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もうすぐバレンタイン チョコ値上がりとSDGs

世の中の様々な値段がどうやって決まっているのかを解き明かす「値段の方程式」。今日のテーマは「もうすぐバレンタイン チョコ値上げとSDGs」。来週はバレンタインデーですね!私にはすっかり縁遠くなりましたが、百貨店の特設コーナーは大賑わい。好きな人への「本命チョコ」や「義理チョコ」だけではなくて、最近は友達への「友チョコ」家族に贈る「ファミチョコ」、自分で食べる「ご褒美チョコ」など、もうチョコレート祭りです。

値段の方程式
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜〜金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。

消費者物価指数で9.4%上昇

消費者物価指数のチョコレートの項目を見ると1年前に比べて9.4%上昇しています。全体を表す総合の伸びは4%なのでそれよりも大きいですね。
3つの要因があります。ロシアのウクライナ侵攻によってエネルギー価格が上昇し、輸送費や加工時の電気・ガス代が膨らんでいます。また、チョコの口どけをよくするため加える油脂が値上がりしています。ウクライナやロシアで採れるひまわり油が一時的に8割近く上昇、それまでより高い状態が続きました。

カカオ豆の生産量減る

3番目は原料であるカカオ豆の生産が減っているのが理由です。コートジボワールとガーナの西アフリカの2カ国だけで生産量の半分以上を占めています。日本の輸入に占める割合はガーナが8割なのでガーナのほうが知られているかもしれませんね。
この両国にウクライナ情勢が影を落としています。ロシアから輸入していた肥料が高騰しました。低所得者が多い農家は収入を維持するため、高くなった肥料の使用を抑制、例年よりも生産量が少なくなりました。洪水などの天候不順も重なり、国際カカオ機関によるとコートジボワールでは生産量が23%減少しています。ガーナも大幅に減少する見通しです。

ここで今日の方程式です。

チョコの値上がりはロシアのウクライナ侵攻によるエネルギーやヒマワリ油の値上がりと天候不順や肥料の値上がりによって収穫量が減少しているところに円安が掛け合わされたということだったんですね。

農家の低所得問題

チョコの値段は上がっていますが、カカオ農家の低所得問題が改善されるわけではありません。たとえば100円のチョコの場合、農家の手取りは10円以下とされます。残りをメーカーや流通などが持っていきます。これではサスティナブルな産業とはいえません。産地もいろんな対策に取り組んでいます。コートジボワールとガーナが協調して取引価格を引き上げる仕組みがありました。原油価格の国際組織OPECに似ているのでカカオ版OPEC=「COPEC(コペック)」とも呼ばれています。

2020年10月から1トンあたり400ドルを上乗せする制度でした。生産者は高値で売れることを見越して増産に取り組んだところに、コロナが発生、世界的に需要が減少しました。カカオ豆の多くが売れ残り、値引きしなければ売れない状況に。良かれと思った政策でしたが、生産者の暮らしは良くならなかったんですね。

ガーナで「カカオ革命」起こす女性起業家


それでも世界的なSDGsの流れがあり、フェアトレードで生産者の暮らしの向上に取り組む動きが広がっています。現地ガーナにチョコレート工場を作り雇用を生み出し、現地の人々の暮らしを豊かにしようとしている田口愛さんがそのひとりです。2月上旬に東京都内の小さな工房を訪ねました。
田口さんはチョコが大好きで大学在学中に原産地のガーナを訪れました。最初にガーナに行ったときの衝撃を振り返ります。「カカオ農家さんたちと出会って、『なんで来たの』って言われた時のことです。チョコが好きで来たんだって言ったら、その地域ではチョコが売ってなかったんです」。現地でチョコは高級品、とても買うことはできません。そこで田口さんは何度も足を運びチョコを作り、生産者に食べてもらいました。チョコレートの味をまずは現地の人にも知って楽しんでもらう。そして、現地に工場を作るまでになったのです。

ガーナの子供たちとチョコを作る田口さん

「自分たちは素晴らしいものを作っているんだ」という自覚を持ってもらい、一緒によりもっと良いものを作ろうというムードになったそうです。田口さんは「同情で買ってもらうフェアトレードではなくて、品質が良いからこの価格なんだっていうことで、自信を持ってお届けするようになった」と力強く話します。
それまではガーナ政府が品質を問わず同じ価格で買い取っていました。田口さんは高い品質の豆は高く買い取るようにしました。その結果、農家の収入が増え生産意欲が高まる⇒より高い品質の豆ができる⇒味がいいので高くてもチョコが売れるーーという好循環が生まれているといいます。ガーナに「カカオ革命」を起こすのが田口さんの夢です。

田口さんのチョコのブランド「MAAHA(マーハ)」はオンラインショップのほか、都内の有名百貨店も取り扱うようになりました。コンビニやスーパーで売っている商品に比べると価格は高いのですが、オンラインショップで売り出すとすぐに売り切れてしまうそうです。工房で一つ一つ大事に作っているため、なかなか数が作れないのが悩ましいといいます。

大手企業も生産者支援策


おいしいチョコをこれからも食べ続けていくためには生産者の生活の向上は欠かせません。大手企業のアプローチを紹介します。キットカットで知られるネスレはカカオ生産者の所得向上などを目的に1600億円を拠出する計画です。明治も2026年度までに、農家支援を実施した地域で生産された「サステナブルカカオ豆」の調達比率を100%にする目標を掲げ、農家支援に取り組んでいます。






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