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日曜創作劇場「スターウォーズ」

スターウォーズを観に行くべきか、いかざるべきか。それが問題だ。

私は高校2年生、キミ。

暇つぶしに、映画を見て批評(というか、ほとんどは感想文)を書く映画研究会に所属している。

さっき、同じ映画研究会のリョウ先輩が「みんなでスターウォーズ観にいこーぜ」、と言い出した。

新シリーズ(?)が出たばかりなのは知っていたけど、リョウ先輩、なんでそういうこと、こういう風に言っちゃうのかなー。

やっぱり昨日の私への告白はドッキリなんじゃないか。

何もしなくても人の中心にいるような華やかなこのひととと、雨にも風にも嵐にも負けず日陰でも生きていける私は、なんだか釣り合わない。頼られがいのある女子なんて他にもいそーなんもんだけど。

スターウォーズとスタートレックの違いもわからない私は最近リョウ先輩以外が揃った全部員の前で「スターウォーズは一生見ない」宣言をしたばかりだった。(そしてリョウ先輩が大ファンなんて知らなかった)

「ナナ、行きます!」

と真っ先に声をあげたのは、リョウ先輩のことが好きという理由だけで映画研究部に入ったと公言し、ことあるごとに「わかんなーい」を繰り返す 女子の風上に置いちゃいけない系女子のナナだった。

「あんた新聞の原稿書いたの?締め切り昨日だよ」

「なあに?キミちゃん怖いぃ=」

「ち」

「今舌打ちしたー!」

はぁ、うんざり。

ワタシは、ナナは懐かれたら最後、骨の髄まで利用するタイプと直感でわかるので、あからさまに顔に出して拒否信号を発している。(もちろん、そんなことで凹む女ではない。)

ナナは「えへ」とか「ナナ怖い=」とかなんとか言いながら いつ行くんですか=とか聞いている。

リョウ先輩は 他の男子部員に「行くだろ、行くだろ。」と小突きながら頭数を数えてる。最後に期待を込めた目で私を見る。私は戸惑ってそらした。

「じゃ、第2土曜 午後3時、みんなオッケーだよな」

私は密かにホッとした、リョウ先輩は、「見ない宣言」をしたばかりの私の意見をやんわりと忘れてくれて自然な流れでみんなを誘ったのだ。

「キミちゃん、こないだ、スターウォーズ見ないって言ってなかったっけ〜?!」

やっぱりうんこなナナは日頃の恨みを晴らすかのように明るい口調で無邪気に聞いてきた。締め切りを守らないのはナナの方で恨みがあるなら私の方だということをすっかり忘れているらしい。

でもこうなると、ナナの思いどおり。
頑固者キャラで知られているワタシは、皆の期待に沿って、こう答えなければいけない。

「そうだよ、行かないよ。勝手に決めないでください、リョウ先輩」

はぁ、泣きたくなる。
ハマったら大変そうだから「一生みない」なんて言ったけど。
そんなの、小学生の「一生のお願い」ぐらい軽いものと相場は決まってるのに。
頑固者に生んだ、育てた両親を恨む。

部員たちは 少しざわっとなるも、そーかやっぱりという感じ。誰もが帰る支度をしている。

「ダメだ、全員で行くぞー」

リョウ先輩がキッパリ言って、再び視線を集めた。

「ほら・・・」

「スターウォーズ初心者のお前が見ておもしろいのかが、映画として重要なポイントだと思うんだよ、俺はー。」


「あと、読み応えある記事かけるのお前ぐらいだろ。なぁ?」

みんなテへとなって、確かに〜と適当に頷いている

私は嬉しさがこみ上げてくるのを悟れないように、冷静に答える。

「確かに、一理ありますね。そういうことなら。付き合います。」

「よっしゃー決まりだな。」

「じゃ、土曜日に」

ナナのちょっとつまんなさそうな顔を尻目に私は部室を後にした。

はぁ、私の文章をちゃんと読んでてくれたとは。

帰り道、嬉しさを我慢できないワタシは、もしかして顔に出ていたかもしれない。そして、自分の頑固なクセを治したい、とちょっと思ったりした。



*2017/12/17 に書いたもの。加筆すると言い訳がましくなることに気づいたので極力控えめに。「スターウォーズ」は私もそんなに詳しくないのです。ごめんなさい。初めていった頃に書いたものだと思う。勢いが良くてなんとか見れたことに単純にすごいと思った。もはや「映像・感情・宇宙アトラクション」なのだな、と思った。「ナナ」タイプは、今どきだと、「やっぱりいい子だった」という展開が多い気がしてます。この物語の短さではその良さはあまりわからないけど、多分猪突猛進で「猫・まっしぐらなタイプ」で、それはそれで良い性格だとも思う。キミは(私は)憧れるタイプの女子で、私とは程遠い。
*文系の部活動が体育会系みたいなノリだったらこんな感じかなぁ。と妄想しながら書きました。

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宮平貴子 Takako MIYAHIRA
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