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会社で見られる防衛機制

「防衛機制」という言葉をご存知でしょうか。
かの有名な精神分析学者S.フロイトの娘、アンナ・フロイトによって定義された自我を防衛するための様々な行動のことです。フロイトは10種類の防衛機制を取り上げていますが、現代経営学の大家C.アージリスは、これをベースに企業内での防衛機制を多数提示しています。
誰しも防衛機制はありますが、程度が大きいと個人や組織の成長を妨げる要因となります。以前お伝えしたバイアス同様、意識化して気を付けなければいけませんね。

以下に、アージリスによる防衛機制を一部ご紹介します。

■否定
本人は見ていても、熱心に聞いていても、脅威つまりつごうのわるいところになると幕がおりたように見えなく聞えなくなる、大変につごうのいい防衛機制である。本を読んでいてそこのところで居睡りをしたわけでなく、ちゃんと目を通している。上役の話を聞いていてそこのところでよそ見をしたわけでなく、ちゃんと聞いている。それなのにそこのところだけ記憶にないのである。忘れたのとも違う。(中略)これは上役?部下の関係だけでなく、もちろん部下上役の関係で上役側にもおきる。おもしろいといえばおもしろいが、始末におえぬ機制である。
■抑圧
脅威が外界にあるのではなく、自分の過去の体験などにある場合、これを否定し、忘れてしまう。無意識の部分に押し込め、押し込めたことも忘れてしまう。つまりその脅威は、当人のパースナリティの無意識の部分に蓄積される。
■抑制
脅威を意識の部分に置いたまま抑圧する。 会議に出ていて、何かまずいこと、バカなこと、程度の低いことを発言してしまいはしないかという脅威を感じて、出席していてもほとんど発言しない人、これである。
■過剰補償
勤務終了時間がきても、目標を達成していても、仕事をやめないで、"よく" "はげしく"働く。これは、重役やエグゼクティブに多い。本人は意識しなくても、能力がないなどと思われはしないか、思われたらかなわないという脅威を解消するために、必要以上に働いて、補償したつもりになって自己を防衛しているのである。これに対して、なまけものとみられるまでに働こうとしない職長など、反対の例もある。これは、前出「抑制」の例で、自分は能力がないのではないか、へたに働くとそれがバレてしまいはしないかという心理から、動こうとしない。
■同一視
だれかに似たいというのは、その人の経験と同じものを自分ももっていると、自分も思いたいし、ひとにも思われたい心の現われである。「専務は中学の先輩なんだ」などと語るのはこれである。(中略)トップ・マネジメントの人にはふつう何人かのファンがいて、口調が似てきたり、歩きっぷりまで似てきたりしているという。
■投射
ケチな人間が自分よりケチな人をみつけ、あいつはケチだケチだと強調することによって、自分をいくらかでもケチでないように周囲に印象づけようとするはかなき防衛。つまり、自分の行動のし方、感情のもち方、考え方を非難されるのを避けるために、それをほかの人に転嫁すること。
■失言
どんな失言にも何らかの意味がある。 それは無意識のうちにもっている考えや感情の発現で、予告もなしに妙なときに登場してきて、防衛しようとする。
大友立也『組織よ人をこう見てほしい』日本経営出版会、1969

引用元は50年以上前のアージリス入門書ですが、伝統的経営学に心理学的知見を取り入れたもので、いまなお色褪せません。50年経っても人や会社組織はあまり変わらないものですね。。。

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