「幸せ」と「長寿」の関係~ウェルビーイングは予防医学~
ウェルビーイングにある人は長寿になることが様々なデータからも明らかになってきています。ポジティブ心理学の創始者であるセリグマン博士も、「タバコを吸わないことによる寿命の延長よりも、『幸せ』である人の寿命の延長のほうが長い」と述べています。スイス大学の研究でも「幸せを感じている人は、そうでない人に比べて7.5年~10年寿命が長い」と示されています。
それでは、この「幸せ」について、少し考えてみたいとおもいます。
先日、このような記事を見つけました。
『世界には、人々がより健康で長生きしているような地域がある。「ブルーゾーン」と呼ばれるこれらの地域には、アメリカ、日本、ギリシャ、コスタリカ、イタリアにある』
というものです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/1a294a786a160646c89f062e76021f4a4124a755
これらの長寿な人が多いといわれる地域には、いくつかの共通点があります。それは、健康的な食事、日常的な運動、コミュニティ意識の強さ、目的を持っているというものです。
ブルーゾーンと呼ばれる長寿地域の分布図を作ったアメリカの研究者ダン・ベットナー氏によれば、長寿を保つ理由は特別な遺伝子や強い意志力にあるわけではなく、「正しいことを長く続け、間違ったことを避け続けることが相互に作用したため」とされています。
この「正しいこと」として挙げられているものが、まさにウェルビーイングの4L×PERMAに合致していると私は感じています。
ブルーゾーンに住む人々の特徴
長寿地域に住んでいる人々が続けている「正しいこと」について、具体的にみてみましょう。
◆イタリア、サルデーニャ島
イタリアのサルデーニャ島にある村々に100歳以上の男性が数多く暮らしています。ベットナー氏がそのような村々に青いマーカーで印をつけたことが「ブルーゾーン」の由来となっています。この地域に住む男性の多くは羊飼いで、毎日山道を8キロ以上歩き、植物性素材がメインの食事をし、地元産の「カンノナウワイン」を適量摂取しています。 また、この地域は家族の絆が強く、年長者が大切にされ、家族全員が互いに支え合っていることで知られています。
◆日本、沖縄
沖縄には長寿の女性が多いとされています。この地域の人々は、豆腐や味噌、海藻などのスーパーフードを積極的に食べています。また、自分自身が社会に貢献できるという「生きがい」を持って生活しています。ここでは「模合(もあい)」という習慣があり、強い社会的ネットワークが存在しています。この模合グループは、血縁や地縁、友人などで形成され、定期的に集まり、お互いに精神的、経済的にサポートするだけでなく、単におしゃべりなどをして一緒に時間を過ごすことを大切にしています。
◆コスタリカ、ニコヤ
コスタリカのニコヤ半島では、平均所得が同国で最も低い地域ですが、平均寿命は85歳と世界でもトップクラスです。この地域の人々は信仰心や家族愛が強く、高齢者の多くは家族と同居し、知識の源として尊敬されています。ベットナー氏によると、コスタリカの人々は「プラン・デ・ビダ(人生の計画)」を持っており、それが高齢者に目的意識を与えているといいます。また、加工されていない食材を用いた健康的な食事や、カルシウムを多く含む硬水を飲み、定期的なウォーキングといった日常的なエクササイズも、長寿の重要な要因となっているようです。
◆ギリシャ・イカリア島
ギリシャ、イカリア島の住民は、90歳以上まで生きる人が多く、認知症になる人も少ないと言われています。この島は山がちな地形なので、住民はしぜんと活動的な生活を送っています。小さなコミュニティの中で社会的なつながりも強いようです。野菜や果物をふんだんに使った地中海式の食事をとり、多くの人が信仰するギリシャ正教の教義に基づいて断食が行われています。また、イカリア島では昼寝も習慣となっています。これはストレスホルモンを低下させ、心臓病で死亡する確率を下げることが分かっています。
私たちは、これらの長寿地域から、「幸せ」について学ぶことができるはずです。 これらの地域には、それぞれの食事や文化、慣習などがありますが、特に注目したいのが『良好な人間関係(Love×Relationship)』です。
75年の追跡調査で分かったこと
ハーバード大学による成人発達研究によると、75年にわたり700人の追跡調査が行われた結果、人間の幸福や健康には年収や学歴、職業などの要素が直接関係するわけではなく、むしろ「良好な人間関係」が関連していることが実証されています。
ここでいう「良好な人間関係」とは、友人の数よりもむしろ信頼できる人がいるかどうかが重要であるとされています。孤独を感じる人ほど病気になる確率が高くなり、寿命も短くなるという研究結果も得られています。
ウェルビーイングは「予防医学」
私が考える幸せの要素に「ウェルビーイング=4L×PERMA」というものがありますが、この「4L」の一つが「Love(愛)」です。この愛とは、家族、パートナー、恋人、友人、仲間、そしてペットとの愛や絆のことを表しています。
もし、家庭内で何かしらの悩みがあったとしても、恋人や友人、職場での仲間とのつながりがあれば、心に安らぎを感じることができるでしょう。また、職場の人間関係に悩んでいる時には、家族やパートナー、友人の存在が心の支えとなってくれるはずです。
大切な人たちと一緒に仕事をしたり、余暇を楽しんだり、学んだりしながら人生を共にすることは、
『ウェルビーイング(幸せ)を感じられるだけでなく、寿命にも影響を与える』
というのですから、より良い人間関係を築きながら年を重ねることは、今すぐにはじめられる「予防医学」と言えるのではないでしょうか。
ウェルビーイング・アカデミア
杉村貴子
著書:
https://www.amazon.co.jp/dp/4534059914