この星の光の地図を写す
というタイトルの、
石川直樹さんの個展に先日ふらりと立ち寄った。
展示スペースはひとつずつカーテンで区切られていて、
次の部屋に足を踏み入れる度「うわあ・・・」と声が漏れた。
白や赤や青といった色、それに暗さや自然に入る光を見事に取り入れた展示の手法はとっても魅力的で、
個展を見に行って、「お金を払ってでももう一回、また、訪れたい。」そんな風に思ったのは正直初めてだった。
石川さんが魅了されたという、ミクロネシアの伝統航海術や世界各地の壁画は、民俗学を専攻していた私の知的好奇心をくすぐった。
個展を見終えて、迷わず石川さんの著書を購入した。
「この地球を受け継ぐ者へ 地球縦断プロジェクト「Pole to Pole」全記録」
読み終わるのがもったいなくて、
毎朝の通勤電車で少しずつ、少しずつ読み進めた。
北極から、北米、中米、南米、そして南極点へ。
プロジェクトのメンバーが人力で地球を縦断する10カ月間の記録が、当時22歳だった石川さんの視点から詳細に綴られている。
通勤電車に揺られながら、私は「旅の疑似体験」をしていた。
彼らの歩いた北極の大地やそこで出会ったシロクマ、北米のどこまでも続く一本道、中米の雑多な市場、南米の荒野に想いを馳せた。
南極点に到達した時の、石川さんの言葉が強く心に残っている。
「極点の向こうにも同じ空が広がっていた。風は地球をぐるりと旅しているように思えた。この地球に地の果てなんてなかったのだ。どんな場所もどんな人間もどんな動物もすべてつながっていたのだ。空は果てしなくつづき、風は永遠に旅をつづけていく。」-この地球を受け継ぐ者へ、より
今わたしが立っているこの場所も、地球の裏側のあの場所へつながっているということ。
そう思ったら、なんだかどこへでも行けるような、どこか遠くへ行ってしまいたいような、不思議な気持ちになった。
人間はこの地球で、すべての自然と、生き物たちと、共存しているということ。
私も忘れていたのかもしれないと思った。
忘れていた、というより、意識していなかった、という方が正しいかもしれない。
この個展と本との出会いは、私の毎日に小さな波風を立ててくれたように思う。
私と同じように、心を揺さぶられ、この地球に想いを馳せる人が、ひとりでも多くいたら良いな、と思う。
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