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【書評】お江戸の経済事情

「水道の水を産湯に浴びて」育つ江戸っ子。
東国の地に出現した巨大マーケット江戸は、金銀銭の三貨幣による変動相場制と流通網を作るなど独自の市場経済と町人文化を作り上げた。
本書では、江戸の社会経済史について「江戸経済の特徴」と「江戸っ子」「江戸文化」「都市問題」「災害と復興」といった事象をテーマに広く浅くを「モットー」として語られている。

本書の著者

小沢詠美子著「お江戸の経済事情」東京堂出版刊
2002年5月20日発行

本書の著者の小沢詠美子氏は、1961年、東京都中央区生まれ。1987年、成城大学大学院文学研究科日本常民文化専攻博士課程前期修了。神戸大学大学院経済学研究科助教授などをへて、2004年から成城大学民俗学研究所研究員、同学非常勤講師。

本書の構成

本書の章構成は以下の通り。

Ⅰ 江戸経済の特徴
1 金・銀・銭の経済
2 侍たちの都市
3 おとこの町・江戸
4 巨大マーケットの出現
Ⅱ 江戸ッ子経済
1 江戸ッ子登場
2 金ばなれがよい江戸ッ子
3 産湯に使う水道の水
4 本領は「いき」と「張り」
Ⅲ 江戸文化をめぐる経済
1 江戸文化の萌芽―元禄文化
2 江戸文化の開花―宝暦・天明文化
3 江戸文化の繚乱ー化政文化
4 江戸文化の結実ー嘉永文化
Ⅳ 都市問題と経済
1 町のしくみと運営費
2 町屋敷経営の実態
3 ごみとリサイクル
4 困窮する人々
Ⅴ 災害のもたらす経済
1 防火への試み
2 土蔵・穴蔵の普及
3 救済と復興

本書のポイント

本書は「都市における社会や経済のあり方を考えるとき、江戸をひとつのモデルとしてケーススタディに活用」してもらうことを目的にした「都市社会経済史」の入門書という位置付けの書として書かれている。

米穀流通のしくみや元禄から嘉永に渡る江戸文化の変遷と発展、ごみ処理費用と繁栄するリサイクルビジネス、防火対策と救済・復興対策など、江戸経済の事象が幅広く語られており、江戸の町の歴史や経済に興味がある方にとって楽しめる内容となっている。

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