プリンストン留学③ 研究環境の違い
こんにちは,秋葉です.
今回はいよいよ本題の研究環境の違いについて,現状気付いた範囲でまとめたいと思います.
なお,今回の話は,アメリカと日本の違いに加えて,研究室ごとの違いもあると思います.また,燃焼分野や工学分野に特有の事情などもあると思いますので,あくまで私個人の一例として読んでいただけると嬉しいです.
違い1:メンバー構成の違い
まず来て驚いたのがこれです.
日本では,研究室の主力は修士課程の学生で,研究室メンバーの半数以上を占めることが多いと思います.博士学生は研究室に数人いるかどうかで,いると必然的に修士などの後輩の面倒を見る立場になります.一方こちらは研究室メンバーの約半分が博士学生,約半分がポスドクで,研究という面ではポスドクが主力です.学生は,学年関係なく切磋琢磨し合う同期という感じで,ポスドクに研究のイロハを教えてもらうスタイルです.日本の研究室内では学生のボス的な立場だったのが,こっちに来て最も下っ端になりました笑.ただ正直な話,これだけポスドクがいたら研究進むよな,という感じです.
違い2:先生の仕事の違い
一つ目とほぼ同じタイミングで驚いたのがこれです.
日本では教授というと忙しく,いわゆる日中の一番いい時間は会議などでほぼ埋まっている印象です.個人的には,日中の一番頭のいい時間帯に研究が進められないんじゃないかと思っています.
アメリカに来てからは,言い方は悪いですが,先生が意外と空いていると感じます.その分,日中の一番いい時間に,学生やポスドクと話してちゃんと研究をしているんだな,ということに驚きました.なんとなくですが,大学のシステムとして,教授が果たすべき仕事が明確にされており,その他の雑務的な仕事はそれ専門の職員がいて,しっかりと分業が進んでいるように思います.日本も研究業務の効率化に向けて動き始めているようですが,研究業務を効率化するより,大学運営の雑務を教員から取り除くことが先なような気がします.まあこれは大学の問題か,教授の問題かは私の目線からはわかりませんが.
違い3:研究費の使い方の違い
これは日本にいる時からなんとなく知っていましたが,やっぱりか,という感じです.
アメリカの研究室ではすごいたくさんの高価な実験装置があります(具体的には書きませんが).一方,個人が使うパソコンや実験装置を制御するパソコンは少し古かったりします.こうした大胆な研究費の使い方ができるのは,研究費の規模というもの以外にも,大学院生が原則として博士課程で,一人の学生が5年くらい研究するのが前提となり長期の研究プランが練りやすいのもあるかな,とも思いました.
違い4:建物の違い
これは完全に日本とアメリカというより,大学ごとの違いですが,プリンストン大学の工学部は応用科学科と,一つの巨大な建物の中に集約されています.建物は4階くらいの比較的低層なロの字になっていて回遊でき,色々な研究分野を見て回れます.おそらく,教員の往来も激しく,井戸端会議的に話が弾みそうな,そんな構造です.こういうスケールの大きい土地の使い方という意味では,アメリカならではかと思います.日本みたいに高層階の建物にしてしまうと,エレベータに乗ってしまって人の往来が必然的に減ってしまっている気がします.
違い5:ランチタイム
これはこちらの研究室特有の文化ですが,お昼に研究室にある大きなテーブルに集まってみんなでご飯を食べます.教授も含め任意参加で,食べながら色々な話をします.あるときは直前の授業の復讐をしたり,経済の話をしたり,政治の話をしたり.ちょっと複雑そうなプロジェクトの話がとんとん拍子で進んだこともありその時は流石に鳥肌が立ちました.
まとめ
今回は私個人の目線から感じた日米の研究環境の違いをまとめました.全体的な違いとして,アメリカは教員・ポスドク・学生ともに論文を仕上げるという目標に最適化されたシステムになっているのに対し,日本は教員は大学運営に,学生は企業の戦力になるよう構築されたシステムのような気がしています.日本が研究力を向上させるには,根本的なシステム改革よりは,日本人の強みを活かしたプレゼンス発揮の方法を模索したほうが早いかもな,と感じ始めています.