日本酒

 ここにも何回か書いたと思いますが、私は日本酒が好きです。趣味もいくつかありますが、それらの仲間の会合よりも飲み会を最優先するとも書いたと思います。
 そして飲む酒も決めています。その酒はほんとにおいしいと感じます。近くの酒蔵で造られている酒です。そこに直接買いに行きます。昔は酒屋さんに行って買っていましたが、今は先ずありません。かなり昔は酒蔵に直接買いに行くのは少し抵抗がありました。なんとなく行きにくい感じがしましたので。そう感じる人は少なくないと見え、何年か前その酒蔵に行っていたとき若い夫婦とおぼしき二人組が入ってきて、店の人ではなく私に「ここでもお酒は買えるんかな」と聞かれました。「私も買いにきたんよ。誰でも買えるで」と言うと「ここの酒では何がうまいんな」と聞かれたので何種類か勧めたら、「それにするわ」と言っているときに店の人が現れ「営業部長ご苦労様です」と言われたので、「この酒蔵は腕はえんやけど、営業が下手なんよ」答えたときがあるほどなじんでいます。確かに同じ市内の酒を提供する店に行っても、他市の酒蔵の酒が殆どでここの酒はあまりありません。
 これは前にも書いたと思いますが、昔は酒蔵はかなりありました。作ればどんな酒でも売れていた時代でしたから。そしていろんな種類のアルコール飲料が出回り始めたとき、営業努力の方向として美味しい酒を造ろうとした所と安売りの方向に向かった所とあったようですが、前者だけが残り後者は廃業したと思っています。だから今ある酒蔵は美味しい酒を造っているのですが、市販する酒は醸造アルコールを混ぜて美味しくはないが安価な酒を売っているので美味しくないと思っています。だから美味しい酒は酒蔵に行かなければ手に入らないのです。しかし、さっきも書いたように少し敷居が高いのが現状だと思います。
 幸いにも私はこの酒蔵の親類の人と懇意になっていて、その人の紹介でここで買うようになりました。最初はいろんな種類の酒を買っていたのですが、最終的に決めたのは生原酒です。もう何年もこの酒だけを買い続けています。しかしそれほど大きな酒蔵ではないので、この酒はすぐ売り切れてしまいます。ここ数年前から残りが少なくなると、店の人から「この酒はもう出荷は止めました。残りはあなたのために残しておきます」と言ってくれて他の人には売っていないのです。あるとき、私が少しあることでお世話をしたことがあった人がお礼にこの酒蔵に例の酒を買いに行ったとき「ありません」と言われたそうです。その人が有津に渡すために買いに来たと伝えたところ売ってくれたそうです。私の呑兵衛さと愛飲酒を知っている人だったのです。
 こんなことを書いたのは去年仕込んだ愛飲酒が、もう亡くなったのです。数ヶ月前から出荷停止にしますと言われていたのです。買いに行くたびに後何本と言われていました。それも昨日買いに行ったとき全て亡くなったと言われました。そこで私は「これが無しになったら、次にこの酒ができるまでの間何飲めと言うんな」と冗談を言っときました。「次に買いに来てくれるまでに考えとくきん」と返されました。あと2ヶ月の間は辛抱しなければならないようです。

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