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【書評】戦国大名の経済学

中世の日本の経済活動は、米作を中心とする第一次産業に偏っていたことから、日本経済は「農業生産の効率性や収益に大きく左右される社会、すなわち気候に決定的な影響を受ける社会だった」そうだ。
近年の気候変動の自然科学的手法による分析では、15世紀の日本は、深刻な寒冷期であったと推定されている。この時期、日本列島の各地では干害や大雨などによる洪水も多発するなど、多くの地域でたびたび飢饉に見舞われている。
「とすれば、長期的な気候変動も、応仁の乱のような大乱の発生にはなんらかの影響をあたえたものと思われる。」と著者は述べている。

本書は、戦国大名の領国経営を考えることを主題とし、戦国大名が「組織運営に必要な収入をどうやって得、また必要な支出はどのようなものに対して行われていたか」を史料から読み解かれた書である。

本書の著者

川戸貴史著「戦国大名の経済学」講談社刊行
2020年06月17日発行

本書の著者の川戸貴史氏は、1974年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科博士後期課程単位修得退学。博士(経済学)。現在、千葉経済大学経済学部准教授。専門は、貨幣経済史。

本書の章構成

本書の章構成は以下のとおり。

序章 戦国時代の経済と戦国大名の経営
第一章 戦争の収支
第二章 戦国大名の収入
第三章 戦国大名の平時の支出
第四章 戦国大名の鉱山開発
第五章 地方都市の時代ーー戦国大名と城下町
第六章 大航海時代と戦国大名の貿易利潤
第七章 混乱する銭の経済ーー織田信長上洛以前の貨幣
第八章 銭から米へーー金・銀・米の「貨幣化」と税制改革
終章 戦国大名の経営と日本経済

本書のポイント

自立した権力となった戦国大名にとって、最も重要なことは安定した収入を確保することだった。その理由は、軍事力の維持・増強はもとより、領内に暮らす家臣や百姓などの生計を成り立たせるための行政を運営することであり、絶えず公共投資を行うことが必要とされた。
本書では、こうした環境下にあった戦国大名の領国経営に関して、インフラ整備、鉱山開発、商業政策、貿易政策、税制徴収システムの構築(貫高制、石高制など)や貨幣政策の経済政策について言及されており、戦国大名の経済の関わり方が理解できる書といえる。

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