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勉強会メモ「メルカリCXO室主催 Design meetup リブランディングの舞台裏」
メルカリ CXO室主催のミートアップに参加したレポートです。
以前スタートアップのリブランディングに携わったことがあるのですが、他社のリブランディングの舞台裏を知る機会がなかなか無いなあと思っていたので、今回楽しみにしてきました。
※趣旨が違う!などの問題があったらお知らせください。修正します
概要
- メルカリCXO室主催 Design meetup リブランディングの舞台裏
- 「2018年10月31日のメルカリの新ロゴデビューを記念し、リブランディングをテーマにしたイベントを実施します。ロゴのリニューアルはリブランディングの第一歩。どのような思いを込めているのか。 そして、具体的にどのような手段で実施し、今後何をしていくのか。リブランディングを主導するメルカリの社内組織「CXO Design Team」、外部パートナーである「Takram」、「PARTY NEW YORK」の三者に加え、社内デザイナー&クリエーターも参加し、リブランディングにまつわるあれこれについて赤裸々にお話しいたします。」
- 日時:2018年11月28日 19:30〜
- 場所:株式会社メルカリ
- ハッシュタグ:#mercarirebranding
Session 1. リブランディングの舞台裏
井上 雅意:メルカリ / CXO室デザイナー
- 参考note記事:メルカリロゴリニューアルの裏側、見せます。
- LP:Hello New Logo!
● プロジェクトの背景
- プロジェクトチームの構成
- メルカリCXO室(デザイナー3名)
- Takram(アドバイザリー)
- PARTY NEW YORK(制作)
- なぜCXO室ができたのか?
- 理由1)経営陣のデザイン意識の高まり(これまでが無頓着すぎた、とも言える)
- 理由2)組織が大きくなる中で舵取りが必要になったため
- CXO室って何をするところ?
- ①Branding:ブランドづくりとマーケティングクリエイティブづくり
- ②UX/UX:全体の体験・ガイドラインをつくる(直接つくるわけではなく、ガイドライン化や今後の設計を進める)
- ③Design組織づくり:全社としてデザイン組織がどうあるべきかを考える
- ブランドイメージやロゴのアップデートは、プロジェクトのはじめからやると決まっていたわけではなかった
- →ミッションの再考(後述)をやった結果、やろうと決まった
● ロゴリニューアルのプロセス
- ロゴが決まるまでのプロセス
- ①メルカリのミッションの再考
- ②デザインコンセプトづくり
- ③ひたすら経営陣と議論
- ④リリース準備
- ①ミッションの再考 について
- すでにあった会社のミッション「新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る」
- →「新たな価値」って?「世界的」は必要?「創る」というのは、これから作ろうとすることになってる?などについて経営陣に確認しながら議論
- →議論の結果、「新たな価値を生み出す」、「世界を目指す」という方向性は変わらないが、そのうえで今後は敷居が低く、誰もが入れるオープンなプラットフォームを目指すことが明確になった
- ②デザインコンセプトづくり
- ミッションの再考を経て、目指すことは大きく変わっていないことがわかった。なので今回はロゴリニューアルではなく、リデザインとすることを経営陣と決めた
- (※ここまで決めるのに、プロジェクトスタートから約2ヶ月かかった)
- さらに、メルカリがどんな存在であるべきかをデザイナーチームで考えた
- →ここであがったキーワード:「ワクワク感」「公平さ、オープンさ(=誰もが主役になれる)」「なめらか(=障壁を取り除く)」
- →キーワードからどうロゴ・世界観に落とし込むか:「よりビビッドに(=ワクワク感)」「形をシンプル・フラットに(=公平さ、オープンさ)」「角をとる(=なめらか)」という方向性に(=障壁を取り除く)」
- これまでとこれからのメルカリの「イメージ」を、他のブランドに例えるなら…
- これまでは「ファッションセンターしまむら」だったが、これからは「IKEA」
- 重視するのは、アップデートしつつ敷居を高くしすぎないこと
- 方向性が決まったら、デザイナーチームでロゴを作成し、提案
- 多数の案を作成し、その中から3案にしぼって提案
- ロゴそのものと展開案(モックアップ)を見せながら、経営陣と協議
- ロゴの形状に加え、色や「m」の形、ロゴタイプも調整
- (最終案決定までに1ヶ月くらいかかった
- 最終案の決め手
- 六角形(立方体)ロゴと四角形ロゴでは、六角形ロゴのほうが既存のメルカリのイメージにも近いためそちらを採用(四角形ロゴは「フラットさ」はあるが、平凡で印象が薄い)
- 斜めのmと普通のmのどっちにするかでは、普通のmでは印象に残りにくいと判断し、あえてデザインのセオリーにはそぐわない(特にUSで評判が悪かった)斜めのmを採用
- かっこいいことも犠牲にはしなかった。自分が身に着けたいものを選んだ
- ロゴが決まったら、次はロゴの適用(リリース)。これがとにかく大変だった…
