環境によって姿を変えるサンゴ
イノカチームでは、海外のアクアリウム情勢に関して日頃より調査を行なっております。
本日はそんな中から、ReefStockというイベントで行われたChalias氏による講義を紹介します。
Chalias氏は、モンペリエ大学で海洋水産養殖を学んだあと、インドネシアを拠点にサンゴの養殖技術の研究をされている方です。様々なサンゴの養殖に成功し、インドネシアからアメリカなどにサンゴを供給しておりました。
そんな、サンゴ博士であるChalias氏による今回の講演のテーマは
「海から水槽に移るとき、サンゴが姿を変える。」
というものです。
海から水槽に移るとき、サンゴが姿を変える。
では、具体的に話していきます。
多くのサンゴは、自然から採取されて、水槽までやってくるわけなのですが、
なんと、海にいるときと、自宅の水槽にいるときでサンゴが姿を変えていることがわかったのです。
---------------スライドから引用-------------------
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写真のように、流れをとても強くすると、平らな形に成長し、流れを弱く光を強くすると、細長く成長をする、というように、環境によってサンゴが違う形に成長していくことがわかっていると、Chalias氏は言います。
では、なぜ姿を変えるのか?
以下の要因があげられています。
・自然と比べて、光や水流が異なる
アクアリウムの照明は太陽光と違って青味が強く、またアクアリウムではそこまで強い水流を引き起こせません。
・光合成主体になる
自然界では、サンゴはプランクトンなどを捕食するのですが、アクアリウムはプランクトンが少ないため、は光合成がメインのエネルギー源となります。
・アクアリウム内では水質が安定している。
海では水質が激しく変わるのですが、水槽内では基本的に安定しています。
・サンゴにとっての敵がいない
サンゴは自然界では様々な外敵と戦っているのですが、アクアリウムではそれらを基本的に駆除してサンゴを守ることができます。
・有性生殖により増えることがほとんどない。
実はサンゴも卵を産むのですが、アクアリウムで卵を産んだという話はほとんどききません。(サンゴが水槽内で卵を産まない原因が解明されれば、サンゴの陸上養殖につながるような画期的な発見になりますが、現状ではよく分かっていないようです)
・成長するためにエネルギーを使える
上に書いたことと関係するのですが、生殖活動をしないので、自分の吸収したエネルギーをすべて成長に使えるのです。
これらの環境の違いが、サンゴの姿を変えている、と考えられています。
サンゴは適応力の強い動物である。
このように、サンゴは、環境にあわせて成長することができる動物なのです。
また、この講演は
「インドネシア産、オーストラリア産の多くのサンゴは濁った水で育っている。綺麗な水じゃなければサンゴが飼えないということはない」
と締めくくっています。
基本的に「サンゴ礁」と言うと、僕たちはとても綺麗な海をすぐ思い浮かべてしまうため、サンゴは綺麗な水でしか生きられないのと考えられているのですが、
インドネシアなどの一部地域においては、濁った水の環境下でも、サンゴはそれに適応できるように姿を変えて生きてきているのですね。
サンゴは非常に適応力が高い動物なので、自宅水槽にもっと適応しやすいサンゴが今後生まれてくるはずです。
また、地球温暖化でサンゴ礁が失われていくことが懸念されていますが、地球温暖化に対しても適応できるサンゴが生まれてくるはずで、わざわざ人が手を加える必要はないのではないか?という議論もなされています。
今後、さらにサンゴ研究が進んで行くことにより、サンゴの陸上養殖が成功したり、飼育が容易で成長スピードの早いサンゴが生まれることなどを、とても楽しみに待っています。