2018年観た映画No.1
昨年やるのを忘れていました。誰にも求められていないけど毎年恒例でやっている「その年に鑑賞した映画・漫画・音楽・小説のNo. 1を発表する」という行為をやります。
今回は映画部門です。
映画部門No.1は『マグノリア』ポール・トーマス・アンダーソン
アメリカの映画や音楽や文学が大好きなのにP・T・アンダーソン監督の映画を今まで観たことがなかったなんて本当に恥ずかしいことだと、観終わった後に思いました。
嘉麻市のイラストレーター兼漫画家のライアン に教えてもらったP・T・アンダーソン監督。早速、TSUTAYA TVに登録して『マグノリア』という作品を観てみました。
沢山の登場人物、そして、それぞれの人生
この映画の内容は複雑です。まず、ゲイの男。彼は幼い頃、大人チームと子どもチームがクイズで対決する人気テレビ番組の中で、子どもチーム側のスター回答者でした。
しかし、大人になった彼はなにもかも上手くいきません。子どもの頃にスター扱いされたために培われた大きすぎる自尊心が彼を人間的に成長することを邪魔していたのです。
多様な登場人物が織りなす物語
この映画にはゲイの男の他にも沢山の登場人物が出てきます。まず、人気クイズ番組の司会をしている男。その男はある日、ガンを宣告されてしまいます。余命数ヶ月であることを知り、絶縁している娘に会いに行きます。
その娘はドラッグ中毒で、ドラッグ無しではまともに他人と会話が出来ません。その娘に恋をしてしまった警察官は、職権濫用で彼女の家に行ってデートの約束を取り付けます。
それとは別にSEXの伝道師、認知症の老人、その老人を介護をする男、精神科に通う女などなど、とにかく沢山の登場人物達が登場し、割としっかりとエピソードが描かれていきます。そして物語がより複雑によりおもしろくなっていくのです。
3時間くらいの長い映画ですが・・・
没頭して観てしまいました。素晴らしかったです。綿密に設定された登場人物たち、綿密に計算された構成、綿密に配置された構図。とにかく綿密に作られていることが、観る人を違和感なく物語に没頭させてくれるのだと感じました。
いろいろなエピソードの中で、それぞれの登場人物は、それぞれに一生懸命人生を歩んでいます。たとえその人生が成功に満ちていようが、失敗だらけだろうが。
運もチャンスもモノにできる人はいくらでもモノにし成功を掴みます。しかし、多くの人はその運やチャンスに気づくことすらできません。運命って不思議だし、人間って不思議です。
そして人間の悪意と善意について考えてしまう映画でもありました。人が生きていく中で悪意と善意だけでは説明できないことがあります。
自分の欲望を満たすため?人の役に立つため?人はその間で揺れ動きながら生きています。警察官が職権濫用し女に会いにいくことは悪いことです。
しかし、本当に真面目で誠実なその警察官は純粋にその娘に恋をし、どうしていいか分からず、家を訪ねてしまったのです。
その出会いによってドラッグ漬けのその娘は救われるかもしれませんし、あるいは、救われないかもしれません。
善意と悪意で揺れ動きながら人は運命に操られ、様々な人生を歩んでいきます。みんなそうです。それが人間というもの。それがつまらないわけない。
深夜3時に観終わったのですが、1人で拍手しそうになりました。PTアンダーソン観たこと無い人は是非観てみてください。