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第2次ウッドショック ニッポンの木材 活用進むか

世の中の様々な値段に関わる疑問を解き明かす「値段の方程式」。今回のテーマは「第2次ウッドショック ニッポンの木材 活用進むか」です。ウッドショック、つまり木材の価格高騰は以前も番組でお伝えしました。木材が入ってこないため、住宅のコストアップや着工が遅れるといった影響が出ました。今は「第2波」が訪れているんです。同じ木材でも主役は交代し、住宅に必要不可欠な木材製品が高騰しているんです。

値段の方程式
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜から金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。

昨年のウッドショックは「アメリカ発」

昨年のウッドショックはアメリカ発です。新型コロナでアメリカではテレワークが浸透して住宅着工戸数が急増し、世界的に木材が不足しました。上のグラフを見ると一目瞭然。スギやマツ、ヒノキといった住宅の柱や針に使う木材が2021年の4月ごろから軒並み高騰しています。21年の夏以降、上昇は止まりましたが、元の値段には戻っていません。
こういったウッドショックは以前にもありました。

今回、注目なのが日本国内の合板価格です。合板とはベニヤ板を重ねて接着したものでしなやかで強度が高く、住宅の壁や床などに使われます。建設現場でコンクリートに流し込んで固める際、枠として使う「型枠用」としても使う、重要な建設資材です。その合板価格は21年からのウッドショックで上昇した木材の価格上昇が一服した2021年秋以降、国産・輸入品ともに急上昇しています。

ロシアの輸出停止響く

日本の消費量の半分以上を占める国産合板はウクライナに侵攻したロシアが制裁への対抗措置として3月以降、合板の材料となる、薄い板「単板」の輸出を停止。日本の合板メーカーは国産のスギやヒノキの手当てを迫られました。合板加工工場と、柱やはり用に木材を加工する製材所との調達競争が激化、原料となる丸太の仕入れ価格が上がりました。  
一方、輸入合板は主要産地であるマレーシアやインドネシアからの輸入が安定しません。マレーシアでは2021年の雨期が長引き、丸太の伐採が進まなかった。コロナ禍で合板加工工場が停止したり伐採現場が人手不足に陥ったりしています。
ロシアのウクライナ侵攻の影響がこんなところに出ています。FAO(国連食糧農業機関)によるとコロナ禍前の19年に輸出した製材の量は世界の21%を占め国別で最多。ロシアは有数の木材輸出国で、輸出が途絶えたことによる打撃が大きくなるんです。

日本の森林資源活用の課題

日本は国土の3分の2が森林です。資源は豊富なように見えますが、なかなか難しいんです。まず供給網が複雑なんです。木材を切り出して、製品に加工するまでの工程の各段階を商社や問屋、販売店などの中間流通業者がつなぐ。同じ加工段階でも製材にする工場と合板にする工場と分かれていて、それらの間に中間流通業者が介在することもあります。

さらに林業従事者の高齢化と後継者不足で産業としての基盤が弱くなっています。補助金頼りで競争力が弱い。小さな地権者が多く活用が進みにくいなど課題が多いです。日本の森林から木材を今すぐ切り出して市場に流すというわけにはいきません。

きょうの値段の方程式です。

「第2次ウッドショック=ロシア産の禁輸+日本の供給網に課題」

不動産大手も国産材に注目

国産木材は不動産大手が活用を進めています。三菱地所は鹿児島県で木材の加工施設を稼働させて建材や戸建て住宅を売り出します。竹中工務店や九州の大手ゼネコンなど7社でMEC Industry(鹿児島県霧島市)という会社を設立。 丸太の状態の木材を「製材」にする、組み立て式の戸建てを製造する、そして販売するまでを製販一体で行っています。年間で約5万5000立方メートル、直径36センチの丸太で約1万5000本分の活用を見込んでいます。 中高層建築に使う建材などにも活用の幅を広げその規模は戸建て300棟分以上です。「中間マージンというものを一切除外し、より良いものをより安くご提供ができる」と担当者は話します。三菱地所は事業全体で10年後に100億円の売上高を目標にしているそうです。

林野庁によると日本の木材自給率は2020年は41.8%。10年連続で高くなっており、48年ぶりに4割台まで回復しています。企業もSDGsの観点から国産材活用に前向きです。今後、国産材の活用が一段と進めば「ウッドショック」に振り回されにくくなるかもしれません。



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