旅の終わり、高松で。
高速船が、高松港に到着した。
12月の日暮れは早い。
さっきまで水平線に見えていた太陽はすっかり沈み、夕闇がだんだんと濃くなっていく。
この日は、kinco. hostel + cafe さんに宿泊。
急いで荷物を置いて、楽しみにしていた仏生山温泉へ。
ことでんの駅で、温泉乗車入浴券を買う。仏生山温泉最寄駅までの往復分と、温泉の入浴券まで含まれていてとっても便利なきっぷだ。
旅先で雰囲気の良い日帰り温泉に出会えると、なんだかほっとするのはなぜだろう。
久しぶりの広い湯船に肩までしっかり浸かり、今日一日歩き回った足の疲れを癒す。
翌朝、楽しみにしていたホステルの朝ごはん。
瑞々しい野菜たっぷりの朝ごはんをいただき、
旅の最終日はことでんに乗ってこんぴらさんへ向かうことにした。
深紅のシートに深く腰掛けて、過ぎてゆく窓の外の景色をただ眺める。がたんごとん、電車の揺れが心地よくて。背中にあたるお日さまの光が暖かくて。旅先の電車で少し眠るのは、これ以上ない贅沢だと思う。
こんぴらさんの参道には、たくさんのうどん屋さんが並んでいた。
どこまでも続くように思える石段を、少しずつ、少しずつ登ってゆく。
前日、直島で一日中自転車を漕いでいたからか、正直足は筋肉痛でパンパンだ。
ひとり旅だから、登るのをやめてもいいし、最後まで登ってもいい。全部自分で決めて良いのだけど、結局息を切らしながらも階段をすべて登り切った。
ふらふらと表参道まで戻ってきて、とりあえずお昼を、と目に入ったうどん屋さんで食べた肉うどん。いつもの数倍美味しく感じた。
うどんを食べたあとは琴平を離れ、ローカル電車に乗って高松市内へ戻る。
少しずつ天気が崩れ、雨も降り始めた。
高松市美術館や行きたかったお洒落なカフェをめぐり、のんびりと最後の旅時間を過ごす。
旅の最後に、気になっていた喫茶店へ向かった。
静かで広い店内。隅っこの席に腰掛けて、温かい紅茶をいただく。
喫茶店は、不思議なことにどこであっても喫茶店特有のゆるい空気が流れていて、心も身体もゆるりほどけていくような気がして好きだ。
名残惜しい気持ちを抱えながらも、足は高松空港へと向かう。
空港に着いて、最後に一杯だけ、と再び讃岐うどんをすすった。
コロナ禍になってめっきり飛行機に乗る機会も減ってしまい、二年ぶりの飛行機にいつもよりも心が高鳴る。
保安検査場や展望デッキ、搭乗の案内や機内の雰囲気にいちいちワクワクドキドキしてしまう浮ついた私を乗せて、飛行機は定刻を少し過ぎ高松空港を出発した。
こうして、長いようで短い三泊四日のひとり旅は終わりを告げた。
長らく旅をしていなかったこの二年。
家の心地よさを知った。日々の暮らしの大切さを知った。
それでもやっぱり、旅が好きな気持ちは変わらない。
日本も、世界も、きっとまだ私の見たことのないたくさんの素敵なもので溢れている。
自分の知らない街を歩くこと、初めての食べ物を食べること、見たことのない景色を見ること。
その楽しさも喜びも全部忘れないように抱きしめて、今日も明日も日々を生きていく。