緑薫る、初夏の新潟へ。
五月の初め、ふるさと新潟へ帰省した。
前回訪れたのは冬まっさかりの年末年始。
数ヶ月ぶりに訪れたその場所は、もうすっかり春。
どころか、春を通り越して初夏の陽気だ。
よく晴れた連休の中日。家族で小さい頃毎年訪れていた、笹川流れまでドライブした。
窓の外、空も青もどこまでも青い。夏を先取りしたみたいに太陽がまぶしい。
海に向かう道中、直売所でいちごを買ったり、キンパを買ったり。ドライブの途中の寄り道も醍醐味だ。
たどり着いた浜辺は思ったよりも風がつよくて、わーきゃーと騒ぎながら椅子とテーブルを組み立てる。
椅子の背にだらりもたれかかって、空高く飛ぶ鳶を眺めていると、ありきたりだけれどいろんな悩みごとがちっぽけに思えてくるからふしぎだ。
砂浜に座り込んでずうっと砂をいじっている小さな女の子。なんだか昔の自分を見ているようだった。
帰り道、また別の海岸に立ち寄って日没を眺めた。
広い広い砂浜に、昼間とは違う少しひんやりとした潮風が吹いている。
遥か遠く、水平線に一隻の船が見えた。
まばゆい橙色の光を放つ太陽が、ゆっくり、ゆっくりと水平線に沈んでゆく。
ざざ、ざざん、と寄せては返す波の音を聴く。
いつのまにかあんなに明るかった太陽は見えなくなって、夕暮れの空がまた少しずつ色合いを変えてゆく。
夜のはじまりの色をした空に、すうっとひとすじ、飛行機雲が伸びていた。
すっかり日は沈み、車は帰路に着く。
わたしはもう大人なので、帰りの車で寝たりはしない。けれども。
ただぼんやりと、前に座る両親の他愛もない会話を聞いていると、こんがりと日に焼けたちいさなおさげの女の子に戻ったような気持ちがしてくる。
真っ暗な車内とすれ違う車のテールランプ、街の明かり、うっすら流れる音楽。
夜のドライブは、昔からずっと大好きだ。
次帰る時は、どんな景色を見せてくれるだろう。
日本中、世界中どこにいて、どんな暮らしをしていたって。
変わらずここはわたしのふるさとだ。
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