【書評】江戸 失われた都市空間を読む
本書は、江戸時代前半の江戸を重点的に取り上げ、出来上がる前の一般的なイメージとは異なる「江戸」をあきらかにすることで、江戸という近代都市の本質がどのようなものであったのかを論じた書である。
本書の著者
玉井哲雄著「江失われた都市空間を読む」平凡社刊、1986年6月20日発行
著者の玉井哲雄氏は、1947年兵庫県生まれ。東京大学工学部建築学科卒業、東京大学大学院博士課程修了後、千葉大学教授、国立歴史民俗博物館教授を歴任。現在は、千葉大学名誉教授、国立歴史民俗博物館名誉教授。
著書に「江戸町人地に関する研究」「建築の歴史」などがある。
本書の構成
序 江戸をどうとらえるか
第一部 初期江戸の町と町家
近世江戸のはじまり 草創期の江戸を推理する
角屋敷の三階櫓 初期江戸の都市景観一
表長屋の町並 初期江戸の都市景観二
第二部 江戸町の発展と町家
庇と「雁木」 江戸町のアーケード
京間と田舎間 上方から江戸へ
穴蔵と土蔵 江戸庶民の防火対策
第三部 江戸から東京へ
江戸町の繁栄と地価高騰 地域格差の発生
「表」と「裏」 町家と裏店
本書のポイント
著者の問題意識は、「江戸といっても、十七世紀前半の初期の江戸と、十七世紀後半の寛文・元禄期の発展拡大期を経た後の江戸とでは、全体の規模はもちろんのこと、都市内部の社会組織のあり方や、都市を構成する建築形態に至るまで決定的といえる違いがあり、その変化発展の過程こそが江戸という都市を考える場合に重要な意味を持つ」というもの。
この問題意識に立ち、江戸の町割、江戸城下を構成していた町、「そしてその基礎である町屋敷、さらにその中に建てられていた表店、裏店などの住居という具体的なもの」を明らかにして、それらがどのような意味を持っていたのかを「建築史学」の立場からの「都市史研究」により論じられている。
江戸という都市の変化発展の過程を考える上で、参考となる一冊である。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?