最近のスタートアップ資金調達環境と2023年の予測(後編)
お疲れさまです。
千葉道場ファンド石井( @takaki_ishii )でございます。
後編ということで、今回は2023年のトレンド予測を書いていきたいと思います!
※前編記事はこちら↓
早速ですが、2023年のトレンド予想を3つにまとめてみました。
1.「チーム・サービスのグローバル化」
2.「SaaSスタートアップ統廃合」
3.「セカンダリーマーケットの活性化」
それぞれ背景を書いていきます。
1.「チーム・サービスのグローバル化」
コロナ禍でリモートワークが普及した影響か、千葉道場ファンドご支援先でもチームのグローバル化が進んでいます(もちろん、創業時より英語でコミュニケーションしている会社も増えています)。
この流れは大変素晴らしいなと感じていまして、今までは採用の対象が日本に閉じていることが多かったわけですが、東南アジアだけではなく、中央アジア、ヨーロッパ、アメリカ等より優秀な人材(特にクリエイティブ系人材)を採用しやすくなりました。
昨今、シリコンバレーにおいては大規模なレイオフも相次いでいますので、投資余力のあるスタートアップにとっては日本からベイエリアの優秀人材を採用できる格好のチャンスかもしれません。リモートワークは勿論、円安である日本は「住む場所」としても魅力的に感じてくれる候補者もいるのではないでしょうか。
チームのグローバル化が進むことで、日本からグローバルに羽ばたくプロダクトも増えてくることを期待しています!(…と偉そうに言うだけではなく、自分たちもグローバルで戦える人材にならなきゃなーと思っています…汗)
2.「SaaSスタートアップのM&A増加」
前編でも書いたとおりで、特にミドルステージのスタートアップにおいて資金調達が難航しているケースがございます。その中でも特にSaaSは2021年度のPSRマルチプルが通用しなくなるケースが多く、前回ラウンドの時価総額がネックで資金調達に苦しむ事例を目にしてきました。
また、2019年頃より様々な領域でSaaSモデルにチャレンジするスタートアップが増えましたが、明確に課題と顧客は存在しているものの、マーケットとしては限定的とも思われるサービスも増えた印象です。
「マーケットサイズの大小がサービスや企業の良し悪しではない」ことは当然ですが、VCとして投資検討させていただく際は論点になることが多く、結果的に市況の悪化、マーケットサイズへの評価などで、資金調達に苦労するSaaSスタートアップは残念ながら増えている印象です。。。
一方、市況は悪くなれど、一定の資金を確保しているSaaS企業がございます。これは上場・未上場問わずです。資金力のあるプレーヤーがトップラインを伸ばすために周辺領域で事業を展開する企業を買収するケースは2021年、2022年でも見られました。
おそらくはこのトレンドが2023年以降に加速し、SaaSスタートアップの統合が更に増加するものと予測します。
・・・こう書くと、「売却=バッドシナリオ」と受け止める方もいるかも知れませんが、実は私もかつては上場を目指していながらも、同業大手企業に会社を売却した経験のある元起業家です。
もちろん、起業当初より上場したいという目標はありましたし、M&Aを決断する過程で様々な葛藤はありました。ただ、ユーザーへの価値提供最大化、会社が掲げるミッションの実現という観点では、ベストな選択だったと今でも思っています。
スタートアップ1社が短期に実現できることは決して大きいわけではないので、どのような形であれ、誰かと一緒に進んでいくことは、決して残念な結末ではないと思っています。(たまにM&Aで悩んでいる起業家より相談のご連絡をいただきますが、元起業家・石井という立場で良ければご対応しますので、TwitterとかでDMいただければ…!)
・・・と、少し話がそれましたが、特にSaaSスタートアップのM&Aが増加するのでは?という予想でした。
3,「セカンダリーマーケットの活性化」
最後です。もう未上場株式のセカンダリー取引に向けて動き出している方が沢山いらっしゃるのですが、2010年代初期に立ち上がった多くのファンドが満期を迎え始めるタイミングですので、どこかのタイミングで波が来ると確信しています。
今まではファンド満期を迎えるVCの保有する株式は、発行企業やその経営者、他投資家に売却することが多いと聞いています。
いずれの場合も、相対での取引になることが多いようですが、スタートアップへの投資が加熱した反面、この10年で上記のような対応が数多く発生すると想定されますので、やはり整備されたセカンダリ市場は必要になるのではないでしょうか。
おそらく最初は満期を迎えたVCファンドの取引が中心になるかもしれませんが、おそらくそれ以降は(一定のルールの範囲内で)個人・法人が保有する未上場株式の売買も発生すると予想されるため、未上場株式の流動性が高まる可能性があると思います。株式型クラファンなどもありますからね。
IPOまでの期間が長期化している背景もあるので、個人的には株主構成を入れ替えるという選択肢はあって然るべきかと思います。それらを円滑に進めるためにも、セカンダリーマーケットがあることは日本のスタートアップ・エコシステムにとってもプラスであると感じています。
最後に
以上、私なりに2023年のトレンドを予測したまとめ記事でした!
…って「web3とかNFTとか、ショート動画とか、AIとか、2023年に来るテーマ・ジャンル予測は無いんかい!?」というご指摘がほとんどかと思います笑。
そちらはおそらく今年もダイヤモンド・シグナルさんの恒例企画があると思いますので、そちらをご覧ください…!
最後に。
千葉道場ファンドとして、2022年は18社に新規投資させていただきました。(月平均1.5社。追加投資入れたら27社)
多くの素晴らしい出会いをいただけたことに感謝です。
来年もシビアな環境が続くと感じていますが、今年と同じくらいのペースで投資実行していきたいと思います!特にシード・アーリー(プレA)ステージの新規投資を頑張っていきたいと思いますので、お気軽にTwitterなどでDMいただければ嬉しいです。
来年も素晴らしい出会いが数多くありますように!
それでは皆様、良いお年をー!
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