大学に入学した時、世の中はmixi全盛期だった。大学のパソコンルームに入ると、そこにある、ほとんど全てのパソコンモニターで、mixiのオレンジ色のページが開かれていた。
mixiの思い出たちは、10年以上時が経った今でもmixiアカウントの中に保存されている。
mixiについて、超簡単に説明すると、
FACE BOOKが流行る前に、多くの若者が使っていた日本製のダサいSNS、である。
「国内だけの繋がりであることと」「見た目がダサいこと」が原因で、mixiはFACE BOOKにシェアを奪われた、と僕は考えている。
話を戻すと、僕はmixiに色んな思い出がある。
妻と深く知り合うようになったのも、mixiがきっかけだった。
僕は、今と同じように、毎日、拙い文章で日記を書いていた。それを読んで、僕の内面をおもしろいと思ってくれた妻がコメントをしてくれるようになったことがきっかけで、たまに会って遊ぶようになった。
さておき、mixiで出会った人とは、今でも繋がりがあったり、なかったりする。
そして、繋がりがなくなった人の一人に、えにゅっぽさん、という人がいる。
えにゅっぽ、という名前は99%、mixiでのニックネームだ。
何故、えにゅっぽ、なのか、僕は知らない。本名が榎本(えのもと)で、えのもと→えにゅもと→えにゅっと→えにゅっぽ、となったのかもしれない。
とにかく、僕がmixiにいた5年間、えにゅっぽさんはずっと僕のマイミクだった。
えにゅっぽさんは、いつも僕の日記にコメントをくれた。コメントには「感想」と「詩」の2パターンあった。
日記に対して、詩で返してくる。
えにゅっぽさんは詩人だったのだ。
えにゅっぽさんの日記には、いつも詩が投稿されていた。たまに、身の上話を書くこともあったが、だいたい詩だった。
えにゅっぽさんの詩は、相田みつを的な世界観を持っていた。
正直、僕はその詩が苦手だった。
でも、もしかしたら、えにゅっぽさんの詩は、文学作品の引用だったり、すぐには分からない複雑な事象のメタファーだったのかもしれない。
大学生だった僕は、それを解釈できるほどの知識がなかった。だから、その詩の良さに気づくことが出来なかったのかもしれない。
いや、そうではない。
僕は単純に、その詩が苦手だった。
ある日、えにゅっぽさんは、自身が再婚したことを、普通の文章で書いた日記で報告した。
日記によると、えにゅっぽさんは離婚経験があり、子どもがいて、再婚した今、とても幸せであるとのことだった。
とても分かりやすい文章だったし、そこには、シングルファーザーが、子どもの気持ちに寄り添いつつも、自分の幸せを追い求める姿が表れていた。
文章いいのになんでいつも詩を書いてんだろうなこの人は、と思った。
僕は「イイね」ボタンを押しただけで、コメントはしなかった。
えにゅっぽさんは今、どこで、誰と何をしているのだろうか。幸せだろうか。