作業がかかるの』とびっくりされます。説明して安全を担保するためにはこのような作業をしなければならないということで、ほとんどのお客様が納得いただいています」 と話します。

修理費の具体例を挙げてみると、ぶつけてバンパー交換をした場合、以前なら交換費用が5万円程度で済んだものが、 今はセンサーなどが追加されているほか、 先ほど見ていただいた作業をする必要があり、 車種によって違うものの15万円程度かかる場合もあります。修理に必要な期間も長くなっています。

きょうの方程式です。

修理費上昇=高機能な部品+整備作業増

修理費の上昇は車をより安全にするために今までなかったセンサーなど 高機能な部品が追加されていることに加え、 整備に関わる作業工程が増えたということだったんです。

安全に関することなのでもう少し下げてほしい、とは 簡単に言えないですね。 もう一つこちらの数字をご覧下さい。


事故整備の売上高ですが、2021年は9659億円と1991年の統計開始以来初めて、1兆円の大台を割りこみました。修理の単価は上がっていても 事故の件数が減っていることを表しています。 反面、自動車整備士の給料が上がらず、 整備士不足に陥っているという面もあります。 「多くの人員が必要ですが、我々の1時間単位の工賃の基準というのがここ30年ぐらい上がっていない。人員確保が非常に難しくなっているジレンマを感じている」(ダイエー自動車販売の井上社長)
自動車整備士は国家資格で、 私たちの安全を支えてくれる大事な役割を担っています。人材確保のために給料の引き上げをする必要があります。その上昇分が反映されればさらに修理費に上乗せされそうです。任意の自動車保険に加入していれば、ある程度出費がカバーできるとはいえ、安全運転を心がけるのが大事ですね。



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