航空株主優待券 旅行需要旺盛でも値下がりの謎
世の中の様々な値段がどのように決まっているのかを解き明かす、値段の方程式です。きょうのテーマは「航空株主優待券 旅行需要旺盛でも値下がりの謎」です。コロナが5類指定になって1年あまり。人流はほぼ平時に戻っています。インバウンド客も増え続けています。航空機の利用も増えていますが、航空券がお得に買える航空会社の株主優待券はコロナ期並みの価格まで下がっています。なぜでしょうか。
株主優待、種類は様々
「株主優待」とは企業が自社の株を購入してくれた株主に向けて、自社商品やサービスなどの「優待品」を贈る制度です。すべての企業が実施しているわけではありませんが、上場企業の約4割にあたる1500社が優待制度を導入しています。この株主優待券のなかでもよく売買されているのが航空会社の券です。
「株主優待」には、どのような種類があるのでしょうか。食品企業では自社商品の詰め合わせ、外食企業では食事券が一般的。ほかにもカタログギフトのように選べる優待など、バリエーションが豊かになってきています。イオンは買い物した金額に対し3~7%のキャッシュバンク還元があるカード、マクドナルドはハンバーガーの引換券がもらえます。住宅会社をサポートする事業をしているエプコは100万円相当の住宅設備を無償で設置できる権利の抽選を受けることができます。
株主優待券は株主でなくとも町の金券ショップで手に入れることができます。人気なのが交通系の優待券。全日本空輸(ANA)や日本航空(JAL)、JRや私鉄各社の優待券があります。
株主優待券を利用した場合、どれぐらい安くなるのでしょうか。航空会社ですとANAとJAL、スターフライヤーは普通運賃のおよそ半額になります。例えばANAはゴールデンウィーク期間だと東京(羽田)~沖縄(那覇)は通常、片道4万4610円かかります。現在、金券ショップでANAの優待券は1枚2200円なので優待券の値段を足しても2万円ほど安くなる計算です。
購入者が減り、店頭在庫膨らむ
こちらは金券ショップJ・マーケット「池袋東武ホープセンター店」のANA、JALの優待券の販売価格です。2018年末はANAが5000円台前半、JALが7000円台後半でした。コロナ禍で外出を自粛した2020~22年に2000円割れまで下がりました。コロナが一段落し人々の旅行需要が回復するにつれ徐々に上向いてきましたが、足元は再び下落。現在の相場はコロナ禍の底値に近付いています。どうしてここまで価格が下がったのでしょうか。
J・マーケットで聞いてきました。こちらのお店では株主優待券のほかにも、レジャー券や宿泊券といった多くの金券を取り扱っています。アフターコロナで旅行需要が活発化し、インバウンドの利用も増え一時的に価格は戻りましたが、現在は供給が増えているそうです。
「早期割引」にも押される
J・マーケットの運営会社、コスミック流通産業の柘植健志エリアマネージャーは「(優待券を)売りに来る人に対して、買う企業や一般の人が少なくなっており、在庫が溜まっている状況です」と話します。航空会社が提供している「早割」などの割引サービスも、優待券の需要低下につながっているといいます。「株主優待券を使った時の価格が早割に比べて高くなってしまうので、前もって決められた旅行をする人は早割を使っている」(柘植さん)。企業ではリモート会議が定着して、コロナが明けた後もリモートでの会議や打ち合わせも増えました。コスト節減の意味もあり、リアルの出張がいいのか、リモートの打ち合わせで十分なのかを吟味するようになっているようです。
ここで、きょうの方程式です。
「航空株主優待券の値下がり=リモート増加×割引制度の多様化」
ほかの株主優待券はどうなっているのでしょうか。
JRや私鉄の優待券も値下がりしてますが、下げ幅は小さい。レジャー施設系や外食系はコロナ後の人流回復で戻りつつある。今年の夏は猛暑だったのでプール施設の優待券は好調だったそうです。
航空会社の株主優待券をお得に使う方法も聞きました。やはり突然、飛行機を利用する必要が出た場合。8月下旬、台風10号の時に東海道新幹線の運行見合わせが相次ぎました。仕事の都合などで帰る必要があった人が航空優待券を求めて来店したそうです。