● ロゴのリリース
- ロゴリリースまでのプロセス
- ①リリースプランを考える
- ②変更範囲の洗い出しと切り分け
- ③担当者を割り振ってまかせる
- ④デザイン素材作成
- ⑤ブランドガイドライン作成
- ⑥ロゴの反映作業
- ⑦LP作成
- ⑧リリース
- リリースプランについては、ロゴ変更はあくまで自社都合の話なので、自社サイトで告知するにとどめた
- ロゴの決定からリリースまでは、実質1ヶ月しかなかった
- →このため、ロゴの適用をどこまでやりきるかは、現実的に可能な範囲でやることにした(プロダクトはきっちり変える、広告はしばらく新旧ロゴ併用、などの基準を決めた)
- なぜLPをつくったか
- →ロゴの変更理由や新しいロゴの世界観を端的に表現したかった
- ロゴムービーで、ロゴがさまざまな形にモーフィングしていたり、さまざまな要素(アイコン)があったりすることで、プラットフォーム感を表現(トップページのロゴムービーはPARTYディレクション)
- 失敗談
- リリース日がズレた問題:ロゴ変更済みのアプリのリリース日が1日前倒しになったが、LPや動画の進行の都合でプレスリリースは予定通りに進めたため、リリースが一日ズレてしまった
- アイコンセンタリングあやふや問題:ロゴのセンタリング基準を厳密にガイドライ化していなかったため、作業者によってセンタリング具合が異なってしまった
- LPリリース後に不具合多数発見:かなりタイトなスケジュールで開発していたことで、社内QAが不十分な状態でリリースされた結果、社内から大量のフィードバックがありその対応に追われた
- 失敗からの学び
- →状況に流されるよりインパクトを出すことを重視する:リリース日を伸ばす等、思い切った意思決定をすべきだった
- →パブリックに触れる前に社内の目を通す:社内テストをリリースプロセスに含める
- →基本わかるでしょ、は通用しない:決めごとやガイドラインはちゃんと周知する
- 今後の天保
- 現時点ではまだ、ロゴを変えただけにすぎない
- メルカリを生活のプラットフォームとして認知されるブランドにすべく、あらゆる面において「メルカリ」をアップデートしていくことを目指す
Session 2. トークセッション by Takram/PARTY/mercari
- 田川 欣哉:Takram / 代表
- 弓場 太郎:Takram / リードデザイナー
- 川村 真司:PARTY / クリエイティブディレクター, 共同創設者
- 井上 雅意:メルカリ / CXO室デザイナー
● なぜこのチームができたか?
- (井上)メルカリという組織が大きくなる中で、社内にクリエイティブディレクターが不在だったことが課題としてあり、外部から有識者を招きたいと考えていました。とくに、スピード感をもって一緒に進めていけるかを重視していました
- (田川)もともと代表の山田進太郎さんとは十年来の付き合いで、ある時山田さんから「メルカリのデザインの今後は、人が増えるのでカオスになることが予想されるけどどうしたら……という相談をされて。そこで、CXO室という専門組織をおいたり、横軸で動くデザインマネージャーを置いたりすることを提案し、それをぜひやろうということになりました。なのではじめはずっとデザイン組織がどうあるべきかを話していました
- 一般的にデザイナーはプロダクト系(UX/UIとか)とコミュニケーション系(アドとか)に別れがちだが、今回はその分離をなくしたいと考え、縦串の機能と横串の機能の両方をチームに組み込みました
- メルカリはこれから、Googleを始めとした海外企業と渡り合うくらいになるそうなので、デザインチームも、これから3年くらいかけて「世界で戦える」レベルにしなきゃいけないと思います
- (井上)とくにPARTYにとっては無茶振りだったと思うが、なぜ仕事を受けてくれたんですか?
- →(川村)もともとは田川さん経由で紹介されましたね。受けようと思った理由は、長期的なブランディングに携われるというのがオモシロイと思ったからです。分離しがちなビジネスとデザインを一緒にできる、そうした組織をつくることに携われる、良い機会だと思いました
● ロゴタイプへのこだわりについて
- (弓場)私がプロジェクトに加わった時点で、書体は「Azo Sans」を使うという方向性が決まっていたのでそれをベースに考えました
- (弓場)旧ロゴを分析すると、いまのロゴデザインのトレンド(GoogleやAppleなど、ジオメトリックサンセリフが流行っている流れ)とはちょっと違う印象がありました。今後のミッションで、公平性やフラットさという目指すというのがあるのなら、いまの世界の潮流とあっているし、この流れに乗っかってもいいのではと思い、その方向性で考えていきました
- ロゴタイプの細かい話(一例)
- メルカリの山型の「m」は特徴的なので、ここはキープ
- eのカウンターの広さをどれくらいにするか、を終筆のカットを斜めにするか縦にするか、などでパターン出しして検討
- aの形状についても、Azo Sansのaは縦のスリットが浅くて「mercori メルコリ」に見える懸念があったので、そう見えないように調整
- (文字愛トークはまだまだ続きそうだったが時間の関係で打ち切り)
● LPの制作裏話
- LP:Hello New Logo!
