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死んだじいちゃんが居候を連れてきた話(後編)

前回の続きです。是非、こちらからお読みください。

簡単に説明すると、じいちゃんがマサちゃんという男性を家に連れてきて、僕の父と叔母さんは10年近くその男性と一緒に暮らしていた。父は普通の幸せな家庭で育ったと認識していたと僕は、全然普通の家庭じゃないと認識を改めた、といった内容です。

ただ、ここまでは、父と叔母さんからの情報であり、このことについて、一番多くを知っているのは、ばあちゃんに違いない。

ここで、父と叔母さんからの情報を整理する。父と叔母さん曰く、マサちゃんは、身寄りのない男性であり、じいちゃんの子分で、肉屋で働いていて、父と叔母さんと一緒に暮らし始めて10年くらい経った時、事故で亡くなった。

ここまでで、僕が一番疑問に思ったのは、じいちゃんとマサちゃんがどんな関係だったのか、ということ。

身寄りのない方だとはいえ、家に連れて帰って来て、自分の家族と一緒に暮らすというのは、ちょっと普通じゃない。そして、父と叔母さんは、まさちゃんを子分だと言っているが、

僕が抱いているじいちゃんのイメージに対して「子分がいる」ということは、あまりにかけ離れていて、想像できない。じいちゃんは、割とおとなしくて、割と寡黙な人だった。

だから、じいちゃんとマサちゃんとの間に、父と叔母さんの認識を超える何らかの深い関係があったのでは、というのが、僕の推察だった。

ちなみに、マサちゃんは、父たち4人が暮らす家の倉庫を改造して、ベッドや家電を持ち込んで暮らしていたそうだ。

ばあちゃんによると・・・

最も多くを知っているであろう、ばあちゃんは、90歳になって、自分で歩くし、ご飯も食べるし、お酒も少し飲むとは言え、少しボケが来ている感じがある。

同じことを何度も言うし、何かをすぐに忘れる。けれども、僕ら夫婦や僕らの子どものことは忘れておらず、会いに来てくれると嬉しい、と会うたびに言うので、住まいは割と離れているけど、なるべく行くようにしている。

「ばあちゃん、マサちゃんって人と一緒に暮らしよったんやろ?」と僕。

「え?なんかい?」とばあちゃん。

「じいちゃんが、マサちゃんって人を連れてきて、一緒に暮らしよったんやろ?」と僕。

「あー、そうそう。いっつも肉を持って帰ってきて、焼いて食べよったよ。私はそれがすかん(嫌い)やったけど」とばあちゃん。

「なんで、じいちゃんはマサちゃんを連れて来たん?」と僕。

「マサちゃんはね、なんか身寄りがなかったらしいき」とばあちゃん。

「身寄りがないっち言っても、一緒に暮らすくらいやき、なんか特別な関係があったと?」と僕。

なんか、高校生の頃から知っちょったみたいなことを言いよったよ」とばあちゃん。

ばあちゃん曰く、じいちゃんとマサちゃんとの出会いは、じいちゃんが田川農林高等学校に通っていた時らしい。通学途中の公園で、いつも遊んでいる少年がマサちゃんだった。

マサちゃんには家族が居なかったので、じいちゃんはマサちゃんを見かけるたび、遊んであげていたようで、マサちゃんもじいちゃんにかなり懐いていたそうだ。

じいちゃんは高校卒業後、農協か共済に就職した。そして、ばあちゃんと結婚して、父と叔母さんを授かり、4人で暮らしていた。そのあと、なんかのきっかけで、マサちゃんと再会したのだそうだ。

結論:じいちゃんはいい人だった

じいちゃんが、マサちゃんに再開した際、マサちゃんは、まだ、結婚しておらず、身寄りのないままだった。そして、マサちゃんは、じいちゃんに、じいちゃんと一緒に暮らすことはできないだろうか、とお願いしたらしい。

じいちゃんは、所謂、いい人だったので、マサちゃんからのお願いを断らず、家に連れて帰り、「今日から一緒に暮らすから」と家族に言い、家の倉庫をマサちゃんの部屋として貸してあげたそうだ。

ばあちゃん曰く「じいちゃんは人が良かったから、断れんやったんと思うよ」と言っていた。

「人が良いから」か、と僕は思った。

僕がじいちゃんだったら、どうしただろう?と思う。

おそらく、気にかけて、マサちゃんが家を探したりするのを色々と手伝ったりはするだろうが、家に連れて帰って、倉庫を貸してあげる、ということまでするかは、マジで分からない。

父と叔母さんとばあちゃん、そして僕ら

家族というのは、不思議だなあ、と思う。親と子どもの集合体であるけども、みんなそれぞれに色んなものを抱えているし、様々な時間軸の中で色んな人と関係していてる。

ばあちゃんは「もう90歳にもなったし、いつ死んでもいい。孫の顔を見れたし」と僕に言うので、そこにいる家族みんなが「いや、ひ孫やろ!」とツッコミをいれる。

ばあちゃんは、耳が少し遠いので、そのツッコミが分かっているのか、いないのか、よく分からないが「うん、うん、そうかい」と笑いながら言った。ばあちゃんは、幸せであるそうだ。

それを踏まえたところで、僕が思うのは、家族は大切だ、ということだ。血の繋がりがあろうとなかろうと、家族は大切だ。僕の父と叔母さんとじいちゃんとばあちゃんの4人家族は、幸せな家庭であった。

家族みんなが幸せであることが一番だ。出来たら、仲間みんなが幸せであってほしい。そういえば、ふと田川にやってきて、1年近く暮らしている芸人、エッグ矢沢の名前はマサくんだったな。


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