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異所性蒙古斑と私。

 赤ちゃんの頃、お尻に青い蒙古斑があったのを覚えている人はいるだろうか?

 たいていの人は小学校に上がるころには消えてなくなるアレである。
 しかし、私はなぜかそれが消えずにずっと残っていた。
 今ではかなり色素が薄くなって、じっくり見ないとわからないくらいにはなったが、若いころはなかなかにくっきりとお尻に青あざが浮き出ていて、それが嫌で仕方なかった。

 どうして自分の蒙古斑だけ消えないんだろう、とずっと思っていたが、それがいわゆる一般的な蒙古斑とは違う、異所性蒙古斑であると知ったのは、大人になってからのことだった。

 普通の蒙古斑はたいていお尻にできるが、異所性蒙古斑はお尻に限らず身体のどこにでもできる。もしそれがお尻ではない場所にできていたら、私も親も、もっと早くにそれが普通の蒙古斑じゃないことに気づいただろうが、たまたまお尻にできていたため、それが異所性蒙古斑であることに気づかなかったのだ。

 お尻なので、服を着ていればもちろんわからない。
 しかし、修学旅行などで他の女子と一緒にお風呂に入る時、お尻を見られるのが憂鬱だった。なのでタオルで隠して、こそこそと隅っこで身体を洗い、湯につかるのもそこそこに退散するしかなかった。
 まあ実際のところ、他人のお尻なんて、誰もそんなまじまじと見やしないのだから、気にしすぎだったのかもしれない。が、当時の私はいわゆるいじめられっ子というか、何かといじられるタイプだったので、それを他の女子に見られたが最後、ネタにされるのはわかり切っていた。

 そんなこんなで思春期も忌々しい蒙古斑とともに過ごし、成人後も恋人らしい恋人もいないまま(ストーカーっぽいものはいたがそれはまた別の話)30代を過ぎたころ、夫と会った。
 結婚したらいずれその蒙古斑を見られるのはわかっていたので、指摘される前に自分から冗談ぽく、「私未だに蒙古斑があるんだよね~アハハ」みたいに話を振ると、夫は「へえ~そんな人もいるんだね」とだけ言ってそれであっけなくその話題は終了した。拍子抜けするほどあっさりした反応で、それが逆に私を安心させた。
 自分が気にしているほど、他人はそんなことは気にしないのだと。

 その後、生まれた息子のお尻には、見事なほど広範囲のでっかい蒙古斑がくっきりと浮かび上がっていた。これがもし成人後まで残っていたらかわいそうだなあと私はひそかに心配したが、幸いなことに、息子のそれは一般的なものだったらしく、小学生に上がるころにはきれいさっぱり消えてなくなった。

 やはり蒙古斑というものは、普通はこんな風に消えてなくなるものなんだ、と私は感動した。赤ちゃんの時はあんなにくっきりしていたのに、今の息子のお尻にはその痕跡は全くない。きれいなものである。

 正直、うらやましいと思いつつ、今ではすっかり色の薄くなった自分の蒙古斑を鏡に映して眺めながら、どうせもう誰に見せるわけでもないのだから別にいいか、と気楽に考える私なのであった。

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