- (川村)静止画のロゴだけでは、デザインコンセプトの「なめらかさ」等が表現しきれないというのがあったので、ロゴが主役になるモーションをつくることにしました。それがLPトップにあるムービーです
- ちょうどチームに加わったばかりだし、いいところ見せなきゃというのも少しありました笑
- ムービーに出てくる各種アイコンは、メルカリのデザイナーたちが超チームワークを発揮して、ちょっぱやで作ってくれました
- ムービーの構成自体はオーソドックスで、それほど複雑なことはしていません。気をつけたのは、「上から」ではなく「友達感覚」のイメージであること。ロゴデザインの方向性をシンプルにしたからこそ、アイコンなどで多様なデザインができるようになったと考えています
- (弓場)LPのコーディングはTakramが担当していて、Takramのデザイナーがロゴのモーフィングなどもサクッと作って実装しました
- Webフォントの日本語はたづがね角ゴシック(Monotype)です。Monotypeの方と連携して進めました
- リリースまでの期間は短かったですが、いろいろやれたと思います
● 今後の取組について
- (井上)メルカリとしては、他社がやっていないことをどんどんやりたいです。ここまでやるのかということまでやりたいですね
- (田川)経営陣と話す中で、メルカリは今後のエンジニアとデザインの比率を6:4くらいにしたいと思っているという話がありました。なので今後もメルカリはUXやAestheticsを磨き続け、組織としても個人としてもアップグレードしていかなきゃいけないと思います
- メルカリは、とにかく早い。スピード感にはTakramもPARTYも驚いています。このスピードでこれからもアップグレードできるといいと思います
- (川村)今後は、メルカリがどういうペルソナや空気感をもったらより広く愛されるようになるかを考え、アイコニックなブランドにしていくための「あの手この手」を一緒にやっていきたいです
- (井上)やりたいことはたくさんあるが、いかんせん人手が足りないですね笑
- (弓場)僕はぜひ、コーポレート書体をカスタムで作りたいです。コーポレート書体を創るというのがトレンドというのもあるし、これを創ることでデザインのクオリティも変わると思うというのを、ジョインした初日から言い続けています笑
● 結局、なぜブランディングをするのか
- (田川)ブランディングがはっきりしていない会社は、採用も商売もうまくいかないと感じています
- 今の時代、いかに自分にあったものを摂取するかが重要です
- 自分にとっていいものが自然と寄ってくるようになる=「下駄をはける」状況にしたいので、ブランディングを行うのだと思います
●(会場質問)ブランディングを行うには経営コストがかかると思うが、そこをどう説得したか
- (井上)そこはまさに、これからの課題だと思っています。ブランディングで今後何を行うか、いつまでに何をして何を実現するか、いままさに話を進めています
- (田川)経営者視点でいうと、経営において投資すべき点はたくさんあるんですが、デザインやブランディングにかける投資って、絶対額は実はそれほど大きくないんですよね。エンジニアを100人雇うとか、工場を作るとかに比べれば。失敗して実害があるわけでもないですし
- また、デザインへの投資は実は影響範囲が広い=レバレッジが効くことでもあるので、やらない理由はないという考え方ができます
- デザインへの投資ROIが実はいい、というのは上場企業の経営陣の中でも共通認識と言えるかもしれません
- (川村)こういう未来にしたいという夢を描けることが、デザインの強みだと思います。ロジックを積み上げるより、ぱっと絵で見せるほうが伝わるというように。四の五の言わずにいいものを作って見せれば、説得には苦労しない、というか近道だと思いますね
●(会場質問)3社共同プロジェクトを進める中で、ハレーションはなかったか。あったとしたらどんなことがあったか。なかったとしたら何故なかったと思うか
- (井上)最初からチームっぽく進められていたので、実はハレーションはなかったかなと思います。外から来た人という意識がなかったです
- (弓場)Takramも、企業文化としてプロセスなどを積極的に共有する方針なので、そこでも苦労はとくにしませんでした
- (田川)あとそもそも、ケンカをしない人たちをアサインしたというのもあります。スピードがとにかく早いので、コミュニケーションがスムーズでないと厳しいと思っていました。また、メルカリがユーザーセントリックな文化なので、そこにマッチする人かどうかも重視して、「自分の表現をしたい」という欲求が強い人は意図的に避けました
Session 3. Beer bash by mercari designers
(あまり聞けなかったので、後日スライド公開されることを期待しています)
参加した所感
印象的だったのは、「チームをつくるときにケンカをしない人たちをアサインするよう気をつけた」というお話。スピード感をもってプロジェクトを進めるためには、そういったところに気を使うのはやっぱり必要なのかなあと思いました。