続毎日忙しい

 最近昔の教員時代の数少ない友達の息子さんから連絡がありました。この友人は私より若いのですがもう亡くなってしまいましたが、豪傑で逸話がたくさんあります。一例を言えば教員採用試験の面接で、ここで採用されなかったら、どうしますかと聞かれたので、我が県の損失だと答えたとか、新任の頃の定時制教員時代にヤクザの子とは知らずに生意気だったのでぶっとばしたら、逆に懐かれて勤めが終わって帰宅したら自宅に新婚間もない妻と二人でいたので、あせったとか。結構暴力教師的な面を持ちながら生徒に慕われていました。若い頃はやせ型でするどい顔をしておりサングラスもかけていたので「その格好はヤクザやで」と言うと「この間東京に行ったら本物のヤクザを見かけたけど、やっぱり凄みがある。びびった」と笑っていました。その頃二人でボーリングに行ったことがありました。何ゲームかした後最後のゲームにコーヒーを賭けようかと提案したら、今までの遊びモードから真剣な顔で、無口になり黙々とボールを投げはじめて、私は相変わらずで投げていたら負けてしまいました。また互いの親子で集まってバドミントンの練習をしたり、彼と組んで試合に出たこともありました。
 彼の後半期はぽっちゃりしておなかも出てきて好々爺というのがふさわしくなり鋭さは消えましたが、教員として大きな貢献もしていたので、管理職になろうと思えばできたのですが、実家がお寺で住職と兼業なので昇進試験を受けませんでした。だから私のような嫌われ者とも付き合ってくれたというより、受け入れてくれたのだと思います。そして教員最後は同じ定時制に勤めましたが、反社会的な言動をする生徒にも慕われていたので、教頭としては大いに助かりました。
 互いに退職してからも時々頼みたいことがあると電話がありました。大きく分けると3つの用件でした。良い声をしていたので檀家から住職の読経を録音した物が欲しいと言われたので、録音してCDやカセットテープにして渡しました。2つめはカラオケが趣味なので、歌いたい曲を集めたCDも作りました。3つめは寺の本堂の音響装置です。彼の父親が作ったのですが、古くなったのと音が気に入らないとのことで全部作り直すことにしました。彼の要望を聞いて作り直したのは15年も前だったと思います。
 そんな彼も癌で数年前に亡くなりました。息子さんが住職を継ぐことになりましたが、本堂の一部がシロアリにやられて、修復工事をしなければならなくなったので、音響機器も一時的に取り外すのと、新しくしたいのだが電気店に頼むと全部新品にするしかないと言われたのです。最近の電気店はその分野の知識・技術を持った人が殆どいないのです。全部取り替えるとかなりの高額になるので、本堂の修理代も含めると二の足を踏んでいるとのことでした。彼の要望も聞き、前に私が作った物を改造することで引き受けました。費用は電気店が提示した額のうん十分の1ですみますから。それでも心配なのは、何年後かに故障したとき私が生きているかどうかだというニューアンスで話すので、その時には電気店に任せるとして当面は大丈夫な物を作りますと約束して、今まで本堂にあった私が作った音響機器を持ち帰りました。本堂の修復が9月に終わるとのことなので、それまでに彼の要望を聞いた改造を済ますことになります。こんな田舎では部品が手に入りにくいので大阪まで買い出しに行く予定で、ついでに友達と逢ったり、娘夫婦と酒を呑むことも計画済みです。どう改造すれば彼が満足してくれるのかを考えながら改造案と必要な部品リストを作っています。当分は退屈しないで済みそうですが、期限があるのがちょっと大変です。なんせ気まぐれなのと酒を飲むのが最優先ですので。

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