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【書評】シリーズ・中世関東武士の研究 第17巻 下総千葉氏

平忠常に始まる千葉氏は、源頼朝の信頼を集めた常胤以来、中世の世に下総に勢力を保ち続けた武士団だ。
本書は下総千葉氏の研究論文を13本収録されており、南北朝~戦国期を中心に、鎌倉中期の千葉氏の経済構造や妙見信仰なども含めた構成となっている。これまでの千葉氏研究の状況を知ることできる好著である。

本書の編著者

石橋一展編著「シリーズ・中世関東武士の研究 第17巻 下総千葉氏」戎光祥出版株式会社刊
2015年10月20日発行

本書の編著者の石橋一展氏は、1981年、栃木県生まれ。千葉大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程単位取得退学。現在、野田市教育委員会指導主事(2022年11月時点)

本書の章構成

本書の章構成は以下のとおり。

総論 下総千葉氏の動向と研究史(石橋一展)

第1部 鎌倉御家人千葉氏をめぐって
Ⅰ 鎌倉中期における千葉氏の経済構造に関する一考察(湯浅治久)
Ⅱ 千葉妙見をめぐる問題(土屋賢泰)

第2部 南北朝・室町期における下総守護千葉氏
Ⅰ 建武期千田庄動乱の再検討(遠山成一)
Ⅱ 勅撰歌人となった千葉氏胤(外山信司)
Ⅲ 香取社の造営と千葉一族(小川信)
Ⅳ 室町前期における下総千葉氏権力構造についての一考察(遠山成一)
Ⅴ 千葉介胤直と妙光寺(川戸彰)
Ⅵ 千葉城跡概説(簗瀬裕一)

第3部 戦国期千葉氏とその周辺
Ⅰ 中世東国における千葉氏の位置と本佐倉城(市村高男)
Ⅱ 千葉胤富・邦胤の花押と印判に関する一考察(滝川恒昭)
Ⅲ 岩富原氏の研究(遠山成一・外山信司)
Ⅳ 芳桂院(高橋健一)
Ⅴ 原文書に見る森山城(外山信司)

第4部 下総千葉氏関連資料
下総千葉氏系図(石橋一展)
下総千葉氏略年表(石橋一展)

本書のポイント

「鎌倉中期における千葉氏の経済構造に関する一考察」では、「日蓮遺文紙背文書」に出てくる鎌倉中期の金融業者である借上(かしあげ)の実態・機能と所領支配・負担関係のありかたが検討されており興味深い。
「千葉胤富・邦胤の花押と印判に関する一考察」では、胤富・邦胤期の花押と印判を時系列に並べて比較することで、胤富・邦胤の背景を読み解く作業が行われており、歴史研究の地道な積み上げの苦労と史料の解読の難しさが伝わってくる。


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