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イチゴ品薄で価格上昇 クリスマスケーキは
世の中の様々な値段がどのように決まっているのかを解き明かす、値段の方程式。きょうのテーマは「イチゴ品薄で価格上昇 クリスマスケーキは」です。30年ほど前までは、イチゴの実がなる時期は4月から6月のみで春が旬とされていました。ハウス栽培の技術が進み、今では一年中栽培されています。クリスマスのケーキに使われる「冬から春」が旬と言われるようになりました。そのイチゴが値上がりしています。
値段の方程式
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜〜金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。
卸値は平年比13%高
農林水産省によると東京都中央卸売市場のイチゴの卸値は12月9日時点で1キロ当たり2500円と過去5年の平均と比べて300円(13%)ほど上昇しています。
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最も価格差があった10月時点でみると今年は1.7倍の高値で取引されていました。クリスマスケーキの平均価格も上昇しています。帝国データバンクの調べによると百貨店やスーパー、著名な洋菓子店など計100社で販売されるクリスマスケーキの価格はおよそ4500円となりました。
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小麦粉やバター、タマゴなどいろいろな材料が値上がりしているためですが、その中でも特にイチゴは上昇しています。
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猛暑の影響で品薄に
東京都目黒区の洋菓子店Teaful(ティーフル)で取材してきました。小泉直也社長は「昨年は1パック498円で売っていたイチゴが今年は550~598円くらい。50円から100円ぐらい上がってるような印象です」と話します。今年は猛暑で例年以上に品薄です。「(クリスマスケーキに必要な)イチゴが1カ所で揃えられないので3カ所ぐらいの八百屋からそれぞれ数10パックずつお願いして何とか用意したい」(小泉社長)。
それでもクリスマスケーキの値段は今年は据え置く方針です。ただイチゴを使わない切り株型のケーキ「ブッシュドノエル」を初めて作ったほか、飾りで使うイチゴの量を少し減らす可能性はあるそうです。ほかの店でも上の飾りはイチゴを使い、中にいれる果実をブドウやモモに変える工夫をしている店舗もあります。
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イチゴは基本的に暑さに弱いんです。今年は10月以降も猛暑が続き、ビニールハウスの室温が上昇したことで出荷が例年より遅れています。さらに今年は猛暑で受粉に必要なハチも飛ばなくなっています。その結果、受粉がうまくいかず変形したイチゴが多くできている。クリスマスケーキに使うきれいなイチゴの数が減っていて、値段も上がっているという構図です。燃料費の上昇もハウス栽培がメインのイチゴ価格に影響しています。イチゴはほとんどがハウス栽培です。ハウス内の温度が8度以下にならないように暖房を使って調節します。その暖房に使われる燃料の重油が上昇していることや肥料の価格の上昇も大きく影響しています。
きょうの方程式です。
イチゴ価格の上昇=猛暑による品薄+栽培コスト上昇
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気象異変によるイチゴの品薄への対策も出始めています。植物工場向け授粉・収穫ロボットを開発する東京大学発ベンチャーがイチゴの完全自動栽培ロボットの提供を始めました。ロボットによる自動授粉はハチで授粉する場合より授粉成功率が20%程度高い。生産量も20%増えるということです。ほかにもイチゴのパック詰めの自動化など人件費を抑える取り組みも進んでいます。(村野孝直)