一番広告料が高いのはあの駅 デジタル化で変わる鉄道広告
BSテレ東の朝の情報番組、日経モーニングプラスの「値段の方程式」。きょうは普段より時間が倍あった特別版でした。今朝6月14日のテーマは「鉄道広告」でした。普段、電車で移動するときに目にはしているけれども値段を気にする人はあまりいないかと思います。
こちらが首都圏鉄道各社の中刷り広告を比較したものです。 値段にかなり大きな違いがあります。キャスターの天明麻衣子さんから「電車には中吊り広告以外にも、たくさんの広告がありますよね。 それらの値段には違いがあるのでしょうか」と質問されました。
はい、違いがあります。 こちらは、JR東日本の車両内の広告がある場所を示したものです。
プリント広告と呼ばれる紙の広告で最も高いのは、ちょっとわかりにくいですがドアの横部分④「ドア横新B」という場所になります。 扉4枚がセットになったもので、 山手線内では1週間で「ジャック」と呼ばれる車内を同じ広告で埋め尽くす場合、最大で1週間1億円になります。
路線によっても値段は違っており、最も高いのが山手線、 次が中央線、その次が京浜東北線となります。
これら鉄道広告の値段はどうやって決まっているのでしょうか。JR東日本管内の広告事業を手掛けるJR東日本企画を取材してきました。執行役員の
星野雅央・交通媒体局担当局長に話を伺いました。星野さんは「鉄道広告の値段はリーチ(接触率)、インパクト、ブランドが掛け合わさって決まっています」と説明します。
今日の値段の方程式はこうなります。
鉄道広告の値段=リーチ(接触率)×インパクト×ブランド
リーチとは「広告に接触するであろう路線の輸送人員や駅の乗降人数」のことです。2つ目のインパクトは媒体の大きさや設置されている環境・位置置などです。 車両内でも広告の大きさによって値段が変わり、駅構内でも広告の大きさによって値段が変わります。 3つ目のブランドとは駅や路線に対するイメージです。
ブランド力がよく現れている事例がこの表です。
JR東日本管内の駅の乗車人員は新宿駅が1番です。でも広告掲載費は東京駅が1位となっています。 東京駅内のデジタルサイネージは7日間で600万円の費用がかかります。個人によってブランドに対する価値観が様々なのですが、私の見立てでは①東京駅は駅舎の一部が文化遺産に指定されている②皇居が近く③日本の代表的なビジネス街丸の内に面するーーなど、広告を出す企業にとって価値が高いと思われている。その駅の歴史やイメージに加え、利用者に若者が多いのか、サラリーマンが多いのかといった特性もブランド力に含まれます。
ただ路線別でみると、最も利用者数が多い山手線が1位となっています。
広告市場全体でみると鉄道広告のポジションはどうでしょうか。メディアごとの広告費を見てみますと、インターネット広告の台頭が目立ちます。鉄道広告を含む交通広告はこのグラフではほぼ横ばいにみえますが、この3年間は年に3%増のペースで推移しています。
鉄道広告が健闘している理由の1つにデジタル広告の上昇があります。こちらはJR東日本企画のデジタル広告の推移です。
山手線から始まって、その後さまざまな路線にデジタル広告が導入されるのに伴って、年々売り上げが増えていることがわかります。一概には比較できませんが、紙の広告よりデジタル広告の単価は上がります。デジタルの強みはやはり動画を流せることです。中刷り広告に代表される紙の広告は同じ情報がそこにあり続けることで、商品のキャッチコピーやイメージカラーを強く印象付けることができます。
デジタル広告はテレビCMとの連動や、天気予報などタイムリーな情報と連携して広告素材を切り替えることが可能など注目率を高められるという点が、 デジタル広告の利点で、広告価値を高めています。
ここでキャスターの豊嶋広さんが「どのくらいみられるんですか」と聞いてきました。山手線の平均乗車時間は11.7分です。通常のCMは15秒なので、もし乗車している時間にフルに画面を見ていれば40本以上はみている計算になります。
続けて豊嶋さんから鋭い質問。「電車内では、多くの人がスマートフォンを操作しているという印象があります。 鉄道広告を見ている人はあまりいないんじゃないですか」。面白いデータがあります。 日本鉄道広告協会などがまとめた「交通広告共通指標調査」によると、スマホ利用者のほうが、非利用者に比べて広告到達率が高いという数値が出ています。
なぜでしょうか。「スマホを電車内で操作している人のほうが、情報感度が高いのでは。車内の鉄道広告で見た商品などについて、スマートフォンでそのまま検索するという人も年々増加している」(JR東日本企画)といいます。
豊嶋さんは「現在、車内広告の音声は流れていないが、聞きたい人に音声を流すサービスも出ませんかね」と感想を話します。私は「技術的には可能だと思いますが、山手線などは乗車時間が短いので、どれだけニーズがあるか、それとの兼ね合いですね」と答えました。
キャスターの八木ひとみさんが「最近、ラッピング広告の電車もみますね」と話します。最近では山手線で見かける回転すしのラッピング車両が話題になりました。ホームドアにも同じ広告を使っている駅ではまるでレーンをお寿司の皿が回っているような感覚になります。面白い広告です。「鉄道広告はSNSによる拡散効果も大きい」とJR東日本企画の担当者は話しています。
テレビCMとはまた違った鉄道広告の面白さ。みなさんも鉄道を利用される際に、じっくりとみてください。
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