いつか住みたい街との出会い。
瀬戸内ひとり旅の途中、いつか必ず住もうと心に決めてしまうくらい、好きな街と出会った。
それが、岡山県玉野市。
瀬戸内海に面したその街には港があり、毎日たくさんの船が到着したり、旅立ったりしている。
空港も大好きな私は、おそらく旅の発着地点になる場所に心惹かれてしまう性質があるのだろう。
夜の宇野。
スタイリッシュな焼き鳥屋、炭ハバキさん。
串はもちろん、お宿のお姉さんに勧められて食べた大根おろしが最高だった。
お宿はuno nidoさん。
静かで暖かくて、とにかく居心地の良かったこちらのお宿。シンプルだけど質の良い、家具や寝具が本当に素敵でした。
夜寝る場所が、慣れない土地で一晩を過ごす場所が、安心できる場所であること。心がほっとゆるむ、一息つける場所であることは、旅するうえでなによりも大切だと思う。
爽やかな宇野の朝。
冬特有のつんとした冷たい空気が心地よい。
ボリュームたっぷりの朝バーガーをいただいたあとは、belk 街さんで朝のコーヒータイムを。
お宿から徒歩圏内だけで、こんなに素敵なお店がたくさんあることに感動してしまう。
朝早かったからかカフェのお客さんは私ひとりだった。
窓際の席に座り朝の光を浴びながら、深煎りの珈琲をいただく。
長机に落ちる影が少しずつ動いていき、机の端っこまで影が落ちるのを見届けて、次の目的地へ向かった。
バスとタクシーを乗り継いでたどり着いたのは、瀬戸内海を見下ろす丘の上のカフェ、belkさん。
窓際の席に座ると、目の前にはどこまでも青い空と瀬戸内海が広がっていた。
日差しはぽかぽかと春のようで、十二月だけれど冷たいレモネードを注文する。レモネードの淡い黄色と海の青のコントラストに、ぼんやり遠い夏の記憶が蘇った。
時折、窓の外をパラグライダーが横切っていく。
静かな音楽の流れる店内で、通り過ぎてゆくパラグライダーの影をぼんやり眺めていると、今いる場所がどこなのか一瞬わからなくなるような不思議な感覚に陥った。
二杯目のアイスカフェオレを頼んで、ずっとこのまま今が続けばいいのに、と思わず叶わぬ願いごとをしてしまう。
カフェを出て、少し外を歩く。
カフェの周りは散策路になっており、観光客に餌付けをされているのか、可愛らしい猫たちがゴロゴロと喉を鳴らし昼寝をしている。
散策路の途中で、大きく視界が開ける場所があった。
遥か遠く、蜃気楼のように瀬戸大橋が見える。
空も海も、一面ぜんぶが青い。夢のように青い。
すーっと鉛筆で一本の線を引くように、船が目の前を横切っていく。
これが瀬戸内の青か…晴れの国おかやまか…となんだか無性に感動してしまう。
窓を開けたらすぐそこにこの景色がある場所に、いつか住んでみたい。
旅するんじゃなくて、ここに腰を据えて暮らしてみたい。
旅をしていて、このままここに暮らしたい。と思える場所はそう多くはない。
岡山県玉野市。瀬戸内海に面したすてきな街。
あたたかく満たされた気持ちで宇野港を出航し、船は直島へ向かう。